この記事をまとめると
■由来が気になる名前のクルマがいくつか存在する
【これぞ名車の証し】車名ではなく「型式」で愛されたクルマたち
■今回取り上げたのはフーガ、カリーナED、マークII、マークXだ
■それぞれのネーミングの意味や歴史について解説する
「エキサイティング ドレッシー」を冠したクルマも
もし、その車名がとっても気に入っているというオーナー様がいらっしゃったら、先にお詫び申し上げたいが、免許を取って最初に運転したクルマがWY30グロリアワゴン、そして現在は最後のグロリアであるY34(厳密に言えばその輸出仕様だが)に乗る、生粋のグロリア・ファンにとって、やはりフーガという名称はいまだにしっくりこない。クルマ自体はY50もY51も日産らしくて大好きなのだが……。
もちろん、グロリアとその兄弟車のセドリックが、永遠のライバル、クラウンに大きく水をあけられ、失速感著しかった1990年代後半から2000年代初頭の時期に、何かドラスティックな変化を求めたいという機運が社内にあり(ゴーン氏の一存かもしれないが)、よく言えば往年の名跡、悪く言えばオワコンとなりつつあったセド・グロと決別するためには車名を変えてリセット、という方策はアリだったのかもしれないが、もう少し重厚感のあるネーミングはなかったのだろうか、と思う。
フーガはローマ字で書くとFUGAで、日本語の風雅に由来する。FUGAのスペルは日本人が素直に読むと、「フガ」、ならばエンブレムも漢字にすれば良かったのではないか、という気もするが、FUGAには別の意味合いもあるという。それはおそらく多くの方が学校の音楽の時間で学んだであろう、バッハの『小フーガ ト短調』という曲名だけは真っ先に連想できる、楽曲形式を意味するイタリア語のfugaにもインスパイアされたものだと日産側は説明したという。
しかしながら正直フーガの車名から脳内に楽曲が流せたのは優秀な音大生ぐらいだったのではないだろうか。極めつけはフーガの北米仕様はインフィニティ M35、M45という別の名称が与えられたことで、日産自身もグローバルでは通用しない車名ということを暗に認めてしまったということになろう。
フーガの2世代目では日本仕様でも途中インフィニティのエンブレムを掲げつつ、Mではなくフーガを名乗った時期もあり、かえって日産の迷走感だけが印象に残ってしまった。さらにインフィニティもアメリカでは定着していたMと排気量を意味する数字(35は3.5リッター、45は4.5リッター)という組みわせに基づく車名を突如やめ、全排気量を総括してQ70とするなど、フーガを取り巻く環境はちょっとしたカオスだ。そしてお恥ずかしながら、筆者はQ70の70が何を意味するかは、これから調べようか、というところだ。
やはり変な車名と聞いて、後出しジャンケンに負けて笑いモノになってしまった悲運の存在として、カリーナの派生モデル、カリーナEDを挙げておかなくてはならないだろう。
カリーナEDは1985年に登場した4ドアHT車で、カリーナを名乗るものの、そのキャラクターはセリカ4ドアとでも表現すべきもので、実際にプラットフォームはT160系セリカとシェアしていた。全高を抑えたフォルムは誰が見てもカッコよくまとまっており、居住性は二の次でも“お隣さんとは違うカリーナに乗りたい”という層に爆発的な人気を博した。
そして、その車名がExciting Dreassy(エキサイティング ドレッシー)の頭文字を取ったものと聞いて、得てして絶妙なネーミングだと多くのクルマ好きが膝を打ったはずだ。上級グレードでは、ご丁寧にリヤガーニッシュに『ED』の文字が点灯するギミックも仕込まれており、当時は本気で憧憬の対象となったほどだった。
なぜマークIIIにならなかった!?
続く2代目も順調。先代のキャラクターやフォーマットは踏襲され、さらにプラットフォームをシェアするT180系セリカ同様、デュアルモード4WSも搭載。デザインも一段と洗練され、相変わらずリヤガーニッシュ内に点灯する『ED』の文字がカッコよく思えた。
そして3代目もT200系セリカと機関をシェアし、4ドアHTボディの流麗さも一段と昇華され、順風満帆の滑り出しとなったが、そのモデルサイクル半ばにして事態は急変する。というのはこの頃、男性諸氏にとっては非常にデリケートな事案に、EDという用語が世間一般で広く用いられるようになり、4代目カリーナEDが登場することなく現在に至っている。
無論カリーナEDが歴史に幕を下ろしたのは、ネーミングからではなく、居住性を犠牲にした4ドアHT時代の終焉によるところが大きいが、メルセデスCLSなどが元気な今、カリーナEDのようなクルマがあっても良いのではないか、と思えたりもする。でも、ふと気が付けば、今やそのEDという言葉自体を耳にする機会も減っており、敢えて略さずExciting Dreassyなんてグレード名のミニバンがあったら結構売れそうな気がするのだが、いかがだろうか。
もうその名前自体がお馴染み過ぎて、そもそもその意味など誰も考えなくなってしまったが、やはり謎の車名の筆頭と言えば、マークIIとその末裔マークXではないだろうか。
マークIIという名が初めて使用されたのは、1968年のこと。コロナとクラウンの間を埋める、ひとまわり大きく高級でエンジンも大きい、コロナの兄貴分たる新型車がコロナ・マークIIを名乗ったのである。外国車で使用されるMk2(マーク2)が2世代目、あるいは新型といった意味するものとは用法が異なったが、ニュアンス的には日本人にはしっくりくるものであった。
続いて1972年に登場した2代目マークIIだが、おそらく諸外国の常識に照らし合わせればマークIII(スリー)を名乗るはずだったが、なぜかマークIIの名が継承された。おそらく当時もマークIIIを名乗るべきではないか、という議論は社内でなされたのではないかと推測するが以後、マークIIの名は据え置かれ、言ってみればマークIIは“永遠の二代目”となったのである。さらにハイソカー・ブームの起爆剤ともなった5世代目に至っては、コロナの名称が外され、車名は単純にトヨタ・マークIIとなった。
こうなると、その車名が意味するのは“名もなき永遠の二代目”となり、そこに説明を求める必要はなくなったのである。ところが、“名もなき永遠の二代目”は2004年に突然ネーミング上は、「本当は俺、十代目なんだよね」とカミングアウトする。それがマークIIの後継車であるマークX(エックス)である。Xには主に「未知の」という意味合いが込められており、MARK自体も「目標」や「名声」という由来するものであるという説明がなされたが、やはり多くの人が連想したのはローマ数字の10であったはずで、マークIIを名乗っていればその10世代目に当たったことからも、それは決して偶然ではなかったと思われる。
ところが、初代マークXに続き、2009年に登場した2代目はマークXIは名乗らず、マークXの名前が継承されたのもまた面白い。そんな2代目マークXも10年という長いモデルサイクルを誇り、長く愛されたが、3代目マークXは登場せず、約半世紀にわたるマークIIの系譜は途絶えることになった。
昨今では自動車の車名やグレード名に「X」が用いられる場合、その多くは「クロスオーバー」を意味するが、実はかつてハイソカー時代のマークIIに慣れ親しんだ層が今求めているのは、ちょっと贅沢なクロスオーバーSUV、つまりその名を体現した、トヨタ・マークXだったりするのではないか、そんな気がしてくるのである。
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みんなのコメント
横文字や略語使うときは気をつけないとね。
クラウンがゼロクラウンになったのが同時期だったね。