Mercedes-AMG S63 4MATIC Cabriolet × BENTLEY Continental GT Speed Convertible
メルセデスAMG S63 4マティック カブリオレ × ベントレー コンチネンタルGT スピード コンバーチブル
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ウインターシーズンに味わう4座オープンの誘惑
限られた冬の季節を肌で感じるには、ラグジュアリーオープンが最高だ。颯爽と屋根を開け、仕立ての良い車内で澄み切った外気を感じれば、退屈な日常から、特別な非日常へすぐにあなたを誘ってくれる。44年振りに復活を遂げたAMG S63 4マティックカブリオレをはじめとする、そんな豪奢なラグジュアリーオープン4台を佐藤久実が味わい尽くした。(前編/後編)
「対面早々から至れり尽くせりの“おもてなし”を受ける」
44年振りに復活したSクラス・カブリオレ。なのに、試乗日はあいにくの雨・・・。運転席に収まりエンジンスタートボタンを押すと、シートベルトがせり出してきて、ステアリングが下がり、シートもメモリー位置にスライド、と対面早々から至れり尽くせりの“おもてなし”を受ける。
トップをクローズドにしたまま走り出す。一般道を少し走り、間もなく高速道路へ。そしてふと思った。全然カブリオレに乗っている感覚じゃない、と。もちろん、これは褒めコトバである。ルーフに当たる耳障りな雨音も聞こえなければこもり音もない。室内は高い静粛性に包まれる。
もちろん乗り心地も快適で、Sクラスに相応しい優雅さそのもの。憎いね、とつぶやきたくなるほどだ。
「限りなく知的で、常にポーカーフェイスで淡々としているS63 カブリオレ」
AMGモデルゆえ、ハイパワーエンジンを搭載しているが、これみよがしな素振りも見せない。アクセルを開けていくと、必要十分な加速を得られるがパワーを持て余す感はまったくなく、もちろん、車重を感じるシーンもない。この、エンジン特性の合わせ方、パワーフィールの感じさせ方がホント、絶妙なのだ。ステアリング、ブレーキペダルなど、すべての操作系において同じ印象だ。
ワインディングでダンパーやシフトをスポーツモードにする。コーナー手前でブレーキを踏むと、適性なギヤまでシフトダウンしていく。ブリッピング時のサウンドは響くがショックは皆無。入力が高くなった分、減衰の高められた足まわりが支えてくれるが、基本的な“乗り味”は変わらない。スポーツカーほど張り切っては走らないが、ストレスなくコーナーをクリアする身のこなしは見事。限りなく知的で、常にポーカーフェイスで淡々としている感じだ。
幸い、午後から雨が上がり、オープンドライブを堪能できた。オープン時にはウインドディフレクターとエアキャップで風の巻き込みを低減。エアコンも自動的に調節される。そして、ドアアームレスト、センターアームレスト、ステアリング、シートにヒーターが装備され、ヘッドレストにはエアスカーフが備わる。ここでも、過剰なまでの素晴らしいおもてなしがある。
「1台で所有欲を満たしてくれるクルマになりえる」
強烈なキャラがあるかといえば、ない。後味スッキリ。良くも悪くも、それがメルセデスなのだろう。
一般論として、カブリオレは、“爽快なオープンエアモータリング”を手に入れる代わりに、スペースや快適性などトレードオフする要素もある。が、メルセデスは、常に完璧を目指し、「あなたのわがまま、すべて叶えます」と言わんばかりの充実度だ。もちろん、ルーフを収納するため、トランクスペースはクーペと同じ、とはいかない。しかし、妥協すべき点は極めて少ない。
このクラスのクルマを購入する層は、ある程度、金銭的余裕があり、“複数所有”という選択肢も可能だろう。しかし、2台持つのは何かと面倒だし・・・というユーザーにとっても、おそらく1台で所有欲を満たしてくれるクルマになりえる。
「保守的ではあるが、究極的なオープンカーであり、間違いのない堅い選択」
オープンモデルのような、非メインストリームのクルマに乗ると、改めてメルセデスの「最善か無か」というフィロソフィが実感できる。
たとえば、このクルマはACCやレーンキープアシストをはじめとする最新の先進装備も完備する。どんなセグメントやカタチ、どんな特徴のクルマであっても、安全・快適、そして高効率でなくてはならないという姿勢が明確なのだ。
保守的ではあるが、究極的なオープンカーであり、間違いのない堅い選択と言えるだろう。
「一見、旧態依然とも思える優雅な乗り味にブランド性を垣間見る」
品格を備え、威風堂々とした佇まいのコンチネンタルGTスピードコンバーチブル。
当然、今どきの電子制御を駆使したモデルでありながら、無駄にパワーや速さをアピールするのではなく、一見、旧態依然とも思える優雅な乗り味としているあたりに、ベントレーのブランド性を垣間見る。
とにかくこのクルマ、操作系にも走りにもずっしりとした重厚感があり、直進性に優れている。そして、「いなし」の技が見事である。
