この記事をまとめると
■スーパーフォーミュラのサポートレースとして開催されているのが「N-ONEオーナーズカップ」
ニッポンの宝「軽自動車」! めちゃくちゃ種類が豊富な「Kカーのボディタイプ」を改めて整理してみた
■「N-ONEオーナーズカップ」は、初代もしくは2代目N-ONEによるワンメイクレース
■ワンメイクゆえにマシン性能差が小さく、いたるところでデッドヒートが繰り広げられる
中古車ベースなら130万円ほどの初期コストで参戦可能
5月20~21日に大分県のオートポリスでスーパーフォーミュラの第4戦が開催された。予選、決勝ともに激しいバトルが展開されていたのだが、そのスーパーフォーミュラに勝るとも劣らないほど、激しいデッドヒートが展開されていたのだが、サポートレースとして20日に決勝が行われた「N-ONEオーナーズカップ」だ。
同シリーズは文字どおり、ホンダの軽自動車、N-ONEを使用したワンメイクレースで、ナンバー付きの入門レースとして2014年にスタート。スーパーフォーミュラなどのビッグレースと同時開催されることが多く、カテゴリーの設立以来、老若男女に親しまれてきた。
2023年も全11戦のスケジュールで開催され、国内の主要コースで開催。シリーズ第4戦となるオートポリスには、同コースのフルグリッドとなる計46台が集結したが、なぜ同シリーズは設立9年目を迎えたいまもなお、抜群の人気を誇るのか?
その最大のポイントとなるのが、リーズナブルな参戦コストだと言えるだろう。N-ONEオーナーズカップのベース車両は、N-ONEのFF/ターボ車両で、現行モデルとなる2代目のJG3型はもちろんのこと、初代のJG1型でも参戦できる。初代JG1型の中古モデルであれば30万円台でベース車両を入手可能なのである。
しかも、同シリーズでは改造範囲が厳しく制限されており、ロールケージやバケットシート、4点式シートベルトなどの安全装備品のほか、ダンパー&スプリング、ブレーキパッド、ブレーキホース、ホイールなどの機能性パーツを除けば、ほぼノーマルの状態となっていることも特徴のひとつ。そのため、マシンの製作コストも約100万円と比較的に安価で、前述のとおり、中古車をベースにすれば、130万円の初期投資で競技車両を用意することができるようになっている。
もちろん、ランニングコストとしてエントリーフィーが5万円で、そのほかにサーキットまでの交通費、宿泊費のほか、タイヤ代が必要となるが、N-ONEオーナーズカップでは155/65R14もしくは165/55R15の低燃費タイヤが使用されていることから、タイヤ代もリーズナブル。しかも、同タイヤのライフは長く、年間3セットで対応できることから、コストパフォーマンスの高いカテゴリーとなっている。
まさにN-ONEオーナーズカップは初心者に最適な入門カテゴリーで、これまでに数多くのビギナーたちが同レースでモータースポーツへの挑戦を開始している。
たとえば九州からフル参戦を行なっている12号車の福川光一郎選手もそのひとりで、「20年ぐらい前にジムカーナをやったことはあるんですけど、レースはN-ONEオーナーズカップで始めました。手軽にレースへ参戦できるし、しかもスーパーフォーミュラと同時開催で、国内の主要サーキットを走ることができることから、これだと思って2014年の設立初年度から参加しています」とのこと。
さらに「一度競技車両を作ってしまえば、年間のランニングコストはそんなにかからないし、N-ONEは積載量も多いのでタイヤ4本と宿泊の荷物を積んで移動できるところも魅力です。このクルマは横転しやすいんですけど、横転するとパドックのみんなが手伝ってくれるので、エントラントの雰囲気もいいですね」と語る。
ちなみに14号車の福川佳奈子選手は光一郎選手の奥様で、このオートポリス戦でレースにデビュー。佳奈子選手もジムカーナ経験はあるものの、レースは初めてで「主人がN-ONEオーナーズカップに初年度から出ていたこともあったし、私はホンダカーズ北九州に勤めていることもあって、今回レースに初めてチャレンジしました」と語る。
