世の中にはいろいろと変なクルマが存在するが、その代表例の一つが「どっちが前だか後ろだか分からんクルマ」。荷物入れようとリアに近づいたらフロントだったなんてことになるおかしなクルマをご紹介しよう!
文/ベストカーWeb編集部、写真/フィアット、スズキ、ホンダ、GMクルーズ
そっちが前じゃないだろ! なんでこんな前か後か分からんクルマ作ったのよ!
■長い歴史を持つ「前か後か分からんクルマ」
GMクルーズの自動運転車オリジン
クルマを見たとき、どっちが前か後ろかは雰囲気でわかる。フロントにはたいていボンネットがあるし、クルマの屋根はたいてい後ろに向かって下がっているからだ。
ところが世の中には、一瞬どっちが後か前か分からないクルマが存在する。今回はそんなキテレツなクルマをお目にかけたい。
最初に登場するのが、アメリカGMの自動運転部門を担う「GMクルーズ」という会社が作った「オリジン」という自動運転カー。このクルマ、実はホンダが開発に協力していて、2023年のモビリティショーのホンダブースで見かけたという人も多いだろう。
もういきなり分からん。ボディの前後がほぼ対称だから、どっちが後か前かまったく判別不能だ。ただしホンダの人に聞いたら明確に前後があるそうで、リアにはトランクも用意されているそうだ。
まあ公共交通に使う自動運転車は箱型のバスに近いから、オリジンを引き合いに出すのは反則かもしれない。ならばこれをご覧いただこう。こいつこそ「どっちが後か前か分からんクルマ」の草分け、フィアットのムルティプラだ。
これぞ「前後逆グルマ」の元祖フィアット ムルティプラ!
ムルティプラは今を遡ること68年前の1956年に誕生したミニバンの先駆けのようなクルマ。人間が6人乗れたが全長はたったの3530mm、全幅も1450mmしかない。
もともとフィアット600という小型車がベースだからそれは仕方ないのだが、衝撃的なのはやはりそのスタイリング。フロントが絶壁のように立ち上がり、リアに向かって傾斜するから、真横から見るとどういても「後ろが前」なのだ。
フィアットは1998年にも、ムルティプラを名乗るクルマを発表しているが、こちらも「世界一ブサイク」というスゴイ称号を手に入れた。ある意味「個性のないクルマなんか作らん」というイタリア人のプライドを感じさせる傑作車ではある。
■日本代表はなんとスズキのキャリイバン!
トヨタのSAIも結構いい線いっている
さて、日本にも同種のクルマはないものか。前後対称といえば、初代コペンやトヨタのSAI(兄弟車のレクサスHS250hも含む)なんかがいい線言っていると思うのだが、いまひとつ凄みに欠ける。
というわけで登場するのが、スズキのキャリイバンだ。まずは1968年に登場した3代目。スズキが始めて作ったボンネットのない商用バンで、愛くるしいお目目とその下にある空気取り入れ口がゆるキャラの顔みたいだ。
しかしここではやっぱりスタイルに注目。AピラーとDピラーがほぼ同じ角度なうえに窓の配置も前後対称なので、横から見るとどっちにも走り出しそうな気がする。
そしてその造形をさらに磨き上げたのが、翌1969年に登場した4代目キャリイバンだ。うおおおお! これぞ日本が誇る「どっちが後か前か分からんクルマ」の王者ではなかろうか。ボディのペキペキ感が増して、前後対称のイメージがいっそう強まっている。
4代目スズキキャリイ。前後が完全に対称!
しかも4代目キャリイバンはデザイナーがすごい。なんとあのジョルジェット・ジウジアーロが手がけたのだ。前後を貫く明確なウエストラインとシャープなウインドウグラフィックなどにその手腕を感じることができる。
この4代目キャリイバンは、電気自動車にコンバートされ、1970年に開かれた大阪万博ではパトロールカーに使われたりもした。前後が分からないスタイリングは、未来を見せる万博にさぞや似合ったに違いない。
今後電動化が進めば、クルマのデザインは今以上に個性を決める重要な要素となるはず。キャリイバンみたいなぶっ飛んだクルマに期待したい!
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