「優雅な身のこなしは、焦らず慌てず、ゆったりとオープンエアを楽しんでと訴える」
ステアリングは比較的スローなギヤ比で、穏やかにロールさせながらジワーッと向きを変えていく。やや重めのペダル類は、穏やかな操作を促すような意図的なチューニングなのだろう。アクセルを開けると、ジワジワとトルクが湧き出てくるイメージ。そして、ブレーキペダルもストロークたっぷりで、踏みしろに応じてリニアに制動力が立ち上がる。
その優雅な身のこなしは、焦らず慌てず、ゆったりとオープンエアを楽しんでください! とクルマから訴えられているかのような雰囲気だ。
しかし。実はこのクルマ、W12気筒6.0リッターツインターボを搭載し、635ps/820Nmという、とてつもないパワーを有する。街中では、わずか1000rpm+αの領域しかタコメーターの針が動かず、豊かなトルクによる底力を感じさせる。だが正直、オープンカーにこれほどのパワーは必要ない。いや、オープンに限らず、こんなパフォーマンスを発揮するチャンスなどまずない。
とはいえ、量産ブランドとは一線を画す「ベントレー」の、そしてコンチネタルファミリーの頂点に君臨するモデルとしては、「最高スペック」を有することが大事で、オーナーにとっても所有欲を満たす重要な要素なのである。
「カントリーロードを疾走する勇姿を思い描かせるような情緒豊かなクルマ」
そして、ゆったりモードだけでなく、このハイパワーにもちゃんと走りで応えてくれる。ある一定の速度域を超えると、すべての操作系のフィールが一気に変わるのだ。ステアリングはシャープになり、ブレーキはたっぷりなストロークを使い切ると踏力に応じてギュッと止まるようになり、言うまでもなく、アクセルも踏み込むと俊足となる。
それでも「牙を剥く」という感じではなく、どこまでもジェントルな雰囲気を損なうことはない。もちろん、一般道を常識的なスピードで走っていての印象だが。
唐突に操作フィールが変わったら違和感がありそうなものだろう。だが、常用域ではスローな領域だけで十分だし、スピードを上げていけばスローなモードは一瞬にしてスムーズにシャープな特性へと切り替わるので、実際に走ってみると違和感はないのだ。
非常にユニークなフィーリングだが、オープンカーらしい性格と、超ハイパフォーマンスを見事なまでに両立させるチューニングの妙に感心させられた。
豪快なパワーのオープンカーを操る贅沢、そして、曇天の多いイギリスにおいて、限定的チャンスのオープンカー日和を堪能するのはとても贅沢で憧れも強いだろう。カントリーロードを疾走する勇姿を思い描かせるような情緒豊かなクルマだ。
REPORT/佐藤久実(Kumi SATO)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
【SPECIFICATIONS】
メルセデスAMG S63 4マティック カブリオレ
ボディサイズ:全長5045 全幅1915 全高1430mm
ホイールベース:2945mm
車両重量:2220kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:5461cc
最高出力:430kW(585ps)/5500rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/2250-3750rpm
トランスミッション:7速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/40R20 後285/35R20
最高速度:250km/h(リミッター介入)
0-100km/h:3.9秒
CO2排出量:244g/km(JC08)
燃料消費率:7.9km/L(JC08)
車両本体価格:2750万円
ベントレー コンチネンタルGT スピード コンバーチブル
ボディサイズ:全長4820 全幅1945 全高1390mm
ホイールベース:2745mm
車両重量:2530kg
エンジン:W型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:5998cc
最高出力:467kW(635ps)/6000rpm
最大トルク:820Nm(83.1kgm)/2000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後275/35ZR21
最高速度:327km/h
0-100km/h:4.4秒
CO2排出量:347g/km(EU)
燃料消費率:14.9L/100km(EU)
車両本体価格:2920万円
※GENROQ 2017年 1月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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