現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 失敗は成功のもと!? 人気車の礎になった「日陰の名車」 5選

ここから本文です

失敗は成功のもと!? 人気車の礎になった「日陰の名車」 5選

掲載 更新 40
失敗は成功のもと!? 人気車の礎になった「日陰の名車」 5選

 自動車メーカーは日夜、知恵と技術、マーケティングなどを駆使して新車を送り出している。そうであってもヒット車になれるのはひと握りだ。

 しかし、現役時代には大ヒット車とまではいかず、あるいは失敗したものの、そのコンセプトや技術が後の人気車で花開いた例は少なくない。

日本EV界の先駆者 気づけば10周年 日産リーフが世の中に与えた功と罪

 そんな「失敗は成功のもと」というべきクルマや失敗とまではいかないものの、後世で大きく羽ばたいた、人気車の礎となったクルマにスポットライトを当てたい。

文/渡辺陽一郎 写真/HONDA、NISSAN、MAZDA、SUZUKI

【画像ギャラリー】大ヒットには恵まれなかった車たちと、それらが生み出した人気車を見る

■ホンダ 初代インサイト/1999年

1999年登場のホンダ 初代インサイト。軽さと燃費はプリウスに優っていたが売れ行きは伸び悩んだ

 あまり売れなかったが、その後に登場した車種に大きな影響を与え、礎になったクルマがいくつか存在する。その代表が初代インサイトだ。

 初代インサイトの発売は1999年11月で、初代プリウスの約2年後だ。世界で最も軽いといわれた直列3気筒1Lエンジンに、薄型DCブラシレスモーターを組み合わせて、車両重量はハイブリッドながら5速MTが820kg、10・15モード燃費は35km/Lだ。

 初代プリウスは車両重量が1240kg、10・15モード燃費は28km/Lだったから、軽さと燃費では初代インサイトが勝っていた。

 ところが売れ行きは伸び悩む。初代インサイトはコンパクトな2ドアクーペで、実用性も低い。価格はAT仕様が218万円だから、4ドアセダンの初代プリウス(215万円)よりも少し高い。

 それでもインサイトは、ホンダが手掛けるハイブリッドの礎になった。2009年2月には2代目インサイトが発売され、5ナンバーサイズの5ドアハッチバックボディに、初代の技術を発展させたハイブリッドシステムを搭載。エンジンは直列4気筒1.3Lで動力性能に余裕が生まれ、価格は189万円(「G」グレード)と格安だから、幅広いユーザーに愛用された。

 そしてライバル車の3代目プリウスは、2009年5月に発売され、2代目インサイトに対抗すべく価格を安く抑えた。プリウスの価格は「L」が205万円、「S」は220万円だからインサイト「G」よりも高いが、装備が充実して車内も広く、動力性能も上まわった。JC08モード燃費は、インサイト「G」が26km/L、プリウス「S」は30.4km/Lに達した。

 つまり2代目インサイトは、3代目プリウスが商品力を高める手助けまで行った。今の日本はハイブリッド王国で、その主役はトヨタとされるが、初期段階では初代と2代目インサイトが重要な役割を担っている。インサイトの刺激が、トヨタのハイブリッド開発を加速させていた。そしてインサイトの礎の上に、今日のフィット e:HEVなども商品化されている。

■ホンダ ゼスト/2006年

2006年登場のホンダ ゼスト。N-BOXの上級軽自動車路線の礎を築いた

 1998年に軽自動車が今と同じ規格に改訂されると、売れ行きに弾みが付き、国内で新車として売られるクルマの30%以上を占めるようになった。

 当時、ホンダの軽自動車ではライフが主力だったが、軽自動車人気の高まりに応じて上級車種も必要とされた。そこで2002年にザッツを投入したが、外観とは対称的に後席が窮屈で、内外装も不評だから売れ行きは伸び悩んだ。

 そこで2006年にゼストが発売された。後席と荷室が広く、フロントマスクにも存在感が伴う。内装の質を高め、前席もベンチシート風の形状でリラックスできた。全高は2WDが1635mmだが、当時の軽自動車では開放感が伴い、発売された2006年には月平均で約6000台が届け出されて人気車になった。

 この後、2011年の末に、全高が1700mmを超えてスライドドアを装着する先代(初代)N-BOXが発売された。ゼストも2012年の終盤までN-BOXと併売された後に、販売を終えている。ゼストが礎を築いた上級軽自動車の路線は、N-BOXが継承して大ヒットに繋げた。

■日産 初代リーフ/2010年

2010年登場の日産 初代リーフ。売れ行きは伸び悩んだが現行リーフの商品力強化に貢献した

 初代リーフは2010年に発売された。世界初の量産電気自動車だから、初代プリウスと並んで偉大なクルマだが、売れ行きは伸び悩んだ。2011年は東日本大震災があったから除くとして、2012年の登録台数は1か月当たり700~900台に留まった。

