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V10エンジンを搭載して登場したR8は「違う価値」のスーパーカー【10年ひと昔の新車】

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V10エンジンを搭載して登場したR8は「違う価値」のスーパーカー【10年ひと昔の新車】

2009年1月、初代アウディR8にV10エンジンを搭載した「5.2FSIクワトロ」が発表された。2006年にデビューしたR8はアウディ初の市販ミッドシップスーパースポーツカーとして大きな注目を集めたが、V8エンジンのみの設定で、V10エンジンの搭載モデルの登場が待たれていた。常に新しい「違う価値」を見せてくれるアウディ、ここでどんな魅力を見せてくれたのか。ここでは国際試乗会からのレポートを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年4月号より)

これまでにない新しくて価値あるプロダクトで提案するアウディ
異なるコンセプトと新しくて性能に優れたプロダクト。いつの時代においてもそれが人気商品の条件であろう。とくに昨今のような景況においては、真に「新しい」モノやコトが、締まりに締まった消費者の財布の紐をわずかに緩める。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

ここ数年の、そしてとくに昨年(2008年)下期のアウディの成功もまた、この原理に沿ったものだった。世界中で成功を収めたドイツのライバルブランドと比較しても、基本的な性能は同等とした上で、違う価値を備える新しいモデルを矢継ぎ早にマーケットへ投入してきたからこそ、成功を収めたと言える。

たとえそれらがカテゴリー的に追従したものであったとしても、否、あったが故に、内外装のデザインや仕上げ質感、アルミニウム技術を活かしたASF(アウディスペースフレーム)、クワトロやFSI/TDIのパフォーマンスといった「違う価値」を消費者は敏感にキャッチし、熱心なユーザー=信奉者となっていった。

R8は、その象徴だ。アルミニウムボディ&シャシや高性能なFSIエンジン、4WDのクワトロシステム(といってもトルセン式ではなくビスカス式だが)といったブランドの代名詞的なテクノロジーをかき集め、しかもそれをミッドシップ2シーターのスーパーカースタイルで具現化する。これをシンボルと呼ばずして、何と言う!

2003年にショーデビューした「ル・マン クワトロ」を祖とするR8は、そのユニークなスポーツカースタイルと高いシャシ性能、そして他のスーパーカーにはないライドコンフォートで一躍スーパースターの仲間入りを果たした。

アウディ仕立て、つまりは違う価値観のスーパーカーとして、2006年のデビュー以来、実に1万台もの需要を得たのだ。年産5000台規模(R8は日産20台と言われている)というのは決して大きな数ではないが、かのフェラーリV8モデルに迫る。台数的には希少の部類だが、スーパーカーとしては大成功の数字だと言っていい。

もっとパワーを、もっとハイパフォーマンスを!
もっとも、そんなR8にもいまひとつ物足りない面があった。それは、エンジンパフォーマンスである。

確かに4.2L FSIの直噴V8エンジンは、軽量アルミボディとの組み合わせで十二分なパフォーマンスを発揮してくれたし、スポーツカーとしての総合バランスにおいてそれほどの不満はない。エンジンが出しゃばらないという点では、アウディらしいスーパーカーだという思いもある。

その一方で、巷に溢れる500psオーバーモデルの問答無用なパフォーマンスにひとたび触れると、「4.2LぽっちのV8」だと思ってしまうのも事実だった。この丈夫なボディにもっとパワーを、もっとスーパーカーらしい性能を、せめて10発を! 

事実上の兄弟車であるランボルギーニ・ガヤルドの存在が、ある種の足かせになっていたのかも知れない。が、イタリアの猛牛もさらなるビッグパワーV10と直噴エンジンを手に入れた。もちろんアウディテクノロジーだ。そして、性能の階段を上ったガヤルドと4.2FSI V8のR8との間にようやく隙間が生じたのである。

果たして、R8 5.2FSIクワトロ、待望のデビュー。正真正銘のスーパースポーツカーとして、パフォーマンスへの期待は否応にも高まる。

まずは、エクステリア。とくにフロントマスクが印象的だ。ヘッドライトはロー&ハイビーム、ポジションのすべてがLED式となった。開発者によれば対向車にも優しくそれでいて十二分に明るい照射を実現しているという。パッシング能力も凄い、らしい。LED式ポジションライトはV8にも使われていたが、個数が倍の24個(片側)となり、昼間でもスワロフスキーのように輝いている。

シングルフレームグリルは、ハイグロスブラックにメッキシルバーの格子が入った。横バーの数も少ない。その両脇にあるグリルにもエアインテークが開けられ、ウォータークーラー用およびブレーキ冷却用に導かれる。ここもハイグロスブラック塗装で、空気を実際に吸い込む効果を鑑みてフィン数が3本から2本へと改められた。

ドアから後ろでは、R8のアイコンであるサイドブレードが違う。2気筒増えた大出力エンジンのために「もっと空気を」。ドアアウターハンドルのある切れ込みに沿って外側に膨らみ、それに呼応するかのようにサイドアンダーステップも拡大されて、鋭いキャラクターラインが与えられた。

リアセクションは相当に印象が違って見える。ライト下からコーションプレートの背面をつなぐ部分を、ハイグロスブラック色としたためだ。フロントと同様にフィンの数も3本→2本とし、エンドパイプも左右4本出しから左右2本出しへと変更された。

