トヨタのラージFFセダン「カムリ」の国内販売が、2023年12月下旬に生産終了となった。
トヨタのセダンといえば、2004年から2020年まで販売されていたトヨタのミドルクラスセダン「マークX」もまた、上質なプレミアムサルーンとしての資質に富んだ、いいクルマだった。改めて、マークXの魅力と、日本市場に残した爪痕について考えてみよう。
いいクルマだったなぁ…帰ってきてくれんか…マークXが日本に残した爪痕
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、ベストカー編集部
マークXへの名称変更で、イメチェンを図った
マークXの開発コンセプトは「ダイナミック&スタイリッシュFRセダン」。走りを感じさせる躍動的で美しいスタイル、高いハンドリング性能など、新時代の高級セダンを狙っており、プラットフォームは12代目クラウン(2003年発売)のものを改良。マークII時代より70mmも長い2,850mmのホイールベースを採用し、前後オーバーハングを切り詰めてモダンでスタイリッシュなスタイリングを実現するとともに、安定感のあるプロポーションが走りをイメージさせていた。
セダンの不人気が囁かれるようになったのは、ステーションワゴンブームをつくり出した初代レガシィ(1989年発売)や、ミニバンの常識を変えた初代オデッセイ(1994年発売)が登場したあたりからだろう。マークXが、マークIIから名前を変えた2004年あたりは、セダンは、そのイメージを変えざるを得ない時代であり、マークXは、車名を変えることやスタイリングの刷新、発売前にティザー広告を打つ手法を取ることなどによって、かつてのマークIIのから、イメージを変えることに成功させていたと思う。
2004年登場の初代マークX。スポーティな走りを想起させるモダンなスタイリングが印象的
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FRの走りを堪能できるのが最大の魅力
マークXの魅力といえば、やはり走りのよさだろう。54:46という重量バランスから生み出す安定した走り、ハンドリング性能、3.5L V6エンジンによるゆとりの走り(2.5Lモデルもある)、電子制御サスペンションシステムやギヤ比可変ステアリング、車両統合制御システムなどにより、FRの走りを十分堪能できた。
また、2014年に100台限定で発売されたマークX GRMNや、2019年に発売されたその第2弾モデルなど、GAZOO Racingが開発したスポーツコンバージョンモデルが存在するのもマークXの魅力だった。3.5L V6自然吸気エンジン+6速MT、専用チューニングサスペンション、補強用ブレス、ドアスタビライザー、専用トルセンLSDの採用など、より走りを追求したモデルのほか、モデリスタが手がけたコンプリートカー「マークX+Mスーパーチャージャー」というモデルも。もともと318psという高性能な3.5Lエンジンに専用スーパーチャージャーを換装し、360psまで出力を向上させたモデルだったが、こういう特別な存在も、マークXに「走りの良いスポーツモデル」というイメージをもたせていた。
2014年に限定100台で発売されたマークX”GRMN”。価格は540万円と決して安くはないが、メーカー純正チューンモデルとしての価値は高い
マークXという選択肢があったということそのものに、大きな価値があった
マークXが販売されていた当時の「高級スポーツセダン」といえば、クラウンアスリートやレクサスISがあるが、クラウンはターゲットとなるユーザー層の年齢が高かったし、レクサスISは価格が高かった。その点、マークXはベーシックなグレードだと265万円程度(2016年マイナーチェンジモデル)から購入することができ、(若干だが)ユーザー層も若く、スタイリッシュで走りがよく、実用的なクルマに乗りたいと思う人にとってはコスパの高いモデルだったと思う。
コンパクトなハッチバックやミニバン、SUVが人気の中心ではあるが、オジサン道まっしぐらのクラウンや、小金持ちを相手にしたレクサスISではなく、年齢関係なく、誰でも楽しむことができるマークXという選択肢があったということそのものに、大きな価値があったと思う。
14代目クラウンに期間限定で設定されたピンクのボディカラー。ドラえもんを使ったCMと共にインパクトはあったが、マークXの個性とは異なる
◆ ◆ ◆
走りを楽しめる「いいクルマ」が少なくなるのは、クルマ好きとしては寂しいかぎり。残念ながら消滅してしまったマークXだが、「安くて速くてカッコ良いクルマ」として、日本のクルマ好きにこれからも末永く語りつがれることだろう。
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みんなのコメント
台数とすればたいしたことないのが現実。
ただセダン売れないけど販売を続けるのは日本メーカーと違って凄いとは思う。