佳奈子選手が所属するホンダカーズ北九州はN-ONEオーナーズカップで積極的に活動しているディーラーチームで、12号車の福川光一郎選手のように数多くのカスタマーをサポートするほか、14号車の佳奈子選手のように所属スタッフもドライバーとしてレースにチャレンジ。
このように、福川夫婦は揃ってレースを楽しむこととなったが、オートポリスでは12号車の光一郎選手が予選5位、決勝6位で完走。一方、デビュー戦となった14号車の佳奈子選手は予選で9位につけながらも、「むちゃくちゃ緊張しました」と語るように決勝では苦戦し、13位でチェッカーを受けた。
兄弟や親子でも気軽に楽しめるワンメイクレース
また、N-ONEオーナーズカップを親子で楽しんでいるファミリーもいる。関東から遠征した45号車の塚原臣吾選手は「もともと父がN-ONEオーナーズカップに出ていたし、僕も免許を取ったので3年前にデビューしました」と語るように、5号車で参戦する塚原和臣選手を父に持つ二世ドライバー。
「クルマはワンメイクなんですけど、タイヤやダンパーは選べるのでセッティングの幅が広いところが面白いですね。デビューしたときはビリだんたんですけど、一生懸命に練習してようやく上位で争えるようになりました。なかなか勝てないけれど、そこがまた楽しい」と息子の臣吾選手が魅力を語れば、父の和臣選手も「私は6年前にN-ONEオーナーズカップでレースを始めたんですけど、本当に奥の深いレースで面白い。私は初代のJG1型で参戦しているんですけど、岡山のようなテクニカルコースでは十分に戦えるので楽しいですね」とのことだ。
ちなみにオートポリス戦では、45号車の息子・臣吾選手が予選で14位、決勝で12位にとどまり、5号車の父・和臣選手は予選6位、決勝5位で完走。なお、同レースでポール・トウ・ウインを達成した55号車の塚原啓之選手は、5号車の塚原和臣選手の弟で、まさに親子&兄弟でレースを楽しんでいる。
このようにN-ONEオーナーズカップは多くのビギナーを魅了しているが、その一方で、レース経験の豊富なエキスパートのなかにも、この軽自動車のワンメイクレースにハマっているドライバーは少なくない。かつて、ニッサンGT-R NISMO GT3でスーパー耐久に参戦していたGAMISANもそのひとりで、「一度、レースを辞めたんですけど、いまのチームから声をかけてもらって、3年前にN-ONEオーナーズカップに参戦しました」とのこと。
さらに、「ある程度は自信を持っていたんですけど、いざ参戦してみるとデビュー戦は予選が30番手ぐらいでした。本当はパッと勝って辞めるつもりだったんですけど、かなり難しいカテゴリーで、手軽に参戦できる一方で、スピードを落とさないように無駄のない丁寧なドライビングが求められるので、そこにハマりました。初心者はもちろんですが、経験者にとっても楽しめるカテゴリーで、なかなか勝てないところが面白いですね」と語る。
ちなみに3号車のGAMISANはオートポリス戦で予選10位、決勝8位で完走。
このようにN-ONEオーナーズカップにはさまざまなドライバーが参戦しているが、ワンメイクゆえにマシンの性能差は少なく、いたるところでサイド・バイ・サイド、テール・トゥ・ノーズのバトルが展開されていることも同レースの特徴だ。スーパーフォーミュラのように絶対的なスピードや迫力満点のサウンドはないものの、静かに繰り広げられている接近戦が見どころとなっている。
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みんなのコメント
独特のテクニックがあるんですよ。S耐やGTクラス等で馴れたドライバーは最初はホントに苦戦します。
スポットで数戦出ましたけど散々な結果でめちゃくちゃ恥ずかしかった。
逆に長く乗るとステップアップしにくくなるかもしれません。
本気で将来ドライバーになりたい人は、ある程度パワーのあるカテゴリーやカートから始めましょう。