Porsche 911 Speedster
ポルシェ 911 スピードスター
ジャガーのデザイナー、イアン・カラムが退任。後任は元ロータスのジュリアン・トムソン
空冷ポルシェとオープンエアに魅了された男
ポルシェ911スピードスターにとって、今年は特別な1年となった。先日、最新仕様が発売になったのである。そして、この日もフォルカー・シェーリッヒは、自身が所有するスピードスターのステアリングを握りドライブを楽しんでいる。単なるコレクターではない、情熱的なドライバーである。
オリジナルコンディションを保ち、マニュアルトランスミッションを備える彼の911スピードスターは、独特の魅力を備えている。
「年寄りにピッタリの1台です。私はこのスピードスターと一緒に成長してきました。ダブルクラッチを切る、キャブレターを調整する、ボディを少しずつ修理しながらね」と、シェーリッヒは肩をすくめる。
DB9ヴォランテよりも楽しい911スピードスターのドライブ
多くのポルシェ・ファンがそうであるように、彼の空冷エンジンへの愛情はフォルクスワーゲンからスタートした。
その後、学生時代に最初のポルシェとなる75馬力の356Cを手に入れた。以来、彼はリヤエンジン車両なしでは生活できないと感じたという。その後、初のオープン仕様として、真っ赤な1957年製356スピードスターを購入。純粋でむき出しのドライビングの虜になってしまった。そして、数年前に現在所有する911( Gモデル)のスピードスターと出会った時、彼は迷うことなく購入を決めた。
「完璧なクルマでした。シルバーメタリックは若干古びていましたが、レッドやブラック、グランプリホワイトよりもレアな仕様でしたから」とシェーリッヒ。
最高出力231馬力を誇る強力な3.2リッターボクサー6をドライブする喜びは、他に所有するオープンモデルよりもずっと大きいという。彼のガレージには911スピードスターの他にモーガン・プラス8とアストンマーティンDB9ヴォランテが収まっている、というのにだ。
「もっとも素晴らしいのは、空冷ボクサー6が奏でるエンジンサウンドです。スピードスターのドライブはピュアな喜びに満ちています。このクルマの運転中は何が起こっているのか、常に気を張っている必要がありますけどね。でも、その緊張感こそが喜びの一部だと思っています」
エリバ・ツーリング製キャンピングトレーラーを牽引
彼のスピードスターには素敵な仲間がいる。1975年製エリバ・ツーリングのキャンピングトレーラーだ。彼は以前所有していた911タルガでも、このトレーラーを牽引して旅を何度もしている。
ちなみに、シェーリッヒはブレーメンからベルリンに向かうフライトで、“皇帝”フランツ・ベッケンバウアーの隣に座った時、カードを持っていなかったため、この時持っていた911タルガの車検登録証の裏にサインをもらっている。
貴重な911の牽引フック改修キット
彼がラッキーだったのは、911(Gモデル)の牽引フック改修キットが2基現存していたことだろう。
おそらく世界中でも唯一の組み合わせである、911(Gモデル)スピードスターとエリバ・ツーリングのマッチングを完璧にするため、キャンピングトレーラーのボディカラーをポルシェ980=シルバーメタリックに塗装し直している。
皇帝ベッケンバウアーのサインをもらう旅を計画中
「でも、もうトレーラーを牽引して長旅をすることはなくなりました。もちろんデュッセルドルフとオスナブリュックにいる孫を訪ねる時は、いつもこのトレーラーを連れていきますけどね(笑)。 子供たちは、このキャンピングカーに泊まるのが大好きなんですよ」
長旅はもうしないと語るシェーリッヒだが、現在ある旅行を計画中だという。
「また近いうちにザルツブルグにドライブするつもりです。このスピードスターは今年製造から30年目を迎えます。このクルマにも、どうしてもベッケンバウアーのサインが欲しいんです(笑)」
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