現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則386】ボルボV70はひとクラス上のライバルにも負けないゆとりと上質感を持っていた

ここから本文です

【ヒットの法則386】ボルボV70はひとクラス上のライバルにも負けないゆとりと上質感を持っていた

掲載 更新
【ヒットの法則386】ボルボV70はひとクラス上のライバルにも負けないゆとりと上質感を持っていた

2007年、ボルボV70がフルモデルチェンジして登場した。ひと回り大きくなって新しい世界へと踏み出したV70はどんなクルマだったのか。Motor Magazine誌はこの新しいV70に注目、ライバルとなるBMW5シリーズ/アウディA6/アルファ159と比較しながら多角的に検証している。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年12月号より)

先端技術が投入されたエンジンへのこだわり
ボルボV70はフルモデルチェンジによって先代モデルよりも上級クラスへと移行した。これまではBMW 3シリーズツーリング/アウディA4アバント/メルセデス・ベンツCクラス ステーションワゴンなどがライバルだったものが、5シリーズ ツーリング/A6アバント/Eクラス ステーションワゴンの土俵へと上がってきたのだ。もちろんその分、価格も上昇したが、同じ台数が売れればより利益が上がる、という図式だ。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

新型V70は、上級クラスを狙うために、まずはエンジンを換えてきた。2006年春からS80に搭載した新しい直列6気筒エンジンを採用している。つまり、S80のワゴンモデルをV70というネーミングにした、という見方もできる。

直列6気筒エンジンを横置きにして使うのは、エンジン長が大きいから難しいと思われてきた。しかしV8エンジンもそうだが、ボルボは徹底的に小型軽量化した直列6気筒エンジンを作ってみせた。そこまでして直列6気筒エンジンを使うメリットは、そのダイナミックバランス性能の高さにある。回転数が高くなるほどに、芯が出たコマのように振動なくきれいに回るのが直列6気筒の特徴だ。これにより質の高い走行感が得られ、上級クラスらしい走る歓びを受けることができる。

これは、BMWが直列6気筒にこだわる理由と同じだが、新しいV70では上級クラスに移行するためのひとつの重要なアイテムとなった。

さて、日本へ導入されたばかりのV70には、まず新しい3Lターボモデルと、S80と共通の3.2L NAという2種類の直列6気筒エンジンが用意される。ターボは4WD、NAはFFという組み合わせだ。2.5L直列5気筒ターボエンジン(FF)のベースモデルと、4WDの3.2L NAモデルは、2008年のからの導入となる。

今回、ライバルモデルとして用意したのは、BMW5シリーズ ツーリング、アウディA6アバント、アルファロメオ アルファ159スポーツワゴンの3車種。もちろん、メルセデス・ベンツEクラス ステーションワゴンも、V70のライバルとなる。

この中で直列6気筒エンジン搭載モデルが用意されているのはBMW5シリーズだけだ。試乗車は最上級モデルの550iだからV8エンジンだが、525i、530i、530xiは直列6気筒エンジン搭載車である。BMWの直列6気筒は、最先端技術満載のエンジンといっていい。軽量化のためにシリンダーブロックにマグネシウム合金を採用し、中空構造のカムシャフトを作り、電動ウォーターポンプ、容量可変型油圧ポンプなどに加え、燃費とパワーの両立を図るバルブトロニック機構を備えるという具合だ。

アウディの2.8Lエンジンは、直噴式のV6である。ル・マン24時間レースで何回も優勝した実績を持つFSI(直噴)エンジン技術を量産車に反映させたもので、低燃費かつ高出力が売りのエンジンだ。

アルファ159スポーツワゴンの3.2L V6エンジンも、JTSダイレクトインジェクションと呼ぶ直噴式のエンジンである。さらにツインフェイザーテクノロジーと呼ぶ連続可変式バルブタイミング機構も備え、ユーロ4という厳しい排出ガス規制にも対応している。そして、高回転まで元気よく回るアルファらしさも味わえるエンジンだ。

V70の直列6気筒エンジンは、1シリンダー当たり4バルブ方式のDOHCで、可変バルブタイミング機構とリフト量可変機構が付いているだけだから、ごく標準的な構成だ。やはり小型軽量化が、このエンジンの最大の特徴といってもいいだろう。