 それでも初代モデルだから、改良を行う余地は多く、複数回のマイナーチェンジを実施した。2015年には30kWhのリチウムイオン電池搭載車を追加して、従来の24kWhに比べると、1回の充電で走行可能な距離を伸ばした。30kWhでは、1回の充電によりJC08モードで280kmを走行できた。

 この間に大半の日産ディーラーには急速充電器が設置され、時間の経過に伴ってリーフの利便性も向上していく。リチウムイオン電池の劣化に伴う航続可能距離の低下など、リーフの課題も明らかになってきた。

 そこで2代目の現行リーフでは、1回の充電で走行できる距離を伸ばした。現行型は40kWhがWLTCモードで322km、JC08モードなら400kmを走行できる。62kWhになると、WLTCモードで458km、JC08モードなら570kmに達する。初代リーフの築いた礎により、現行リーフの商品力が飛躍的に高められた。

■マツダ 3代目プレマシー/2010年

2010年登場のマツダ 3代目プレマシー。Zoom-Zoomコンセプトとスカイアクティブ技術の架け橋となった

 3代目プレマシーが礎になったのは、ミニバンや3列シートの話ではない。今のマツダが重視する走行安定性の転換点になったことだ。

 2000年以降に発売されたマツダ車は、全般的に機敏に良く曲がる運転感覚を重視した。当時のマツダは業績が悪化しており、元気の良いクルマ造りをテーマに掲げることで(Zoom-Zoomコンセプトと呼ばれた)、売れ行きの回復を目指したからだ。

 良く曲がる運転感覚自体は悪くないが、当時のマツダ車は、機敏な操舵感の影響で後輪の接地性が低下していた。初代アテンザ(2002年)、2代目デミオ(2002年)、2代目プレマシー(2005年)、CX-7(2006年)は、この傾向が強く走行安定性が悪かった。

 特に2代目プレマシーは、高重心のミニバンだから、走行安定性の悪化が顕著だ。車両の進行方向が機敏に変わってスポーティに思えるが、危険を避ける目的でカーブを曲がっている時にアクセルペダルを戻したり、下りカーブでブレーキペダルを踏んだりすると、後輪の接地性が失われやすかった。

 そこで2010年発売の3代目プレマシーでは、走行安定性と操舵感に対する考え方を改めている。後輪を最優先で安定させ、その上で操舵角に応じて自然に曲がる運転感覚を目指した。

 そして2006年以降のマツダは、走りのバランスを高めた3代目プレマシーと併せて、スカイアクティブ技術の開発も並行して進めていく。

 つまり機敏によく曲がる運転感覚を重視したZoom-Zoomコンセプトのクルマ造りと、先代CX-5から始まった正確性の高いスカイアクティブ技術の商品開発、この2つを繋ぐ架け橋が3代目プレマシーであった。まさに今のマツダ車の礎になるクルマだ。

■スズキ パレット/2008年

2008年登場のスズキ パレット。ライバルのタントには完敗したが、後継のスペーシアで逆転した

 今は軽乗用車の約半数をスペーシア、N-BOX、タントのようなスーパーハイトワゴンが占める。前輪駆動ながら、全高が1700mmを超えるボディにスライドドアを装着することが特徴だ。

 スズキにとって最初のスーパーハイトワゴンは、2008年1月に登場したパレットであった。当時N-BOXは発売前だが(初代の発売は2011年)、初代タントは2003年に登場して注目されていた。そこでスズキは、全高が1700mmを上まわり、スライドドアも装着する画期的なパレットを開発した。

 ところがパレットが発売される直前の2007年12月に、タントが2代目にフルモデルチェンジされ、左側にピラー内蔵型のスライドドアを装着した。右側は前後ともに横開きドアだが、左側は開口幅がワイドで注目を浴びた。

 しかもパレットは全高が1735mmと低めで、ボディサイドの上に向けた絞り込みは強めだから、視覚的な引き締まり感や安定感が伴う代わりにボディがタントよりも小さく見えた。

 パレットが発売された翌年となる2009年の届け出台数は月平均で5178台だ。一番売れる時期なのに伸び悩み、この時にタントは1万2120台を届け出したから、パレットは半数以下に留まった。

 そこで2013年に登場したモデルは、車名をスペーシアに変更した。ボディサイドの上に向けた絞り込みも弱め、ボックス感覚と車内の広さを強調している。発売された翌年の2014年には、月平均で1万台以上を届け出した。

 2017年には現行型にフルモデルチェンジされ、2018年には月平均で1万2675台、2019年には1万3866台を届け出した。タントを抜き、N-BOXに次ぐ売れ行きだ。パレットの反省に基づく改善が、スペーシアをヒット車種に育て上げた。

