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徹底的なランチア・デルタ マトゥーロ・ストラダーレ 技術ベースはグループAマシン

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徹底的なランチア・デルタ マトゥーロ・ストラダーレ 技術ベースはグループAマシン

グループAのラリーマシンが技術的なベース

ネザーランド(オランダ)南部に拠点を置くマトゥーロ・コンペティション・カーズ社は、レストモッドを手掛ける多くのワークショップとは成り立ちが異なる。モータースポーツが、その起源にある。

【画像】徹底的なランチア・デルタ マトゥーロ・ストラダーレ 他のラリー・レストモッドも 全142枚

創業者は、起業家のマルコ・ジーラッツ氏と、技術者のフランク・ファン・ガンツェヴィンケル氏という2人。フランクは以前から、クラシックカーによるラリーイベント向けに、ランチア・デルタ・グループA仕様を製作するガレージを営んでいた。

彼が手掛けるクルマは、1980年代の世界ラリー選手権(WRC)を戦っていたオリジナル・マシンより高性能で、耐久性も大幅に向上していた。数1000点に及ぶ部品を独自に開発し、製造も手掛けていたためだ。

ある日、マルコはフランクが仕上げたデルタの1台を購入。ラリーイベントを楽しみ始めた。気の合った2人はデルタのレストアを手掛けるようになり、ラリーマシンの技術を公道用モデルへ応用したら面白いのでは、と考えた。

そうして誕生したのが、マトゥーロ・ストラダーレ。見た目はグループA時代のデルタ・インテグラーレと似ている。しかし公道を走ることを前提に、それ以上の内容へ仕上げられている。

「幼い頃に憧れた名車を手に入れても、実際の走りはイマイチだった、と感じている人は少なくありません。そこでレストモッドの出番です」。とマルコが笑う。

「グループAのラリーマシンを技術的なベースにストリートカーを仕上げ、価格へ見合ったインテリアを与えています。このデルタこそ、あるべき姿です」

細部に至るまで見事なレストモッド

今回は、デルタ・インテグラーレ 8Vを個人的に所有する、同僚のリチャード・レーンもやって来た。そして筆者とともに、艷やかなストラダーレへ見惚れる。あいにく、グレートブリテン島は雨。しかし、上着が濡れたとしても興味は尽きない。

ベース車両は、生産後期のデルタ・インテグラーレ・エボ。マトゥーロ社の仕事は、細部に至るまで見事というしかない。

ボディシェルは地金状態まで裸にされ、錆が完全に取り除かれ、250か所以上の補強が施されているという。強固なロールケージも、インテリアの一部として馴染むよう組み付けられている。

もし可能な限り軽量に仕上げたい場合は、試乗車のようにカーボンファイバー製のボディパネルへ換装も可能。塗装は薄く、カーボンの織り目が透けて見える。

スタイリングはオリジナルのままのように見えるが、ディティールにも拘られている。例えばリアゲートは、テールライトの形状に合わせて、プレスラインの位置が僅かにずらされている。確かにこの方が、まとまりが良い。

テールライト自体も配色が異なる。フロントのウインカーも移設されている。フロントスカートは大きくなり、ボディ底面のオイルサンプ・ガードも兼ねているらしい。

ホイールを固定するボルトは、デルタ・インテグラーレ・エボなら5本だが、4本へ減らされている。グループAマシンが4本だったからだ。

最高出力365ps、最大トルク50.9kg-m

ダッシュボードには、マトゥーロのロゴが入ったメーターが並ぶ。見た目はラリーマシン然としているが、インテリアの質感は高い。

シートポジションは、フロアの位置とともに下げられている。ステアリングホイールはディープコーンで、好ましいドライビングポジションへ落ち着ける。

バケットシートはカーボンシェル。座面側はスウェードで仕立てられ、座り心地が良い。シフトレバーや油圧式ハンドブレーキのレバー、エアコンのスイッチ類なども、独自のアイテム。ひとつひとつが素晴らしい。

