現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜトヨタは「ランクル」を3つのモデルに戻したのか? 見た目や数字が違うだけじゃない!? 求められる立ち位置

ここから本文です

なぜトヨタは「ランクル」を3つのモデルに戻したのか? 見た目や数字が違うだけじゃない!? 求められる立ち位置

掲載 29
なぜトヨタは「ランクル」を3つのモデルに戻したのか? 見た目や数字が違うだけじゃない!? 求められる立ち位置

■ランドクルーザーシリーズの違いとは

 トヨタ「ランドクルーザー250」のデビューによって、久しぶりにシリーズ体系が2000年代初頭と同様の3モデルに戻りました。
 
 1980年代前半から始まったこのシリーズ体系がどのような理由で始まったかを知らない世代が増えているため、「300」「250」「70」各モデルのキャラクターの違いを理解できない人もいるかもしれません。

【画像】これが「最新ランクル」 車中泊も出来そうな荷室空間を見る!

 トヨタが250系のプレスリリース内の説明によれば、300系は“象徴”、250系は“生活実用”、そして70系は“普遍”のモデルであるとしています。

 この説明もどこかフワッとして分かりづらいところがありますが、250系がモデルコンセプトとして掲げている「原点回帰」という言葉に基づいて考えていきましょう。

 250系の源流は、1984年にデビューした「ランドクルーザ-70ワゴン」です。

 当時のシリーズと言えば、フラッグシップでステーションワゴンモデルであった「ランドクルーザー60」、そして「トヨタジープBJ型」以来の実用四輪駆動車のDNAを踏襲していた70系のみでした。 

 1980年代に入ると日本は景気傾向がいよいよ上向きとなり、同時にアウトドアレジャーブームが興ります。

 ここで注目された自動車カテゴリーが、それまで一部の好事家のものだった四輪駆動車、いわゆる「ヨンク」でした。

 このカテゴリーにはランクル、三菱「パジェロ」、いすゞ「ロデオビッグホーン」、そして日産「サファリ」が存在。

 しかし、当初はどれも1ナンバーか4ナンバーという貨物車であり、後席の居住性はあまり考慮されていませんでした。

 ところが1983年になると、パジェロが「ワゴン」という新基軸を提案。

 積載性よりも後席の快適性を重視して、一般ユーザーにアピールしたのです。

 これがヒットし、パジェロは時代の寵児へと登り詰めていきます。1984年になると、トヨタ、いすゞも各モデルでこれに追随。

 こうして登場したのが70系ワゴンです。

 国産クロスカントリー4WDとして、初めて四輪コイルリジッド式サスペンションを採用したモデルでしたが、パジェロがロングボディのワゴンをラインナップしていたのに対して、こちらはショートボディのみ。

 さらに外観が70系をディフォルメしたような意匠で、内装はチープ、2.4リッター直4ガソリンエンジンが非力だったために、国内での人気は今ひとつでした。

 1980年代末から1990年代初頭にかけてヨンクブームは過熱し、パジェロ人気が最高潮に達します。

1988年には60系がワゴンモデルを追加していましたが、ボディサイズや価格の面から一般ユーザーに浸透するまでには至らず、トヨタは三菱やいすゞの後塵を拝する状態でした。

そこで1990年に満を持して登場させたワゴン専用モデルが初代「ランドクルーザープラド」でした。

 富裕層やマニア層をあえて対象とせず、乗用車としての乗りやすさ、使いやすさをアピール。

 プラドというマスコットネームが付けたのも、パジェロのような親しみやすさを感じてもらうための一手だったようです。

 こうした先祖が生まれた背景を知ると、改めて250系の立ち位置が見えてきます。

 プラドは70系、90系、120系、150系と続きますが、代を重ねるごとに高級SUV路線へと進み、車格以外は上位グレードだった100系や200系との差が分かりづらくなっていきました。

 同時に、ボディデザインもどこかランドクルーザーらしさが薄まっていったのも否めません。

 そこで高級路線は300系に任せ、また2023年大復活で湧いた70系には実用路線を引き続き取らせて、250系はまさに原点に立ち返るような路線を取ったと言えます。

 それはクロスカントリー4WDでありながら、乗用車ライクな性能を持たせた、かつての「55/56型」を彷彿させます。

 ランドクルーザーとして、いかに広いユーザー層に乗ってもらうかというのが主眼だったモデルです(日本では成功を収めたとは言えませんが…)。

 今回、250系は300系と同じGF-Aプラットフォームを採用し、ボディサイズも大幅に向上させました。

 これにより、「300系と何が違うの?」と思ったユーザーが多いかもしれません。

 確かにプラットフォームや駆動システムはほぼ共通ですが、各部に与えられているものは大分異なっています。

 まず250系に搭載されている2.8リッターターボディーゼルエンジンは300系にはないユニットですし、ガソリンエンジンにしても2.7リッター直4を採用しており、よりユーザーフレンドリーなものとなっています。

