1980年代は各メーカーからさまざまなディーゼルモデルが登場した。なかでも、人気を集めた3台を振り返る!
ディーゼル乗用車の黎明期
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ディーゼルエンジンは、大方の予想に反して、まだまだ“死んで”いない。1980年代は、日本におけるディーゼル乗用車の黎明期で、メーカーごとにさまざまな取り組みがあり、個性を楽しめた。
ディーゼルエンジンといえば、欧州を中心に排ガス規制が厳しくなるなか、排ガス中の汚染物質が問題になってきた。2010年代には余命いくばくもなく、電動車にとって代わられるなどと言われた。
しかし、尿素を使った排ガスのクリーン化など、各社の技術開発の成果もあり、長い距離を走るドライバーを中心に、いまも売れ行き好調だ。
そもそもディーゼルエンジンの歴史は古い。19世紀、フランス出身のルドルフ・ディーゼルによって開発され、比較的シンプルな構造と高い耐久性ゆえ、交通機関をはじめ工業用として広まった経緯がある。
ダイムラー・ベンツ(現メルセデス・ベンツ)は、自社のディーゼルエンジンを大戦中には戦車など軍用にも広く供給。たとえば、1941年にはじまった独ソ戦において零下40℃の環境下でディーゼルエンジンが停止した理由などをすべて文献化し、戦後の開発に役立ててきた……とか。
のちに私が、メルセデスで働くエンジン技術者(たち)に確認したところ、「ありそうな話ですねぇ、でも今はそんなことないんじゃないでしょうか」ということだった。ときは1990年代後半。そりゃそうでしょう。
1970~1980年代は、戦後30年少々しかたっておらず(今から2000年を振り返るようなもの)、ドイツ車には上記のようなエンジニアリング神話がつきまとっていたものだ。
日本で売られていたドイツ車だと、メルセデス・ベンツW123のステーションワゴンが思いつく。ディーゼルモデルしか正規販売されていなかったのだ。アウトバーンをたんたんと走っていくために開発されたようなモデルで、赤信号による停止が多い日本の市街地ではかったるかった。
ちょっとマニアックなところではプジョー「504」というセダンも、日本ではディーゼルエンジン車しか販売されていなかった。なぜだったんだろう……。始動のためのグロー(予熱)プラグの性能が低くて、イグニッションをオンにしてからエンジンがガラガラっとまわりはじめるまで1分は必要だった。そういう時代も懐かしい。
1.フォルクスワーゲン「ゴルフ ディーゼル」(初代&2代目)ディーゼルのドイツ車といえば、フォルクスワーゲンのゴルフだ。日本では1977年に初代ゴルフのディーゼルが導入され、ゴルフII、そしてゴルフIIIにも、という具合だった。
ゴルフのディーゼルは、なかなかよく出来ていた。始動が早くて、かつ、エンジン回転も意外によくまわり、とくに1970年代は日本の商用車ベースのディーゼルエンジン搭載車とあきらかに一線を画したモデルだった。「GTD」という性能を追求したモデルにも惹かれた。
難点は、ガラガラッというエンジン音。ゴルフといえば、雑誌「JJ」などでは、リッチなイメージのお嬢さまをイメージした読者モデルとともによく登場していたが、エンジンの洗練度をはじめ、重いステアリング、硬めの乗り心地、狭い後席と、ファミリーカーとしては、今ひとつ。と、当時の私は思っていた。
ディーゼルのゴルフは、くわえて、赤信号でやたら停止させられる日本の市街地では扱いにくかった。ドイツの信号は“緑の波”などといい、制限速度を守って走ると、信号が次々に緑に変わっていくが、日本では、パトカーが警らのコースに使う道以外は、なかなか見つからない。高速移動の多い人以外は、ゴルフのディーゼルに乗る理由がなかなか見つからなかった。
それと、1980年代に入ると、酸性雨が欧州で問題化するなど、ディーゼルの排ガス中の環境汚染成分が問題視されるようになってきており、それもある種のひとにとっては、ディーゼルとの距離感が広がったのも事実。
もうひとつの難点は価格だ。フォルクスワーゲン本社が日本法人を設立して販売に乗り出す前のゴルフは高かった。ゴルフIIのCLディーゼルは233万円とかなり高め(1990年)。日本車だとトヨタ「クラウン」(2400ディーゼルターボスーパーDX)とほぼ同価格である。
1988年にはCLディーゼルターボが発売され、結構フォルクスワーゲン(と同社製品の輸入代理店のヤナセ)は、日本市場におけるディーゼルモデルの拡販に本気なのだと思わせられた。