【画像ギャラリー】大ヒットには恵まれなかった車たちと、それらが生み出した人気車を見る

こんな記事も読まれています

MINI、日本初公開モデルをお披露目!東京・渋谷で試乗もできる体感イベント開催
MINI、日本初公開モデルをお披露目!東京・渋谷で試乗もできる体感イベント開催
グーネット
フィアット「500(チンクエチェント)/500C」国内販売終了。累計販売13万台の人気車
フィアット「500(チンクエチェント)/500C」国内販売終了。累計販売13万台の人気車
グーネット
いよいよガソリンはリッター200円に!? 補助金の終了が間近に迫ってきた!
いよいよガソリンはリッター200円に!? 補助金の終了が間近に迫ってきた!
ベストカーWeb
1900馬力のピニンファリーナ「バッティスタ」と10台限定の「B95」が日本上陸! イタリア大使館でお披露目された超弩級ハイパーカーとは
1900馬力のピニンファリーナ「バッティスタ」と10台限定の「B95」が日本上陸! イタリア大使館でお披露目された超弩級ハイパーカーとは
Auto Messe Web
日産エクストレイルがマイナーチェンジ。合わせて90周年記念車をリリース
日産エクストレイルがマイナーチェンジ。合わせて90周年記念車をリリース
カー・アンド・ドライバー
カマルザマン「ドライのマップに変えた」と雨の決勝でベテランの技。Team Frontierは8耐トライアウト首位通過
カマルザマン「ドライのマップに変えた」と雨の決勝でベテランの技。Team Frontierは8耐トライアウト首位通過
AUTOSPORT web
急きょ出場のデビュー戦でファステストラップの爪痕「シングルシーターでも速いことを示せた」バーニコート/SF第2戦
急きょ出場のデビュー戦でファステストラップの爪痕「シングルシーターでも速いことを示せた」バーニコート/SF第2戦
AUTOSPORT web
可能性は感じる ケド「宿題」も多い オモダ5 プロトタイプへ試乗 1.6Lターボの新型SUV
可能性は感じる ケド「宿題」も多い オモダ5 プロトタイプへ試乗 1.6Lターボの新型SUV
AUTOCAR JAPAN
過去最高! 2630台を3カ月で販売したランボルギーニが2024年も好調な業績を維持している理由とは
過去最高! 2630台を3カ月で販売したランボルギーニが2024年も好調な業績を維持している理由とは
Auto Messe Web
深夜バス相次ぎ廃止 一般系統も“整理”へ 京成バスダイヤ改正
深夜バス相次ぎ廃止 一般系統も“整理”へ 京成バスダイヤ改正
乗りものニュース
1200馬力超え“V12”搭載! 「クワッド“バイク”」世界初公開! バイクとクルマ混ぜちゃった! パワーウエイトレシオ1kg/hpの“絶叫マシン”「エングラー V12」英で発表
1200馬力超え“V12”搭載! 「クワッド“バイク”」世界初公開! バイクとクルマ混ぜちゃった! パワーウエイトレシオ1kg/hpの“絶叫マシン”「エングラー V12」英で発表
くるまのニュース
ストロール、優れたタイヤ管理と戦略で入賞「ニコや裕毅をパスできて楽しかった」アストンマーティン/F1第7戦
ストロール、優れたタイヤ管理と戦略で入賞「ニコや裕毅をパスできて楽しかった」アストンマーティン/F1第7戦
AUTOSPORT web
日本限定の『コンチネンタルGTアズール』がベントレー&マリナーから登場。世界10台のみ、4165万円
日本限定の『コンチネンタルGTアズール』がベントレー&マリナーから登場。世界10台のみ、4165万円
AUTOSPORT web
世界に1台 超高級車ブランド「オーダーメイド」に注力 ロールス・ロイス本社工場拡張へ
世界に1台 超高級車ブランド「オーダーメイド」に注力 ロールス・ロイス本社工場拡張へ
AUTOCAR JAPAN
なつかしの「Auto Roman」といえばアルピナ!「ウルフカウンタック」1号車を日本に持ち込んだ名ショップのいまを紹介
なつかしの「Auto Roman」といえばアルピナ!「ウルフカウンタック」1号車を日本に持ち込んだ名ショップのいまを紹介
Auto Messe Web
ベッテルがセナのマクラーレンMP4/8でイモラを走行「国旗を掲げた瞬間に感情が爆発した」
ベッテルがセナのマクラーレンMP4/8でイモラを走行「国旗を掲げた瞬間に感情が爆発した」
AUTOSPORT web
6年ぶりビッグネーム復活!? 新開発のV12エンジンが搭載されるフラッグシップGTとは
6年ぶりビッグネーム復活!? 新開発のV12エンジンが搭載されるフラッグシップGTとは
レスポンス
『コンチネンタルGT』が新開発V8採用の第4世代に進化。ベントレー、2024年6月の発表を予告
『コンチネンタルGT』が新開発V8採用の第4世代に進化。ベントレー、2024年6月の発表を予告
AUTOSPORT web

みんなのコメント

40件
  • 百歩譲って人気車の礎にはなったかもしれないが、名車ではないな、どれも。
    昨今の、何でもかんでも名車扱いする風潮は感心しないね。
    名車という言葉は本当の名車にだけ使って欲しいもの。
  • ただのこじつけだろ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

120.8149.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1.0115.1万円

中古車を検索
パレットの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

120.8149.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1.0115.1万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村