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ハイブリッドも2035年販売禁止 欧州がEVシフトにまっしぐらな理由は何か?

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ハイブリッドも2035年販売禁止 欧州がEVシフトにまっしぐらな理由は何か?

 欧州では、メルセデスベンツなどがEV専門ブランドへの変更を発表したり、欧州委員会がハイブリッド車も含むガソリン車の2035年に販売禁止の方針を打ち出したりと、急速にEVシフトが進んでいる。最近、欧州で一気にEVシフトが進んでいる理由は何なのか?

 日本メーカーのトヨタやマツダがハイブリッド車を含めた緩やかな電動化を進めていく戦略とは、大きな差が出てきたように見える。脱炭素への道筋はEV以外にもあるなかで、欧州が急速にEV化を推し進めている理由に迫る。

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文/桃田健史
写真/Daimler AG、Volkswagen、VOLVO、自工会

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■EVに対する過小評価から一転!? 欧州の電動化シフトは急速に進む

 ついにメルセデスベンツも2030年完全EV化宣言とは!? 日系メーカーにとって、欧州メーカーによるEVシフトがここまで急激に進むことは”想定外”だったに違いない。

 なぜ想定外だったのか?

 根底にあるのは、フォルクスワーゲンのEV戦略に対する”過小評価”だ。

 時計の針を少し戻すと、フォルクスワーゲンは2015年に、いわゆるディーゼル不正が発覚しブランドイメージが失墜。欧米での販売も大きく落ち込んだ。

欧州は自動車の始祖である自負がある。21世紀に間に合って登場したハイブリッドからのゲームチェンジャーになるべく仕掛けたディーゼルが自滅し、EVに向かうしかなかったというのが本音か

 翌年、フォルクスワーゲングループは中期経営計画トゥギャザーのなかでEVシフトを宣言し、数兆円レベルの資金をEV向けのモーター、インバーター、蓄電池などの研究開発と調達にあてるとした。

 その成果としてまず登場したのが、ID.シリーズやポルシェ「タイカン」だ。

 こうしたフォルクスワーゲングループのEVシフトに対して、日系メーカー幹部やハイブリッド車など電動車の開発関係者と意見交換すると、「お手並み拝見」という感じが主流で、日系メーカー自身が積極的にEVシフトする雰囲気ではなかった。

「リーフ」でEV市場をリードしてきた日産ですら、「アリア」を次世代日産のシンボルに仕立てるも、電動化ビジネスの主力はあくまでもe-POWERという見解だった。

 また、トヨタとしても2017年時点では、フォルクスワーゲングループのEVシフトを”遠巻き”にしながら、2050年までを見越した電動車ロードマップでもEV普及率をかなり少なく見積もっていた。

■欧州グリーンディールとESG投資が、EVをカネになる「機」に変貌させた

 そんな状況が、2018年から2019年頃にかけて大きく変わる。

 ただし、それは次世代バッテリーの開発に目途がたつなどの技術的な進化や、充電インフラを一気に普及させる政策が掲げる国が増えたといった、日系自動車メーカーが想定しやすい要件ではなかった。

 ゲームチェンジャーは、ESG投資なるものだったのだ。

 従来、企業の評価は売上高や営業利益などの財務情報を主体としており、それによって株価が上下する。一方、ESG投資とは財務情報に加えて、環境(エンバイロンメント)・社会性(ソーシャル)・企業統治(ガバナンス)が企業の評価を左右するものだ。

 最近、SDGs(国連の持続可能な達成目標)という考え方について、テレビやネットでも話題になることが多いが、ESG投資はSDGsとセットで捉える場合が多い。

ボルボもいち早く全車EV化を宣言したメーカーだ。2030年には全車EV化するという 。ボルボのような規模のメーカーでは生き残りを賭けて早々に選択と集中を進める必要があるということか

 そうした投資マネーが世界の株式市場を駆け巡るようになる。見方を変えると、EVなど本格的な電動車が投資という名目で”金になる日”がやってきたのだ。

 そもそも、自動車メーカーにとって「EVは儲からないビジネス」と言われてきた。

 駆動用の電池を筆頭に、EVを構成する部品は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン関連の部品と比べるとかなり割高。しかも、航続距離を稼ぐには搭載電池容量を大きくする必要があり、さらにコストが上がる。そのほか、充電インフラが少なく、充電時間も長いなど、EVは内燃機関車と比べてメリットよりデメリットが多いという印象が強かった。

