1970年代の後半に大ブームが起き、今もなお人々を魅了してやまないスーパーカーたち。そんな懐かしいモデルから現代のハイパースポーツまでを紹介していく、スーパーカークロニクル。今回は、マセラティ カムシンだ。
マセラティ カムシン(MASERATI KHAMSIN:1973-1982)
スポーツカーはもちろんのこと、ほかのジャンルのクルマでも2座モデルの販売は難しい。高級スポーツカー メーカーの老舗であるマセラティもその例に漏れず、ギブリの後継車として1973年のパリ モーターショーで発表された「カムシン」は、2+2の高級スポーツクーペに生まれ変わった。その車名はマセラティ伝統の「風」シリーズのひとつで、エジプトの砂漠地帯に吹き荒れる熱く激しい季節風に由来する。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
カムシンの試作車は1972年のトリノ モーターショーでベルトーネのブースに展示されたように、そのデザインはそれまでのジョルジェット・ジウジアーロではなく、ベルトーネに在籍していた鬼才マルチェロ・ガンディーニが手がけた。
ウエッジシェイプのスタイリングは共通だが、ギブリのような優雅なイメージではなく、エッジの効いたシャープなものに一新された。デザイン上の特徴としては、運転席側にオフセットしたボンネット上の横長アウトレット(したがって左右対称ではない)と、後方視界を拡大するガラス製のリアパネルをテールランプの間に採用したことだった。
駆動系はギブリから継承したコンベンショナルなFR方式を採用した。ホイールベースはギブリと同じ2550mmだったが、全長を190mm短縮して前後のオーバーハングを切り詰め、慣性重量低減を図って運動性能の向上を目指している。
フロントに搭載されたパワーユニットは、ギブリSSと同じ5Lの90度V8 DOHCで、最高出力は320ps、最大トルクは49.0kgmを発生した。とくに大排気量エンジンならではの49.0kgmという大トルクが持ち味で、車両重量は1700kgと当時のスポーツカーとしては重めの車体だが、0→100km/h加速は7.3秒、最高速は275km/hというパフォーマンスを発揮した。
当時のマセラティはシトロエンの傘下にあり、同社が得意とするユニークな高圧油圧システムを、ブレーキ/クラッチ/パワーステアリング/リトラクタブル式ヘッドランプなどの作動に使用していた。それゆえ、このシステムの不具合が多発し、これがカムシンのネックになってしまった。さらに、第1次オイルショックの影響も受け、約430台で生産を終了した。
マセラティ カムシン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4400×1800×1140mm
●ホイールベース:2550mm
●車両重量:1700kg
●エンジン種類:90度V8 DOHC
●総排気量:4930cc
●最高出力:320ps/5500rpm
●最大トルク:49.0kgm/4000rpm
●燃料・タンク容量:有鉛ハイオク・90L
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:FR
●タイヤサイズ:215/70VR15
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