ドライビング面でもそれぞれの個性がある
室内に乗り込むと、V70のゆったりした広さが、近場のファミリーユースでも長距離のドライブ時でも、ゆとりを感じさせてくれる。シートの大きさと形状にも余裕を感じる。あえてスポーティなバケット形状のシートにしないで、大きなところへ座らせることで、乗った人が室内の広さを感じ取れるようになっている。バックレストも十分に高く、ヘッドレストの高さもあるので座高の高いドライバーでもゆとりがある。

リアシートの居住性も、フロントシートと同じように良い。ボディ横幅の広さを生かして、幅広のアームレスト、その中に2個のカップホルダー、さらにカバーを開けると小物入れがある。リア中央席にも、ボタンを押して持ち上げるタイプのヘッドレストと3点式シートベルトが用意されている。またリアシート用エアコン吹き出し口や2つの独立したソースで聞くことができるヘッドフォン用コネクターも装備(T-6は標準、その他はデラックスパッケージオプション)される。

リアシートでは、可倒式バックレストの分割方法が実にボルボらしい。それは40:20:40という細かい分離ができることだ。右側の40と中央の20を合わせて倒すことも可能なので、様々な使い方ができそうだ。

メルセデス・ベンツEクラス ステーションワゴンの広さは必要十分であるが、V70はインテリアデザインがあっさりしている分だけ、より広く感じるようだ。

BMW5シリーズ ツーリングも、Eクラス ステーションワゴンと同じくらいの広さである。大きな人でも窮屈に感じることはないが、5シリーズはシートにサポートがありスポーティな分だけ、V70の方がゆったりしていると感じる。

アルファ159スポーツワゴンが、今回の中ではもっともタイトな感じである。何かが迫ってくるというわけではないが、コクピットにドライバーがスッポリと納まる感覚なので、ドライビングに集中しやすい環境が作られている。そもそもアルファ159スポーツワゴンは、室内の広さやゆとりを狙ったクルマではない。だからV70とはライバル関係ではあるが、競合はしないモデルかもしれない。アルファ159スポーツワゴンが狙っているのは、一体感のある楽しいドライビングだ。

その点でV70にはアルファのようなキビキビ感はない。だが、なかなか良いハンドリングである。ドライバーが急がず、ゆとりを持って走れるように、心を落ち着かせることができる点がいいと思った。

ターボエンジンと4WDを組み合わせるT-6は、やや軽めのハンドルの手応えで軽快に走れる。ハンドルのアシスト量を3段階に調節できるので、重めにして落ち着いたドライビングもできるし、女性ドライバーには軽めにして楽に走るというチョイスもできる。ダンパーの硬さも、コンフォート/スポーツ/アドバンスドの3つのポジションから選ぶことができる。乗り心地とハンドリングのバランスが変わるから、走る条件に合わせれば楽しさも増す。

3.2SEは、NAのFFであるが、ハンドルのアシスト量調整機構はなく、基本的にはT-6より重めである。またT-6にあるダンパーの調節機能もないが、ボクにはこの3.2SEの方が自然な感じでより走りやすく感じた。そのひとつの理由は、車両重量にあるかもしれない。フロントが軽い分、ハンドルを切っていくときにノーズがより素直に入ってくれる感じなのだ。

広い室内を持っているのにハンドリングがスポーティなのは、BMW5シリーズ ツーリングだ。フルタイム4WDのxiを除けばアクティブステアリング機構が標準装備になるから、リアが滑ったときの自動カウンターステアを感じなくても、低速時にシャープになるバリアブルギアレシオのメリットは日常で感じることができるだろう。前後50:50という重量バランスによってコーナリングのしやすさ、ハンドルを切ったときのノーズの入りやすさなど、ドライバーの意思に忠実なハンドリングが目立つ。2007年のマイナーチェンジからは、ハンドルの切り始めでの過敏な動きは影を潜め、スムーズで扱いやすくなっている。

ユーザーへの心配りが生み出す新しい満足感
アウディA6アバントに新しく加わった2.8FSIクワトロであるが、アウディらしい軽い手応えのハンドルによって、ドライバーは負担を感じないでドライビングを楽しめる。切った分だけよく曲がる、という印象ではあるが、ターンインからコーナリング状態の間、フロントヘビーの感触は残る。しかしグラベル路へ入ったときに、アクセル全開でゼロ発進を試みてみたところ、4輪ともまったくホイールスピンを感じさせない鋭いスタートをすることができた。これは、クワトロのメリットを大いに感じる部分である。

