現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > AWDの安心感、論理的に理由を説明できる? 雪上をアウディで走り、探る 画像163枚

ここから本文です

AWDの安心感、論理的に理由を説明できる? 雪上をアウディで走り、探る 画像163枚

掲載 更新
AWDの安心感、論理的に理由を説明できる? 雪上をアウディで走り、探る 画像163枚

もくじ

ー AWDの安心感 論理的に理由を言えますか?
ー まずはQ5、そしてQ7 ひとつの気づき
ー 雪上のストレス、原因と解決策とは
ー RS7とRS Q3にみる「安心感」の源

『アウディ雪上試乗』すべての画像をみる

AWDの安心感 論理的に理由を言えますか?

AWDのクルマで走りはじめた時すぐに感じる安心感の根源について思いを巡らせたことがあるだろうか?

多くの場合は「AWDだから」と簡単に結論づけてしまいがちだが、もちろんその裏にはロジカルな理由が存在している。とはいえ一般的なドライ路面において、複雑に構成された現代のハイテクAWDの真価を体感することが非常に困難であることは言うまでもないだろう。

寒さがピークを迎えるこの季節に、AWDモデルの氷上、雪上試乗会もいくつか開催される理由は、ミューの低い路面が安心感の先にあるAWDシステムの効能をわかりやすく伝えてくれるからである。

標高1540mに位置する長野県の女神湖において開催されるアウディ・ドライビング・エクスペリエンス・イン女神湖の狙いはもちろん、アウディが誇るAWD技術であるクワトロの効果をより深く体感することにある。

ハンドリング路で目一杯(と言っても最高速40km/hほど)走らせたRS6アバント・パフォーマンスは、意外なほどにボディが小さく感じられ、従順な乗り物だった。4ℓV8ツインターボ・エンジンは無過給領域のパワーも確保されており、繊細なアクセルワークにもしっかりと反応してくれた。今回のテストドライブでは、氷上の定常円旋回とブレーキング、スラローム、そして氷に圧雪が少しだけ混じったハンドリングコースにおいてアウディのスポーツモデルであるSやRS、そしてSUVモデルのQラインをドライブすることができた。

まずはQ5、そしてQ7 ひとつの気づき

最初のメニューはスタッドレスタイヤを履いたQ5による定常円旋回だった。アウディドライブセレクトの走行モードは「ダイナミック」を選び、しかしESCはオンのまま。

するとアンダーステアとオーバーステアを電子制御が細かく相殺している様子がわかり、スロットルとステアリングはほぼ一定のまま、時速15km/hほどで安定した円を描くことができた。

スタッドレスを履いたQ5は今回試乗したモデルの中で、スキーに出かけるようなシーンが最も似合うモデルといえる。大きな上屋のQ7と比べると、まるでスポーツカーのような身のこなしを見せるQ5。今回の試乗車の中では前輪へのトルク配分が大き目の印象だったが、それがハンドリングに悪影響を与えていないところにクワトロの美点がある。ESCボタンを長押しして全オフの状態にすると、ハンドリングの素性が姿を現す。フロントタイヤがグリップしている一瞬を狙ってスロットルをポンッと一発踏み込んでやると、キレイな慣性ドリフトがはじまる。

最初はカウンターステアを当ててテールの振り出しコントロールしていたのだが、慣れてくると前輪に舵角を付けないゼロドリフトを保つことができ、走行円の直径も小さくしていける。

次にピレリのウインタータイヤを履いたQ7で定常円を試すと、すぐに難易度が高まったことに気がついた。センチ単位で充分だったスロットル操作をミリ単位の繊細さにしなければならず、スロットルを踏み過ぎれば簡単にスピンモードに陥ってしまう。


今回ペアを組んだドライバー氏は初めての氷上体験とのことだったが、そんな彼がスリッパリーなQ7に苦戦しながらボソッと呟いた。

「これはクルマの性能っていうより、タイヤ性能の違いですよね……」

そー、その通り! とわたしも半分は同意した。

けれどトラクションの多寡を正確にドライバーに伝えるのはクルマ側の性能なのである。クルマというより、モノコックシャシーやサスペンションの精度と言った方がいいかもしれない。

タイヤのグリップのみならず、Q5とQ7の質量の違いも容易に把握できるし、クワトロ(AWDシステム)がタイヤのグリップ、ハンドリングにどのような影響を及ぼしているかもある程度わかってくる。

雪上のストレス、原因と解決策とは

グニャッグニャとした弾性が多く介在する鈍感な車体や、パワーデリバリーにリニアさを欠くエンジンであれば、絶えず自信をもってドリフトをキープすることなどできない。グリップが回復するまでスロットルオフの待ちの時間が増えてストレスが溜まってしまうのである。

