乗用車の世界ではエンジンのダウンサイジングが進んでいるが、実はバスの世界も同じ。大きなボディからイメージするパワフルさとは少し違う、バスならではの特性を持つエンジンなのだ。さらにトランスミッションや足回りにも細やかな工夫が!?
※本稿は2024年2月のものです
編集制作/末永高章、中山修一、写真/バスマガジン編集部
初出:『ベストカー』2024年3月26日号
バスには最新技術満載だった!? 桁違いのトルク140kgmにエアサスまで採用! 主流となったフィンガーシフトってなんだ?
■高回転パワーよりも低速でのトルクを重視
排気量の多さに比例してエンジンのサイズもかなり大きい。直列6気筒と4気筒のディーゼルターボが主流だ
乗用車では300psオーバーのエンジンを載せたハイパワー車も珍しくないが、実は巨大なバスも現在では最高出力は乗用車とほぼ同等。排気量も近年はダウンサイジングが進み、路線車で5.2~7.5Lの排気量で240~270psの出力を発生する。
高速・観光車のハイデッカーでは5.2~13Lで240~480psと、一部突出しているものの、なかなか穏やかなパワー感だ。
2トン以下の車重である乗用車に対し、車両総重量で12、14、16トン、ダブルデッカーでは20トン超という自重があるバスだが、乗用車+α程度のパワーで充分に運行しているのだ。
ただし大排気量がモノを言う設定で、トルクはハイデッカーで約140kgm/1500回転あたりが標準スペック。高回転ハイパワーよりも低速トルクがいかに重視されているかがわかるセッティングだ。
バスのエンジンで興味深いのは、ボディサイズに比例してエンジン排気量が大きいというわけではないという点。パワーも大型の240psに対して小型が180psと大きな差がないのに、過不足なく運行している。
この点にトランスミッションやタイヤ、特に排出ガスと燃費の兼ね合いという、バスという自動車の走行セッティングの妙が生きていると言える。
昭和生まれの人なら、バスのトランスミッションが運転席横の床からニョキッと生えたシフトレバーで、ガゴゴゴッという感じでドライバーが操作しているシーンが記憶にある人もいると思う。クラッチもペダル2度踏みのダブルで、といった印象だ。
■トランスミッションや足回りには最新装備が
三菱ふそうの一般路線車タイプのトランスミッションは、アリソン社のATだ。シフトポジションはステアリング左に配置されたプッシュボタンにより選択
もちろん現在ではそんなバスは極少数だ。MT仕様でも軽いクラッチにショートストロークで指令をエアで伝達するシフトレバー「フィンガーシフト」を持ったものが主流となり、現在ではそれすら旧型で自動式が標準となった。
いすゞ/日野の高速・観光車にMT車が残るものの、AT、AMTの2ペダルが主流となっている。
また、一般路線車では立って乗る乗客もいることから、エアサスはさらに重要な装備となる。
車内で転んだりする“車内事故”を未然に予防するほか、停車乗降時に車高を下げて歩道とバスの床面高を合わせて、つまづきを減らすためのニーリング機構などもエアサスの仕事だ。車高全体の上げ下げも凹凸の激しい路面走行や、坂道での“底擦り”を予防するためにも機能を発揮している。
このように、乗用車とは異なるニーズや事情が多くあるバスは、自動車としての機能も異なった目線からアプローチされているのだ。
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