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【ヒットの法則194】メルセデス・ベンツ RクラスはミニバンでもSUVでもない、新しいラグジュアリーカーだった

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【ヒットの法則194】メルセデス・ベンツ RクラスはミニバンでもSUVでもない、新しいラグジュアリーカーだった

2005年にデビューし「3列シートのSクラス」、「まったく新しいカテゴリーのラグジュアリーモデル」と注目されたルセデス・ベンツ Rクラスが、2006年4月に日本上陸を果たしている。その出来映えはどうだったのか。上陸間もなく福岡で行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年6月号より)

「クーペワゴン」とでも呼びたいスタイリング
MLは2世代目だし、その上をいく3列7シーターのGLも、ブランニューモデルとはいえSUVというセグメントで括れるから、比較的その立ち位置はわかりやすい。ところが、同じ3列シートでも6人乗りのパッケージを有するRクラスは、ひと足先に登場したBクラスとともに「スポーツツアラー」なるニューセグメントを自称。わかるような、わからないような……。

【くるま問答】トヨタ2000GTのサイドにある四角い部分には、いったい何が入っているのか?

メルセデスベンツはサルーンカーにおいて王道を歩んでおり、その軸がぶれることはない。その一方で、日本でミニバンが流行っているように、アメリカでもSUVを始めとするスペース系のクルマの人気が高い。サイズから見てもRクラスのメインマーケットが北米であることは明確だ。このスポーツツアラーとは、そんな「広い室内空間を持つクルマ」というニーズに対するメルセデス流の答えであることは容易にわかる。

では、それはどのようなポジションにあり、どのようなキャラクターなのだろうか。

当初は「要するに、ミニバンでしょ」と思っていたが、福岡で丸一日、Rクラスを眺めて、乗って、走らせてみたら、なぜ「ミニバン」という表現をしなかったかがよく理解できた。

Rクラスは、V6の3.5Lエンジン搭載の「R350」とV8の5Lエンジン搭載「R500」の2モデルがあり、いずれもフルタイム4WD「4MATIC」と7速ATの「7G-TRONIC」が組み合わされる。サスペンションは、フロントにダブルウイッシュボーン式、リアにはセルフレベリング機構付きの4リンク式を採用。さらにR500には、前後のダンパーを調整するADS(アダプティブダンピングシステム)と、エアスプリングを統合した「エアマティックサスペンション」を標準装備する。

実際にRクラスを目の当たりにしたら、その段階で即座に「ミニバンでしょ」という思いは撤回されることとなった。いわゆるハコ型のクルマとは、明らかに雰囲気が異なる。エンジンフードのセンターにまっすぐ伸びるライン、あるいは両サイドのエッジが効いたラインの特徴的なフロントビューは、力強くダイナミックな印象。

でもそれ以上にインパクトがあったのは、サイドビューだ。ルーフラインはリアに向けてなだらかに落ちているが、それに対してクロームで縁取りされたサイドウインドウの上縁はアーチ型を描く。まるでクーペのようで、ちょうどCLSを思い起こさせる。

つまり、最近のメルセデスのデザインランゲージを組み合わせると「スポーティであり、かつラグジュアリー」というコンセプトが、そのルックスから容易に推測できるのだ。

そこかしこに見て取れるドライバー重視の思想
インテリアの質感も高くラグジュアリーな雰囲気に包まれている。走り出す前に、まず室内をチェックしてみる。

2列目は独立したキャプテンシート。前席よりアイポイントが高くスペース的にも広々しており、かなりゆったり座れる。このクルマの特等席ではないだろうか。一方、3列目は、ニースペースはよほど大柄な人でなければ正面を向いても膝が当たらずに座れる。全幅が1920mmあるので、さすがに左右のゆとりも十分だが、リアのホイールハウスがかなり大きく張り出しているため、足下の広々感はない。ただし、2列目ほどゆったりではないが大人も座れるスペースがちゃんとあり、エマージェンシーシートと呼ぶには立派すぎる。

まずはR500のステアリングを握る。視覚的にもビッグサイズだし、アメリカがメイン市場ということもあり、勝手にアメリカンテイストのイメージを持って走り出した。だが、それはまったく違っていた。ステアリングフィールにはしっかりした手応えがあるし、走り味も思いの外に引き締まった印象である。

標準に対してダンパーの減衰をスポーツ/コンフォートに切り換えられるが、標準が一番しっくりした乗り味だ。コンフォートでも動きに遅れが生じないのは立派だが、あえて減衰を落とすほど不快感はない。逆に、高速でスポーツにしてみたが、硬さというより微振動のような入力があり、こちらはやや不快であった。