同じように、BMW550iツーリングでも試してみた。DSCがうまく作動して、ほとんどホイールスピンせずに鋭いダッシュができる。DSCをカットした場合には、ホイールスピンをしながらも、十分なダッシュ力は感じられた。

アルファ159スポーツワゴンは、少しフロントがホイールスピンしている感じはあるが、4WDだけにその加速力は十分に強かった。

V70 3.2SEはFFなので少しホイールスピンするものの、DSTCの働きもあって十分な加速力はある。T-6は4WDだから、グラベルでもほとんどホイールスピンをせずターボパワーでダッシュしていく。この4WDのセンターデフは、電子制御湿式多板式のハルデックス式だ。基本はFFなのだが、発進時はリアに80Nmまでプレチャージしているという。これは雪道での発進時に最初から滑らないようにする対策だそうで、このグラベル路でもそれが生きていたようだ。

V70の装備でボクが気に入っているのはBLIS(ブラインドスポットインフォメーションシステム/T-6に標準、他モデルはオプション)である。これはS80にも用意されているが、ドアミラーの室内側にあるインジケータが点灯しているときは、横に他車がいることを知らせてくれるというものだ。CCDカメラによってサイド後方をモニターして、映像処理によって障害物を判断してくれる。もちろんBLISだけに頼ってしまうのは好ましくないが、うっかりして死角にクルマがいるのに車線変更してしまうというミスを防止するためには役に立つ。

ボルボV0は、しっかりと上級クラスに移行してきた。ライバルたちとは違った個性を持っていることも、上級クラスに相応しい。今後、さらに凝った装備アイテムを増やしていくことができれば、上級クラスの定番モデルになれるだろう。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2007年12月号より)



ボルボV70 T-6 TE AWD主要諸元
●全長×全幅×全高:4825×1890×1545mm
●ホイールベース:2815mm
●車両重量:1900kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●排気量:2953cc
●最高出力:285ps/5600rpm
●最大トルク:400Nm/1500-4800rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:750万円(2007年)

ボルボV70 3.2 SE主要諸元
●全長×全幅×全高:4825×1890×1545mm
●ホイールベース:2815mm
●車両重量:1770kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:3192cc
●最高出力:238ps/6200rpm
●最大トルク:320Nm/3200rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:575万円(2007年)

BMW 550iツーリングM-Sportパッケージ主要諸元
●全長×全幅×全高:4855×1845×1475mm
●ホイールベース:2885mm
●車両重量:1920kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4798cc
●最高出力:367ps/6300rpm
●最大トルク:490Nm/3400rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:1044万5000円(2007年)

アウディA6アバント 2.8FSI クワトロ エアサスペンション装着車 主要諸元
●全長×全幅×全高:4935×1855×1475mm
●ホイールベース:2845mm
●車両重量:1860kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2772cc
●最高出力:210ps/5500-6800rpm
●最大トルク:280Nm/3000-5000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:686万円(2007年)

アルファロメオ アルファ159スポーツワゴン 3.2JTS Q4 Qトロニック ディスティンクティブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1830×1465mm
●ホイールベース:2705mm
●車両重量:1830kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3195cc
●最高出力:260ps/6300rpm
●最大トルク:322Nm/4500rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:600万円(2007年)

[ アルバム : ボルボV70とD/Eセグメントのライバル はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】マイカー・車検月の登録でガソリン・軽油7円/L引きクーポンが全員貰える!