ボンネット内の2.0L 4気筒エンジンは、スチール製ヘッドガスケットとコンロッド、鍛造ピストン、幅の広いタイミングベルトなどを用いてリビルド。ギャレットT3ターボのタービンも新調されている。

バランス取りされ、バランスシャフトは備わらない。当時のレギュレーションに準じたリストリクターを装備した状態で、最高出力365ps、最大トルク50.9kg-mを発揮する。

試乗車はプロトタイプということで、トランスミッションは試作品とのこと。軽量フライホイールに高耐久なベアリングとシール、クラッチなどを採用し、66.0kg-m以上へ耐えられる独自ユニットを開発中だという。

四輪駆動システムは、ビスカスカップリングをアップデート。ステアリングラックは新品で、リミテッドスリップ・デフもリビルドを受けている。

ブレーキは、独自の335mmディスクがフロントに組まれる。サスペンションは、トラクティブ社製の調整式だ。

終始意欲的で充足感が半端ない

つまりストラダーレは、極限的なエボリューションを経た、デルタ・インテグラーレ・エボといえる。そのかわり、英国でのお値段は36万8000ポンド(約6660万円)。オプションも沢山用意されている。

ランチア・デルタで2度のWRCタイトルを勝ち取ったラリードライバー、ユハ・カンクネン氏が、マトゥーロ社のアンバサダーを務めている。性能や耐久性に、間違いはないのだろう。

フロアに接しそうなほど低い位置へ腰を下ろし、高めの位置のステアリングホイールへ腕を伸ばす。フロントピラーは往年のモデルらしく細く、運転席からの視界は広い。

ボディサイズはオリジナルと同じ。全長3900mm、全幅1770mm、全高1365mmと、現代水準では小柄といっていい。

ストラダーレは防音材が省かれており、エンジンを始動させると轟音が直接響いてくる。僅かな車重増と引き換えに、希望すれば防音材を追加できるという。筆者なら、静かな方を選ぶだろう。

クラッチペダルは重い。ステアリングホイールを切ると、ガクガクとLSDの衝撃が伝わる。サスペンションは硬く、英国郊外の傷んだ路面では揺れが収まらない。

ストラダーレは終始意欲的。ステアリングはダイレクトで、レシオはクイック。エンジンは伸びやかに回転を上昇させる。シフトレバーのストロークは長いものの、タッチは正確。極めて好印象だ。

ブーストの立ち上がりは早く、7800rpmまで颯爽と吹ける。ラグは殆どない。ドライバーが求めるほど、ストラダーレは応える。サウンドも刺激的で、充足感が半端ない。

グレートブリテン島にはハード過ぎるサス

筆者が求めるものがあるなら、親しみやすいサスペンションだろう。姿勢制御は素晴らしく、グリップもトラクションも不足ないものの、トラクティブ社製のアイテムはハード過ぎる。

それでも、ストラダーレを酷く気に入った。リアタイヤは落ち着いていて、しっかり挙動をサポートしてくれる。フロントノーズの反応は鋭く、パワーの前後分配はリア寄りで、ニュートラルに旋回していく。

路面状態が良ければ、乗り心地も充分落ち着いている。ボディシェルは、非常に硬いに違いない。グレートブリテン島で乗り回すのには不向きなサスペンションも、高価なレストモッドだから、オーナーの希望へ合わせて仕上げてくれるようだ。

適切なチューニングを施せば、最高のデルタになることは間違いない。多くのレストモッド例と同様に、マトゥーロ・ストラダーレも少なくないオーダーを集めるのだろう。

マトゥーロ・ストラダーレ(欧州仕様)のスペック

英国価格:55万2000ポンド(約9660万円/ベース車両を含む)
全長:3900mm(オリジナル)
全幅:1770mm(オリジナル)
全高:1365mm(オリジナル)
最高速度:257km/h(予想)
0-100km/h加速:4.5秒(予想)
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1220kg
パワートレイン:直列4気筒2.0Lターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:365ps
最大トルク:50.9kg-m
ギアボックス:5速マニュアル

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