 サスペンションは基本的には300系と250系は同じ形式で、フロントはダブルウィッシュボーン式、リアは5リンク式になっています。

 ただ300系の特徴である電子制御でダンパーの減衰力調整をする「AVS」は250系に採用されていません。さらに、一見同じような機能に見える300系の「E-KDSS」と250系の「SDM」ですが、E-KDSSが前後のスタビライザーの効果を細かくコントロールするのに対して、SMDはフロントスタビライザーの効果をON/OFFするだけです。

 また同じ形式でも、味付けはまったく違うものになっているといいます。300系が高級感や重厚感のある乗り味に対して、250系はサスペンション、とくにリア回りの部材を徹底的に軽量化することで、軽快感を表現しています。

 これは250系がコンセプトに挙げた“生活重視”を具現化した結果です。普段使いにおいてラグジュアリーではなく、楽しさやノンストレスを追求したということです。

 300系が様々な最新技術を投入してトップレベルに造られているのに対して、250系はその一部を活用しながらも、価格を低めに設定して市場に広く出回ることを主眼にしていることが分かります。

 そして70系は、クロスカントリー4WDとしてのオーセンティックな構造を崩すことなく、日本の国内向けに3ナンバーならではの快適性と使いやすさをプラスした実用車になります。

「300系はデザインが今ひとつクロスカントリー4WDらしくないし、70系だと快適性や安全装備が十分ではない」というユーザーにドンピシャな、まさにシリーズのメインストリームと言えるモデルなのではないでしょうか。