そしてハイライトがガラスショーケースに収まるドライサンプ式V10ユニットだ。事実上、ガヤルド用ユニットのデチューン版と言ってよく、排気量はまったく同じ5204cc。直噴化によって12.5:1という高い圧縮比を得ているのも同じ。組み合わされるのは、6速MTと6速Rトロニック。

開発担当者によれば、V10を積むにあたって大きく変えたのはクーリングシステムくらいで、他の構造はほぼ同じだという。曰く、「ル・マン クワトロを思い出してほしい。元々、V10で検討していたのだから」。

ひとつの頂点になり得る正しきスーパーカー
ボディサイドの段差に沿ったドアノブを握ってドアを開ける。身体を折りたたみ、腰と尻から滑り込ませ、足を高価なレザートリムに当てないよう乗りこむ。これがスーパーカー乗りの流儀だ。ルーフラインが他のスーパーカーに比べて高いため、少しは乗り降りしやすい。

腰を落ち着けて周囲を見渡せば、基本的にV8と同じ景色が広がっていた。シフトベースまわりのプラスチック(とその継ぎ目)には相変わらず興ざめだが、それ以外のフィニッシュはすこぶるつき。スピードメーターは350km/hまで刻まれ、タコメーターには誇らしげにV10の文字が。

走り出そう。エンジンスタートからアイドリングにかけてのサウンドは、内にこもるV10特有のもの。最新ガヤルドほど激しくはないが、骨太でたくましいビートを刻む。それでもドライバーを急かさないのが、アウディのスーパーカーらしい違う価値だ。

トルクフルなエンジンと油圧機械式自動クラッチのRトロニックとの組み合わせゆえ、低速時のマナーに不安があったが、最新のR8 4.2FSIと同様にかなり洗練されてきた。少なくともまだ走行距離が数千kmの状態では、コールドスタートでもぎくしゃくすることはほとんどない。

ただタウンスピード内において、たまにギアチェンジを躊躇うそぶりが見えて、わずかに身体もつんのめる。ポルシェのようにデュアルクラッチシステムが欲しいと思うのは、そんな時だ。

クルマから余計な刺激を受けず、それこそアウディの流麗なクーペにでも乗っている気分で街を流す。乗り心地は相変わらず上々だ。鼻歌まじりに軽くクルーズしていても、気持ちいい。

ミッドシップカーにありがちな神経質さは微塵も感じさせず、V8モデルに比べても、前輪の動きにしなやかさと重厚さを感じる。マグネティックライドコントロールを標準装備とするが、スプリングやダンピングをV8モデルより多少硬めにセットした影響かもしれない。そんなクルマとしての落ち着きが、他のスーパーカーにはない魅力だ。毎日乗っても疲れないだろう。

それでも交差点などのストップ&ゴーで、V8モデルとの差異をとくに感じるのは、右足とパワーの相関だ。

少ない踏み込み量に対して、明らかに分厚いトルクが立ち上がる。瞬時にアルミボディに力が漲り、クルマ全体がいつでも臨戦モードに入ってOKだという意思を示す。そこでアクセルペダルを緩めれば再び極上のラグジュアリーカーに戻ることもできるし、もしその先がオープンロードで駆け巡ることを許されるのであれば、0→100km/h加速3.9秒の峻烈さを駆使して並みいるスーパースポーツカーたちとのつば競り合いも演じられる。

冷静にドライブすることも、情熱的に駆ることも、すべてはドライバー側にスイッチがあるのだ。

サーキットで、そのスイッチを情熱側へと押してみた。変速とサスペンションのセットもスポーツにする。

ガヤルドほどワイルドではないが、それでもこれまでのR8のイメージを大きく覆す激しいパフォーマンスを見せる。ギュンと身体が思わず縮む加速フィール、手応え十分でかつ正確無比なステアリングフィール、そして踏んでからのコントロールが楽しいブレーキフィール、などなど。そして何より、大パワーを得てもなお、余裕をもってクルマの動きに対処する強靭なボディに、得難い安心と壮快を得た。

蛇足だが、日本市場へR8 4.2FSIの6速MT仕様モデル導入も決まったので、V10モデルの6速MT仕様の印象も報告しておこう。そのシフトフィールは、気持ち悪いくらいにスパスパと決まるもの。大パワーを、気持ちよく好きなギアで操れるのがいい。エンジンを吹かし切る楽しさがある。こちらも是非、日本導入の検討を!

R8こそは、いつでもどこでもスーパーカー。クルマを降りて、R8 5.2FSIクワトロのエキゾーストノートを聞けば、それは正にスーパーカーの音だった。(文:西川 淳)

アウディ R8 5.2FSI クワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4435×1930×1252mm
●ホイールベース:2650mm
●車両重量:1700kg
●エンジン:V10DOHC
●排気量:5204cc
●最高出力:386kW(525ps)/8000rpm
●最大トルク:530Nm/6500rpm
●トランスミッション:6速AMT(Rトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・90L
●EU総合燃費:7.3km/L
●タイヤサイズ:前235/35ZR19、後295/30ZR19
●最高速:316km/h
●0→100km/h加速s:3.9秒
※欧州仕様

[ アルバム : アウディ R8 5.2FSI クワトロ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

6件
  • 内容はスーパーカーなのにそれを感じさせない外観がしょぼすぎ
    出た当初から普通のクーペにしか思えなかった
  • ランボルギーニ開発のV10を買い取ってアウディにしてみたのは良いけど結局は長続きしなかったね。
    大衆ブランドがスーパーカーに手を出してみたあるある。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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