こんな記事も読まれています

走り続けてはダメ! ムリな割り込みもダメ! たかがこれだけの「追い越し車線」の「基本」が守れないから高速道路は渋滞するしトラブルも起こる!!
走り続けてはダメ! ムリな割り込みもダメ! たかがこれだけの「追い越し車線」の「基本」が守れないから高速道路は渋滞するしトラブルも起こる!!
WEB CARTOP
2023年度の自動車輸出台数、3年連続のプラス 車両供給が回復 円安効果も 自工会発表
2023年度の自動車輸出台数、3年連続のプラス 車両供給が回復 円安効果も 自工会発表
日刊自動車新聞
ステキな人は乗っている『スーパーカブ特別限定版』…コレクターズアイテム
ステキな人は乗っている『スーパーカブ特別限定版』…コレクターズアイテム
レスポンス
英国的完璧さとドイツ的精密さの融合 新型「アストンマーティン DB12 ヴォランテ」のドライビングレポート
英国的完璧さとドイツ的精密さの融合 新型「アストンマーティン DB12 ヴォランテ」のドライビングレポート
AutoBild Japan
住友化学、2024年3月期決算予想は過去最大の赤字 住友ファーマの損失計上で
住友化学、2024年3月期決算予想は過去最大の赤字 住友ファーマの損失計上で
日刊自動車新聞
東名・新東名に並行する「第3の高速道路」工事進行中!? “地獄渋滞”国道246号の救世主「厚木秦野道路」で一体どれだけ便利になるのか
東名・新東名に並行する「第3の高速道路」工事進行中!? “地獄渋滞”国道246号の救世主「厚木秦野道路」で一体どれだけ便利になるのか
くるまのニュース
ヤマハXSR900 ABSの2024年モデルが新色で登場! 赤×白、ブラックの2色展開で5月20日発売
ヤマハXSR900 ABSの2024年モデルが新色で登場! 赤×白、ブラックの2色展開で5月20日発売
モーサイ
[神業でしょ!] 紙工作模型で空冷エンジンのフィンまで超精密に再現!!
[神業でしょ!] 紙工作模型で空冷エンジンのフィンまで超精密に再現!!
WEBヤングマシン
ポルシェ『タイカン』改良新型、中国専用のエントリーモデル発表…北京モーターショー2024
ポルシェ『タイカン』改良新型、中国専用のエントリーモデル発表…北京モーターショー2024
レスポンス
日銀の「利上げ」は新車販売にも影響! 人気の「残価設定ローン」の金利が上昇する可能性もアリ
日銀の「利上げ」は新車販売にも影響! 人気の「残価設定ローン」の金利が上昇する可能性もアリ
WEB CARTOP
トヨタ新型「クラウンSUV」斬新「極小エンブレム」がめちゃカワイイ!? 「クラウンスポーツ」になぜ装着?
トヨタ新型「クラウンSUV」斬新「極小エンブレム」がめちゃカワイイ!? 「クラウンスポーツ」になぜ装着?
くるまのニュース
カワサキの新型モデル「W230」「メグロS1」 発売時期は2024年秋頃に
カワサキの新型モデル「W230」「メグロS1」 発売時期は2024年秋頃に
バイクのニュース
マクラーレンVSフェラーリ、その差は0.1秒以内? バスール代表「些細なことでヒーローにもゼロにもなり得る」と接戦予想
マクラーレンVSフェラーリ、その差は0.1秒以内? バスール代表「些細なことでヒーローにもゼロにもなり得る」と接戦予想
motorsport.com 日本版
洗車機=傷が付くはもう古い! 最新洗車機の凄さとプラスアルファの洗車法
洗車機=傷が付くはもう古い! 最新洗車機の凄さとプラスアルファの洗車法
レスポンス
プジョー2008【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
プジョー2008【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
ビモータとカワサキレーシングチームが合体! 2025年ワールドスーパーバイク選手権に『BbKRT』が誕生
ビモータとカワサキレーシングチームが合体! 2025年ワールドスーパーバイク選手権に『BbKRT』が誕生
WEBヤングマシン
3月の輸入車販売は前年比99.0%と復調傾向。車種別、第1四半期販売ランキングは?! (2024年3月・輸入乗用車販売TOP20&1-3月モデル別TOP10 )
3月の輸入車販売は前年比99.0%と復調傾向。車種別、第1四半期販売ランキングは?! (2024年3月・輸入乗用車販売TOP20&1-3月モデル別TOP10 )
カー・アンド・ドライバー
クルマは“夏”にしか行けない「混浴の露天風呂」ドコ? 標高1457mにある「蓮華温泉」凄かった! 絶景を見てみたい
クルマは“夏”にしか行けない「混浴の露天風呂」ドコ? 標高1457mにある「蓮華温泉」凄かった! 絶景を見てみたい
くるまのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

499.0769.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.9247.0万円

中古車を検索
V70の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

499.0769.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.9247.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村