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【ヒットの法則432】アウディA4アバントはDセグメントワゴンの水準を超えた美しさと品質を持っていた

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【ヒットの法則432】アウディA4アバントはDセグメントワゴンの水準を超えた美しさと品質を持っていた

2008年4月、この年のジュネーブオートサロンでデビューしたアウディA4アバントの国際試乗会がスペインのイビサ島で行われた。スタイリッシュなフォルムを手に入れた新しいアバントはどんな個性を発揮していたのか、革新的な進化を遂げたA4のワゴンバージョンはダイナミクス性能をどれほどアップさせていたのか。ここではその国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)

積載性能と収納能力がアップしたA4アバント
「バックシャン」という言葉を聞いたことのある人はいるだろうか。これは「デカンショ(デカルト・カント・ショーペンハウエルの3名の哲人の略)」という言葉と同じ時代、戦前戦中のバンカラ大学生が使っていたスラングで、正確な語源はBack Schoen。英語のバック(後ろ)とドイツ語のシェーン(キレイ)で、後ろから見て美人の女性を意味する。

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なぜ、こんなことを冒頭に述べたかと言うと、ドイツにおけるアウディ アバントのイメージは「後姿の美しいワゴン(Schoener Ruecken)」なのだ。

中でもA4アバントのデザインは、同じDセグメントのBMW3シリーズツーリングやメルセデス・ベンツCクラス ステーションワゴンと比較して、いつの時代でも美しさという観点ではより多くの賛同を得ており、ドイツや欧州の人気投票でも高い得点を得ている。

5世代目となるA4アバントは今年2008年3月に開催されたジュネーブオートサロンで発表されたが、このニューアバントの試乗会はスペインのイビサ島で行われた。この島はドイツ人のリゾートのメッカで、ドイツ語の新聞やラジオ放送まである、まさに日本人にとってのハワイのような存在である。もちろんその人気の最大の理由は島全体が非常に風光明媚なことで、まさに「美しい島はイビサ」と言えるほど、A4アバントの晴れ舞台には相応しい場所である。

アウディがこれほどA4アバントに力を入れるのは、A4シリーズの中でこのワゴンの占める割合がドイツ国内で65%以上、インターナショナルマーケットで約50%(日本では過半数以上)と、他のDセグメントのライバルに比べて高い販売率を示しているからであると、プロダクトマネージャーのヴォルフラム・バウアーは説明している。

A4セダンをベースにしたアバントの全長は4.7mを超える堂々としたもので、同じDセグメントの3シリーズツーリングよりも18cm、Cクラスステーションワゴンよりも10cmも長い。

このおかげで、アバントは大きく傾斜したバックシャンのリアビューにもかかわらずカーゴルームは通常の状態で490L(3シリーズは460L、Cクラスは450L)を誇る。リアシートを倒した最大の場合は1430L(3シリーズ1385L、Cクラス1465L)と、最大容量ではメルセデスCクラスには負けるがその実用上の差はほとんど誤差の範囲内である。

パワーゲート奥にはリアシートを倒せば長さ1.8mとなる荷室が存在し、ウインタースポーツなどの装備も問題なく運べる。さらに現代のワゴンモデルではもはや常識となった左右のレールに渡された仕切りバー(オプション)があって、少量の荷物がカーゴルームの床を転げまわる心配はないし、さらに荷室の床板は裏側がゴム張り(標準装備)で、裏返せば濡れたものや汚れたものを運ぶこととができる。もちろん取り外せるので掃除も簡単だ。

ところで試乗車に接近して感じたのは、ここまで全長を伸ばし荷室を大きくしたにもかかわらず、ニューA4アバントは相変わらず美しいこと。しかも「バックシャン」なだけでなく、ホイールベースが約2.8mと、ライバルよりも約4cmも長いにもかかわらず、サイドビューがキリッと締まって安定感がある。これこそがアウディのエンジニアが強調する新しいパワートレーンレイアウトによる成果である。

すなわち縦置きエンジンのデフとクラッチの位置を変更してドライブシャフト取り出し口が約15cm前方に移動、その結果フロントのオーバーハングが小さくなった。さらにドライバーの位置も前進したので前ドア前方上部とホイールアーチとの間隔が狭くなり、プロフィールがこれまでのように間延びしていないのである。また同時に、フロントヘビーであった操縦性も改善されることになった。

このニューA4アバントに用意されるエンジンは実に多様性に富んでおり、ガソリン仕様だけでも120psと160psの2種類の1.8L 4気筒TFSI、180psと211psの2L 4気筒TFSI、そして265psの3.2L V6FSIと5種類が、そしてディーゼル仕様は120ps、143ps、そして170psと3種類のチューンの2L 4気筒TDI、190psの2.7L V6TDI、そして240psの3L V6TDIが用意される。またクワトロシステムは当面ガソリンとディーゼルのトップモデルにのみ準備されている。