一方アタマの硬いAWDシステムならば、カウンターステアを当てている時でも前輪に余計なトルクがかかるため、パーシャルスロットルで車体を安定させようとしてもそれが返って仇になる。

氷上では400psの最高出力や巨大なブレーキといったRSの本懐を活かすことはできないが、しかし235幅のタイヤは、スタッドレスに置き換えても有効で、今回試乗したモデルの中では最もトラクション性能の高いモデルに感じられた。またリアオーバーハングの短さがすっきりとしたボディコントロールに効いていることも確認できた。そしてこれがもしFR車であればテールスライドは容易にはじまるが、後輪がただ真横に滑るだけで推進力が付かず、結果的にコントロールの幅が極端に狭まってしまう。

そう、クワトロ・システムを内包したアウディの走りは安定しているという以前に、まず前にグイグイと進む。だから速く、だから安定し、コントローラブルなのである。これは高速道路の車線変更において、スピードがあれば一連の動作を滑らかに完了させられるという事実にも似ている。

今回の氷上ドライブでわたしが特に感心したのは、クワトロが「余計なことをしない」という点だった。

氷上における直線路においてスラロームと障害物回避を試したS4。車格を越えたしっとり上質なハンドリングは氷上でも健在。障害物回避ではドライバーが下手にブレーキングで前荷重を掛けてしまうとダメ。スロットルオフと一緒にステアリングを丁寧に切っていくと「到底無理」と思えるスピードでもキレイに曲がってくれた。ステアリングを切った時、それを予測していたかのようにフロントの駆動が間引かれていて旋回を助け、一方ステアリングが中立に近く、後輪の空転が大きい時には積極的に前輪が引っ張ってくれる。

というか前輪が掻くことで行き足(わずかな推進力)が付き、後輪のトラクション回復に努めてくれると言った方が正しいだろう。こちらがやりたいと思っている荷重移動を、クワトロ・システムが4つのタイヤを生き物のように操って完遂してくれるのである。

今回の試乗で最も印象的だったのは5mオーバーの全長を誇るRS7スポーツバック・パフォーマンスだった。

RS7とRS Q3にみる「安心感」の源

今回の試乗で最も印象的だったのは5mオーバーの全長を誇るRS7スポーツバック・パフォーマンスだった。長いホイールベースが生み出す穏やかな動きと、正確なシャシーがもたらしてくれるコントロール性はピカイチで、滑りながらの走りでも確実に狙ったエイペックスを掠めることができる。

スタイリッシュなボディに優越を感じ、高速道路を飛ばす1台として最適に思えるRS7スポーツバック・パフォーマンスだが、氷上でも従順なドライバビリティを垣間見せてくれた。車重は2トン越えだが正確なステアリングと微入力域から溢れ出すトルクによって狙った通りの姿勢制御が可能。一方ホイールベースが短く、ドライ路面でキビキビと走るRS Q3は、氷上では想像以上にクイックで驚かされたが、SUVという枠を完全に超越したモデルという独特の立ち位置を確認することができた。

ステアリングは軽いが、その動きに忠実に追従してくる敏感なシャシーを与えられたRS Q3。公道では硬すぎると感じられるアシの弱点も氷上では感じられず、右足の力の込め方ひとつで姿勢を自在にコントロールできた。安定した挙動を求めるなら、ESCとアウディドライブセレクトにちゃんと頼った方がいいだろう。優秀な電子制御と融合したAWDシステムによって、ドライ路面の8分の1ほどの摩擦係数しかない氷上でも意のままの走りを再現してみせたアウディの各モデル。

だが今回テストドライブしている最中、少しも「クルマに乗せられている」という感覚に陥らなかったのは、クルマが確保している高いスタビリティが乗り手にしっかりと伝わっているから、である。

このためドライバーからの入力がオーバーになることもなく、そこにヒトとクルマのちょうど良い棲み分けや協業が生まれる。

氷上でゆったりと体感できる、しかし限界ギリギリのドライバビリティ。実はそれこそが、普段アウディを走らせた時にヒシヒシと感じる高い安心感の正体なのである。

なお、AUTOCAR JAPAN上でこの記事をご覧になっている方は、記事下の「すべての画像をみる」ボタンから、外部メディアでこの記事をご覧の方は、記事下に設けられたリンク「『アウディ雪上試乗』すべての画像をみる」から、ほかの画像をお楽しみいただける。