路面の継ぎ目を越える時の感覚で、かなり締まったサスペンションチューニングであることを認識する。とはいえ、エアサスだからカドの尖った突き上げはない。クルマの重さ、そしてAMGスポーツパッケージに装備される19インチタイヤを履いていることを考えれば、立派な乗り心地の良さだ。

必要にして十分なパワー感はあるが、さすがに2トンを優に超す車重ゆえ、サルーンのような過剰なパワー感はない。もっとも、これだけ大きなマスを持つクルマが乱暴に加速すると、危ないし扱いづらくて仕方ないが。

次に「やっぱりR500の方がドライバビリティは良いのだろうな」くらいのことを思いながらR350に乗り換えると、その予想は見事に裏切られた。非力さはなく、むしろバランスのよさが光る。R500に比べて車重は60kgしか軽くない。それぞれのトルクやパワーを比べれば、パワーウエイトレシオとしてはR500の方が勝っているはずだが、体感的には、クルマの動きとして全体的にボディサイズや重さを感じさせないような軽快さがあり、挙動が自然だ。

加速していくときも、R500では感じられなかったクルマとドライバーの一体感があるし、ハンドリングにしても、入力に対して素直に動いてくれる。そして、サスペンションの動きも、無駄な動きは抑えながらも路面をなぞっている感覚が伝わってくる。路面のアンジュレーションまでイメージできそうな感じだ。電子制御によって勝手に制御されているのではなく、自分がクルマを操っているフィーリングが気持ちいい。

もちろん、コーナーを攻めてどうの、という話ではない。高速道路をクルージングしているだけでもそれは十分に実感できる。狭い路地こそ走っていないが、運転しやすいせいか、加速時だけでなく一般道でも、車幅などを気にせず乗っていられた。

最近、国産ミニバンでもスポーティな性格のモデルもみられる。が、ビッグサイズの高級ミニバンとなると大きく重くなり、しっかりと物理の法則に則ってハンドリングや剛性感は悪くなる。その点、やはり恐るべし、メルセデス・ベンツ。こんなカッコして、こんな大きなRクラスの走りの性能の高さには改めて目を見張らされるモノがある。しかも、サルーンとは明らかに異なる雰囲気を醸し出していながら、乗ると間違いなくメルセデスワールドへと誘(いざな)われるのだ。

Rクラスは、ステーションワゴンの快適性や機能性、高速走行性能と、SUVのダイナックな走破性、そしてMPVの多用途性や室内空間を合わせ持つ、相当に欲張りなクルマである。

なぜ「スポーツツアラー」がミニバンとは一線を画したモノであると思ったか。それは、バンというのはやはりあくまで商用車的な発想によるものだからだ。メルセデスでいえばバネオでありビアーノだ。だからRクラスは、ミニバンではないと考えられる。

具体的にいえば、走りから静粛性に至るまで、そのクオリティがまったく異なる。むしろスポーツツアラーは、サルーンの延長線上に位置している。あくまでも主役は「人」なのだ。

シートを倒せば荷物もたくさん積めるが、ドライバーや乗員が、いかに安全に、快適に乗っていられるか、ということが大前提となっている。さらにいえば、国産のミニバンは後ろに座る人が偉いが、Rクラスはハンドルを握るドライバーが一番偉いのだ。

Rクラスのサイズ感やクオリティは、イメージとしては「Sクラスワゴン」と言いたいところ。しかし、R350に至ってはEクラスワゴンより価格が安いのだから、つじつまが合わない。ということは、かなり「お買い得」なクルマなのである。(文:佐藤久実/Motor Magazine 2006年6月号より)



メルセデス・ベンツ R350 4MATIC(2006年) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4930×1920×1660mm
●ホイールベース:2980mm
●車両重量:2170kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3497cc
●最高出力:272ps/6000pm
●最大トルク:350Nm/2400~5000pm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:724万5000円(2006年当時)

メルセデス・ベンツ R500 4MATIC(2006年) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4930×1920×1660mm
●ホイールベース:2980mm
●車両重量:2230kg
●エンジン:V8SOHC
●排気量:4965cc
●最高出力:306ps/5600pm
●最大トルク:460Nm/2700~4250pm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:966万円(2006年当時)

[ アルバム : メルセデス・ベンツ Rクラス はオリジナルサイトでご覧ください ]

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