欧州では2010年代後半に、ディーゼルエンジン車のCO2排出量規制が厳しくなり、一時はディーゼルも消滅か? など、極端ともいえる見通しまで飛び出した。
そこにあって、フォルクスワーゲンはディーゼルを諦めず、排ガスのクリーン化を進めるとともに、ガソリンエンジンとほとんど変わらない静粛性と軽快感をそなえたディーゼルエンジンを開発。いまのゴルフでディーゼルエンジンを体験するたびに、私は隔世の感をおぼえるのだ。
2.いすゞ「ジェミニ」(2代目)今、いすゞ自動車といえばトラックやバスのメーカーだけれど、1990年代初頭までのいすゞは、デザインでも技術でも、なかなかすぐれた乗用車を多く手がけていた。ディーゼルエンジンのノウハウも豊富で、1985年発売の2代目ジェミニも“いすゞ的”ともいえるプロダクトだ。
いまでこそ街中で見かけることは稀になったが、1974年に登場した初代ジェミニは、印象的なクルマだ。セダンもよかったが、2ドア版がスタイリング的に洒落ていたし、操縦性にすぐれていて、私は本当に好きだった。
いま振り返ると、初代ジェミニといえば。1979年に発売された高性能な「ZZ/R」がまっさきに思いつくけれど、ディーゼルエンジンも、つねにアップデートが加えられ、1982年にはターボ化。これもいいクルマだったのだ。
フルモデルチェンジして、イタルデザインの手になるボディとともに、駆動方式も、後輪駆動から前輪駆動へと劇的に変わったのが2代目ジェミニ。このクルマでも、ガソリンに続いてすぐにディーゼル(とターボディーゼル)エンジンモデルが追加された。
2代目ジェミニでは、ただし、1985年から1990年代という時代もあり、ガソリンエンジン車の高性能化が顕著だった。GM社のチューニングを手がけてきたイルムシャーのパーツ装着車や、当時おなじGM系列だったロータス社のブランドを使ったZZハンドリング・バイ・ロータスなどが、いまも印象に残っている。
ディーゼル車は、1978年に「117クーペ」に追加されたし、ジェミニの上に位置するセダン、「アスカ」(1983~1990年)にも設定。当時のいすゞのディーゼルといえば、SUVのビッグホーンがもっとも印象に残っている。これにもハンドリングバイロータスがあった。あらゆる組合せを試す。それが当時のいすゞだったのだ。
3.ダイハツ「シャレード」(2代目)2023年にさまざまな問題を引き起こし、全車種出荷停止まで実施したダイハツ工業だが、本来は地に足のついたクルマづくりを特徴とするメーカーなのだ。と、1983年発売の2代目「シャレード」を紹介にあたって、改めて思うのである。コンセプトメーキングにもすぐれていたし。
このシャレードといえば、まっさきに挙げられるのが、1.0リッターディーゼル。993ccの3気筒エンジンは、初代で採用されたものだが、最初はガソリン仕様だったのを、ブロックを流用してディーゼル仕様に仕立てたのだ。初代ゴルフもそうだった。
当時発表された燃費はリッターあたり37.1km。大きな話題を呼んだ。まあ、60km/hでの定地走行など、リアルワールドとはちょっとかけ離れた計測法だけれど、そこはおもしろければいいんじゃないか、などと思ったのも事実。
この3気筒ディーゼルエンジンは、先述のとおりガソリンエンジンのブロックを流用したこともあり(ブロックが薄め)、燃焼音がかなり大きめ。しかも振動がデカい。いい印象はほとんどないエンジンである。
ダイハツでは、それでも、1984年にはディーゼルターボを追加。“燃費チャンピオン”と、みずから謳うだけに、たとえ評価は芳しくなくても、ディーゼルエンジンをラインナップから落とすことは出来なかったのだろう。
むしろ2代目といえば、ガソリンエンジンのホットハッチぶりが印象に残っている。ひとつはエアロパーツをいろいろつけてWRCカーを思わせたスタイリッシュなシャレード・デトマソ・ターボ。もうひとつは、モータースポーツ用の926ターボ。そっちのほうが、開発陣の本懐だったはずだ。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)
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非力で大変な車でしたが、燃費はリッター23kmと良かったので貧乏学生のアシとして頑張ってくれていました。懐かしいですね♪