関連タグ

こんな記事も読まれています

いすゞのSUV『MU-X』に改良新型、表情一新…タイからグローバル展開へ
いすゞのSUV『MU-X』に改良新型、表情一新…タイからグローバル展開へ
レスポンス
新型電動モビリティ「RICHBIT」シリーズ累計1万台突破
新型電動モビリティ「RICHBIT」シリーズ累計1万台突破
レスポンス
確かに休みは増えたけど……「働き方改革」に苦しむ新車ディーラーの現状
確かに休みは増えたけど……「働き方改革」に苦しむ新車ディーラーの現状
WEB CARTOP
フェラーリやランボルギーニの元デザイナー、中国の小鵬汽車がデザイン責任者に起用
フェラーリやランボルギーニの元デザイナー、中国の小鵬汽車がデザイン責任者に起用
レスポンス
トヨタ 新型「4人乗りアルファード」登場! 斬新「後ろ向きシート」×設定無い「2トーン内装」採用! トヨタの「スゴい技術」搭載した謎の個体とは
トヨタ 新型「4人乗りアルファード」登場! 斬新「後ろ向きシート」×設定無い「2トーン内装」採用! トヨタの「スゴい技術」搭載した謎の個体とは
くるまのニュース
背中やお尻が涼しい! 運転を超快適にしてくれる「ファン付き車シート」が最高だ
背中やお尻が涼しい! 運転を超快適にしてくれる「ファン付き車シート」が最高だ
月刊自家用車WEB
ホンダ「メトロポリタン」 原付一種スクーターの最新モデルを北米で発表
ホンダ「メトロポリタン」 原付一種スクーターの最新モデルを北米で発表
バイクのニュース
メルセデス・ベンツ CL63 AMGの新しい5.5L V8エンジンは想像よりはるかに洗練されていた【10年ひと昔の新車】
メルセデス・ベンツ CL63 AMGの新しい5.5L V8エンジンは想像よりはるかに洗練されていた【10年ひと昔の新車】
Webモーターマガジン
【買っておきたい21世紀名車】速さを研ぎ澄まし、安心の一体感を追求したシビック・タイプR(FL5型)の肖像
【買っておきたい21世紀名車】速さを研ぎ澄まし、安心の一体感を追求したシビック・タイプR(FL5型)の肖像
カー・アンド・ドライバー
スズキ「快適軽ワゴン」がスゴい! 6年ぶり全面刷新で“クラス超え”「豪華リアシート」採用! “日本イチ売れてる”「スペーシア」の特徴は?
スズキ「快適軽ワゴン」がスゴい! 6年ぶり全面刷新で“クラス超え”「豪華リアシート」採用! “日本イチ売れてる”「スペーシア」の特徴は?
くるまのニュース
赤と白の「ロータリーエンジン搭載スポーツカー」再び実車展示! 市販化の可能性が急上昇!? マツダ「アイコニックSP」の魅力とは
赤と白の「ロータリーエンジン搭載スポーツカー」再び実車展示! 市販化の可能性が急上昇!? マツダ「アイコニックSP」の魅力とは
VAGUE
ほぼ初体験のサルト・サーキットも「目標は優勝」。強力な体制を得て小泉洋史がル・マンに挑む
ほぼ初体験のサルト・サーキットも「目標は優勝」。強力な体制を得て小泉洋史がル・マンに挑む
AUTOSPORT web
フル充電まで1.5時間! 急速充電のポータブル電源『PowerArQ S10 Pro』に新色ブラックが登場
フル充電まで1.5時間! 急速充電のポータブル電源『PowerArQ S10 Pro』に新色ブラックが登場
月刊自家用車WEB
23年ぶり復活!? ホンダ新型「プレリュード」に絶えぬ反響! 美麗すぎる「スペシャリティクーペ」どんなモデルになるのか
23年ぶり復活!? ホンダ新型「プレリュード」に絶えぬ反響! 美麗すぎる「スペシャリティクーペ」どんなモデルになるのか
くるまのニュース
クルマのバックモニターが義務化されたって知ってた? 非装着車にも後付けが必要?
クルマのバックモニターが義務化されたって知ってた? 非装着車にも後付けが必要?
月刊自家用車WEB
ホンダ「新型軽バン」発表! 斬新「“黒すぎ”ボンネット」&めちゃカッコイイ“デカール”設定! 新型N-VAN e:用「純正アクセ」10月発売
ホンダ「新型軽バン」発表! 斬新「“黒すぎ”ボンネット」&めちゃカッコイイ“デカール”設定! 新型N-VAN e:用「純正アクセ」10月発売
くるまのニュース
豊田章男会長が「喜一郎じいちゃん」に会いに行く!? クルマ好きは必読の価値あり 『トヨタの子』から読み解くトヨタの真髄
豊田章男会長が「喜一郎じいちゃん」に会いに行く!? クルマ好きは必読の価値あり 『トヨタの子』から読み解くトヨタの真髄
ベストカーWeb
ヤマハ「シグナス グリファス」【1分で読める 原付二種紹介 2024年現行モデル】
ヤマハ「シグナス グリファス」【1分で読める 原付二種紹介 2024年現行モデル】
webオートバイ

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1891.01980.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

378.01880.0万円

中古車を検索
RS7 スポーツバックの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1891.01980.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

378.01880.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村