 ネット上の反応を見ると、新規参入のユーザーからはもちろんのこと、300系に否定的だったオールドファンたちからも評価されているのが印象的です。

 しかし好評ゆえに、すでに2024年生産分の受注はほぼ終了したという情報も。

 300系、70系も同様ですが、ランクルが欲しくても買えないという状況は、少しでも早く解消してもらいたいところです。

こんな記事も読まれています

超人気クロカン四駆! トヨタ新型「ランクル250」フルオプションで買うと「いくら」!? “1000万円以内”で買えるけど「しばらく買えない」理由とは
超人気クロカン四駆! トヨタ新型「ランクル250」フルオプションで買うと「いくら」!? “1000万円以内”で買えるけど「しばらく買えない」理由とは
くるまのニュース
レクサスが新型「豪華オフロードSUV」発売! どんな人が買う? ゴツデザイン採用「GX」の反響は?
レクサスが新型「豪華オフロードSUV」発売! どんな人が買う? ゴツデザイン採用「GX」の反響は?
くるまのニュース
いすゞ「高級SUV」がスゴい! 同じ車に「9コ」の名前がある!? 便利すぎて「OEM供給」されまくった「車名多すぎモデル」とは
いすゞ「高級SUV」がスゴい! 同じ車に「9コ」の名前がある!? 便利すぎて「OEM供給」されまくった「車名多すぎモデル」とは
くるまのニュース
新型「6人乗りハイエンドミニバン」発売! 国産“最高峰”の「3列目」も採用! 快適すぎるレクサス「新型LM」 サードシートの特徴は
新型「6人乗りハイエンドミニバン」発売! 国産“最高峰”の「3列目」も採用! 快適すぎるレクサス「新型LM」 サードシートの特徴は
くるまのニュース
「ガソリン代が安くて最高!」 日本一「燃費のいいクルマ」ってどれ? “財布に優しい”国産車トップ3とは
「ガソリン代が安くて最高!」 日本一「燃費のいいクルマ」ってどれ? “財布に優しい”国産車トップ3とは
くるまのニュース
三菱「新型SUV」公開! めちゃスポーティ感ある「エリートLE」! 3列7人乗りもある「パジェロS」尼に登場
三菱「新型SUV」公開! めちゃスポーティ感ある「エリートLE」! 3列7人乗りもある「パジェロS」尼に登場
くるまのニュース
トヨタ「5速MTミニバン」現る!? 斬新「天才タマゴ」 アルヴェルにはない「エスティマ」の特徴とは
トヨタ「5速MTミニバン」現る!? 斬新「天才タマゴ」 アルヴェルにはない「エスティマ」の特徴とは
くるまのニュース
令和の時代に「アナログなレバースイッチ」なぜ? 変わらないのスゴいんです! レトロだけじゃ語れない“ナナマル”の魅力とは
令和の時代に「アナログなレバースイッチ」なぜ? 変わらないのスゴいんです! レトロだけじゃ語れない“ナナマル”の魅力とは
くるまのニュース
SUV風!? ホンダが新型「N-BOX JOY」今秋発売!? ついに「アウトドア仕様」登場か 期待されるコトとは
SUV風!? ホンダが新型「N-BOX JOY」今秋発売!? ついに「アウトドア仕様」登場か 期待されるコトとは
くるまのニュース
新型「GT-R“R36”」まもなく公開へ!? 1000馬力の“4.1リッターV6”搭載!レトロな「旧型風デザイン」もカッコイイ「和製スーパーカー」の正体は?
新型「GT-R“R36”」まもなく公開へ!? 1000馬力の“4.1リッターV6”搭載!レトロな「旧型風デザイン」もカッコイイ「和製スーパーカー」の正体は?
くるまのニュース
4月発売「ランクル250」は本当に“原点回帰”できたのか?
4月発売「ランクル250」は本当に“原点回帰”できたのか?
Merkmal
早く出してー「ランクルFJ」が売れまくると断言できる理由と可能性
早く出してー「ランクルFJ」が売れまくると断言できる理由と可能性
ベストカーWeb
日産の「S13型シルビア」なぜ人気? デートカー&走り屋御用達… “ヤングタイマー”なクルマの魅力とは
日産の「S13型シルビア」なぜ人気? デートカー&走り屋御用達… “ヤングタイマー”なクルマの魅力とは
くるまのニュース
日産「新型エルグランド」初公開か!? 元祖「キング・オブ・ミニバン」ようやくの“全面刷新”に期待大! 次期「超高級ミニバン」の姿を徹底分析!
日産「新型エルグランド」初公開か!? 元祖「キング・オブ・ミニバン」ようやくの“全面刷新”に期待大! 次期「超高級ミニバン」の姿を徹底分析!
くるまのニュース
スズキが新型「最上・最大級SUV」を2025年発売へ! 全長4.3mボディ&「斬新シフト」採用! 「謎のサイ」もいる「eVX」の指し示すものとは
スズキが新型「最上・最大級SUV」を2025年発売へ! 全長4.3mボディ&「斬新シフト」採用! 「謎のサイ」もいる「eVX」の指し示すものとは
くるまのニュース
トヨタ「新型ラージSUV」17年ぶり復活へ 全長5m切り“上質デザイン”×「画期的ラゲッジ」採用! 期待の「めちゃ便利なクラウン」はどんなモデル?
トヨタ「新型ラージSUV」17年ぶり復活へ 全長5m切り“上質デザイン”×「画期的ラゲッジ」採用! 期待の「めちゃ便利なクラウン」はどんなモデル?
くるまのニュース
最新のランクルは最良? ランドクルーザー250に試乗 オフロードも最新技術で快適に
最新のランクルは最良? ランドクルーザー250に試乗 オフロードも最新技術で快適に
日刊自動車新聞
衝撃的な「和製スーパーカー」の登場! “国産最高額”を記録したホンダ「NSX」が凄い!「後継モデル」は作られるのか?
衝撃的な「和製スーパーカー」の登場! “国産最高額”を記録したホンダ「NSX」が凄い!「後継モデル」は作られるのか?
くるまのニュース

みんなのコメント

29件
  • sr2********
    品薄商法が美味しいと気付いたからでしょ
  • NOBBY.FJT
    ガソリンエンジンにしても2.7リッター直4を採用しており、よりユーザーフレンドリーなものとなっています...とあるが海外向けには比較的新しい2.4Lターボがあるのに対し、国内向けは旧態依然としたパワーもなく燃費も悪い2TRエンジン。
    生産台数も少ないし国内市場が軽視されているイメージを受けてしまいます。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

339.1495.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

54.0680.0万円

中古車を検索
パジェロの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

339.1495.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

54.0680.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村