 いや、そうしたEVの特性はいまでも基本的には変わっていない。

 ところが、EVを計画的に生産することが株価への好材料になるというESG投資の発想によって、結果的に「EVは儲かるビジネス」という認識に”すり替わった”といえる。

 こうした欧州での動向を踏まえて、トヨタは2019年6月「EVの普及を目指して」という記者会見を開き、2017年に示した電動化ロードマップ「2030年時点でHV(ハイブリッド車)とPHV(プラグインハイブリッド車)を合計450万台、EV/FCVを100万台)というシナリオを2025年に5年前倒しするという大胆な軌道修正をした。

日産は世界でも最も早くEV化に取り組んできたメーカーだ。(その動機は欧州勢とほぼ同様だが)その日産でさえ、電動化ビジネスの主流はe-POWERによるハイブリッドと考えていた

 だが、そのシナリオすら通用しない事態となった。

 ESG投資という経済のドライバーと環境問題とのバランスをとった戦略が「欧州グリーンディール」だ。欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が2019年12月11日に発表した。

 欧州グリーンディールが表舞台に出たことで、欧州自動車メーカー各社はEVシフトへ一気に舵を切った。

 その勢いは、フォルクスワーゲングループが2016年に掲げたEVシフトのスピードを凌ぐもので、ボルボやジャガーが早期に全モデルEV化によるEVメーカーに転身するという流れを生む。

 そしてECは欧州グリーンディールの具体的な目標として、2035年には欧州内で実質的にハイブリッド車を含めた内燃機関搭載の新車販売を禁止すると発表したのだ。

メルセデス・ベンツも2030年に向けて全モデルEV化に向けた「準備」に入ったと発表。一方でベンツの筆頭株主でもある中国の「吉利」とはハイブリッド用エンジンを共同開発中である

 それに添うように、世界自動車産業界のベンチマークというべきメルセデスベンツが2030年を見据えて全モデルEV化への準備に入ったことを明らかにしたものだから、トヨタを含めて日系メーカー各社は早急に電動化ロードマップを修正する必要が出てきたといえる。

■欧州の飛び道具か? 日本の正攻法か? その答えがでるのは10年後??

 日本では国が2020年12月、グリーン成長戦略を発表。自動車については、遅くとも2035年までに軽自動車を含めて新車100%電動化を達成目標に掲げている。

 ただし、自工会・会長の立場として豊田章男氏はメディアに対して「電動化=EV化」ではないと度々指摘してきた。また、内燃機関を有効的に使う環境対応策として水素エンジンを提唱している。

自工会の豊田章男会長は、内燃機関を有効に使った環境対応策もEV化と同様に検討すべしと提言している。今年耐久レース出場で話題となっている水素エンジンもそのひとつだ

 また、マツダやホンダは、国や地域のエネルギー事情によって電動化の進展は異なるという見解を示している。

 確かに、日系メーカー各社が主張する、内燃機関から電動化への緩やかな転換は多くの人にとって納得がいくものだと思う。

 とはいえ、自動車産業界の本家本元である欧州が急激なEVシフトを進めてきた。

 はたして、日本勢の正攻法がどこまで通用するのか? 今後の進展を注意深く見守りたい。

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みんなのコメント

48件
  • ハイブリッド、ディーゼルで日本に勝てないから、国を巻き込んで、法律を自分たちに有利にするべく、EV化への舵を切っただけ。ハイブリッドのトヨタ、ディーゼルのマツダに勝てないと思ったから。
    自動車レースを見ていると解るが、ことFIAが絡むレースではアジア勢(ほぼ日本)が勝ちだすと、そのチームに不利な様にルールを変える。F1のターボ禁止、ルマンのロータリー禁止などなど。ヨーロッパ(特にフランス)では、ヨーロッパが自動車文化発祥でヨーロッパが一番優れていると思っているので、白人が勝たないと気が済まない。
  • この短期間でコロコロ変わってるのだから
    まだこの先予想もできない斜め上な展開もあるかもしれないね
    白人は基本的に有色人種に負けるのが大嫌いだから
    日本人が躍進する限り何があってもおかしくない、スポーツ界なんて酷いものでしょ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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