このテストデイは欧州向けに開催されたので日本仕様に近いものはなく、テストに選んだのは、すでにセダンでおなじみの160psの1.8L TFSIだ。

ハンドルへの軽い振動でドライバーへ警告を促す
ドライバーシートに座るとすぐにセダンで見慣れたインテリアが視界に入る。正面のメーター、中央のナビモニター画面、MMI操作系が並んだ幅広のセンターコンソール。すべての操作系は人間工学的でドライバーオリエンテッド、質感も申し分ない。この部分は他のプレミアムライバルと比べてもアウディの独壇場である。また大型化されたボディのおかげで前席や後席にも十分なスペースが残されている。

1510kgのボディに対して1.8L TFSIエンジンは最高出力160ps、最大トルクは250Nmをマーク。しかも、このトルクを1500rpmから発生するので、他の交通をリードして十分以上の走りを見せる。メーカーの発表によればスタートから100km/hに達する加速所要時間は8.9秒、最高速度は210km/hとなる。ボディが大きく重い分184psのメルセデスC200コンプレッサーワゴン(228km/h)に最高速度では負けるが、0→100km/h加速(8.8秒)はほぼ同等の性能を発揮する。

一方欧州基準での話だが、燃費は100kmあたり7.2LでC200コンプレッサーワゴン(7.7L)を凌ぐ。やはりアウディのバルブリフトシステムと直噴の組み合わせは、ポート噴射のメルセデスに比べると明らかな差を生んでいる。

乗り心地は典型的なドイツ車のそれで、低速ではそれなりの行儀の良さを示す。低速で路面の荒れた場所を40km/hくらいで通過する場合はショックがパッセンジャーに届くが、スピードを上げるにつれてショックは巧みに吸収されフラットになってくる。

高速道路ではオプションのアウディレーンアシストと同時にアウディサイドアシストを試してみる。レーンアシストはウインドシールド中央のリアビューミラーに組み込まれているカメラで車線を検知し、65km/h以上で走行中に車線を逸脱するとステアリングホイールに軽い振動が伝わる。この方式は例えば警告音などより、進歩したシステムであると思う。というのは、昨今のクルマの車内は警告音に満ちているので、音よりも振動の方が感知しやすく、さらにドライバーが何かをしなければいけない場所で警告(振動)を発するからである。

高速道路を降りて一般道路へ向かう、ここではコーナーに遭遇するたびに冒頭に述べたパワートレーン、そしてステアリングギアボックスのアクスル下への位置変更が操縦性の改良に役立っていることを実感する。スピードを上げても前輪はコーナー外側へ向かおうとせず、正確でシャープなステアリングの示す方向へニュートラルに進んで行くのだ。

ところでこの160psバージョンでも少しは感じられたトルクステアだが、後に短時間乗った211psバージョンはちょっと過大だった。やはり大パワーではクワトロを選択すべきだろう。

このニューA4アバント1.8TFSI(160ps)のドイツ標準価格は19%の付加価値税込みで3万0600ユーロ(約490万円)で4月からすでに発売を開始、日本へは今秋(2008年)に登場予定だ。

新しいA4アバントは、先に発表されたセダンが示したように大きな発展を遂げた。美しいスタイル、荷室の広さ、燃費の良いエンジン、FF臭さが激減した操縦性、これまでメルセデスあるいはBMW一本槍で「アウディはどうもなぁ」と思っていた人にも訴える「サムシング」を持っている。実はそれこそがアウディがヨーロッパで躍進を続けている理由なのである。

ドイツにおける今年四半期の新車登録台数を見ると、昨年2007年末に発売を開始した新型A4セダンの登録台数は昨年同期の7.8%増で1万9705台。1万9606台のBMW3シリーズをすでに上回っている。およそ6、7割を占めるアバントが4月から販売に加われば、Cクラスも追い越す勢いなのだ。(文:木村好宏/Motor Magazine 2008年6月号より)



アウディA4アバント 1.8TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4703×1826×1436mm
●ホイールベース:2808mm
●車両重量:1510kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:160ps/4500-6200rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4500rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:CVT
●最高速:210km/h
●0→100km/h加速:8.9秒
※欧州仕様

アウディA4アバント 3.2FSIクワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4703×1826×1436mm
●ホイールベース:2808mm
●車両重量:1660kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3197cc
●最高出力:265ps/6500rpm
●最大トルク:330Nm/3000-5000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●最高速:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:6.6秒
※欧州仕様

[ アルバム : アウディA4アバント はオリジナルサイトでご覧ください ]

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