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最後のFR+MT シボレー・コルベット C7 MRでもプッシュロッドは変わらぬC8 アメリカン・スポーツの代名詞(4)

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最後のFR+MT シボレー・コルベット C7 MRでもプッシュロッドは変わらぬC8 アメリカン・スポーツの代名詞(4)

計画見直しへ迫られたコルベット C7(2014~2019年)

6代目、C6のシボレー・コルベットは、それ以前と同様に想定より寿命が伸ばされた。次世代の開発が本格化する直前、2008年にリーマン・ショックと呼ばれた金融・経済危機が発生したためだ。

【画像】アメリカン・スポーツの代名詞 シボレー・コルベット コークボトルラインのC3からミドシップのC8まで 全123枚

世界的に景気は悪化し、ゼネラルモーターズ(GM)は経営破綻。ミドシップ化するという計画も、大きな見直しへ迫られた。

果たして、2013年に発表された7代目コルベット、C7は従来どおりフロントエンジン・リアドライブFRを採用。だが、シボレーはまったく新しいと主張した。実際、基本設計を受け継いだシャシーは、スチール製からアルミニウム製へ一新されていた。

フロントに搭載されたV8エンジンは、スモールブロックのLT1ユニット。多くの改良が施され、ダイレクト・インジェクションを採用し、最高出力は461psへ上昇していた。

スタイリングも刷新。C3世代から続くロングノーズのコークボトルラインを保ちつつ、空力特性は大幅に改善されていた。ルーフやボンネット、アンダーボディなどは、軽量・強固なカーボンファイバー製となった。

前例に続き、2015年には高性能モデルが登場。Z06では、6.2L V型8気筒スーパーチャージド・エンジンを搭載し、最高出力は659psまで高められた。大パワーを受け止めるべく車高は落とされ、ボディは一層ワイドになった。

2017年には、中級グレードとしてグランスポーツが登場。モデルチェンジが迫る2019年に、C7の頂点を飾るZR1が復活している。

一般道では想像以上に手懐けやすいZR1

Z06と同様に、ZR1もスーパーチャージャーで過給された。ブロワーは大容量化され、インタークーラーも大きくなり、ガソリンを噴霧する2基目のインジェクターを追加。最高出力は765psへ到達した。

0-97km/h加速を3.0秒でこなし、動力性能では当時のスーパーカーの仲間入りを果たした。しかもこの能力は、比較的お手頃な約12万ドルで手に入った。

今回ご登場いただいたZR1には、ZTKパフォーマンス・パッケージが組まれている。巨大なウイングがテールにそびえ、相当な暴れん坊に見えるものの、一般道では想像以上に手懐けやすい。

直線加速は驚異的だが、威圧感はさほど高くない。ステアリングホイールやペダルは扱いやすく、不思議な安心感を伴う。よりシャープでありながら、確実にモダンでもある。

ステアリングの反応はクイックでダイレクト。サスペンションは引き締められつつ、鋭い入力を従来以上に丸めてくれる。7速MTもキビキビと変速できる。段数を問わず、アクセルペダルを傾けた瞬間に怒涛の加速が始まる。

英国の一般道では、グリップの限界を超えることは難しいが、リアタイヤがうずくような感覚は伝わってくる。彫りの深いバケットシートはオプション。本格的な高性能モデルだという印象を、背中越しに増している。

このZR1は、1年間しか作られなかった。まだ古くはないものの、既にコレクターズ・コルベットとして評価は上昇中。最後のFRであり、MTを備えることが、その理由になっている。

ミドシップ化を叶えたコルベット C8(2020年~)

初代から続くレイアウトの最終進化系として、C7のZR1は大きな節目を刻んだ。そして遂に、8代目のC8でミドシップ化が果たされた。シボレーの技術者だったゾーラ・アーカス・ダントフ氏が4代目で挑んだ試みは、約40年の時を経て叶えられた。

C8の登場は2020年。長年のコルベット・ファンがミドシップ化をどう受け止めるのか、シボレーも懸念していたようだが、動的能力の向上は間違いなかった。

フロントエンジン・リアドライブのシャシーに更なるパワーを加えても、ホイールスピンが増えるに過ぎないといえた。高性能化には、一層のトラクションが必要だった。

C8の正式発表に先駆けて、いくつかの噂がインターネットで広まった。デュアルクラッチATの獲得や、オーバーヘッドカム化、V型6気筒への変更などがささやかれた。その中で本当だったのは、トランスミッションのみだった。

8速デュアルクラッチATは、極めて迅速な変速を実現。マニュアル・モードを備え、ドライバーの望み通りにギアを選ぶこともできる。

主任技術者を努めたタッジ・ジュクター氏は、シフトリンケージの空間を省くことで、シャシー剛性を高められたと主張する。パッケージングの面でもメリットは大きかったという。そのかわり、MTは選択できなくなった。

コルベットでもATが占める割合は年々上昇し、C7世代の末期には78%に達していたが、2割以上のユーザーはMTを選んでいた。1955年以来初めてATしか選べなくなったという事実が、ミドシップ化より物議を醸したといっていい。

これまでは味わえなかった敏捷な足取り

C8では、他にも大きな変更が数多く加えられている。リア・サスペンションを支えてきた横置きのリーフスプリングは退役。コイルスプリングへ置き換えられた。

C4以来の伝統といえた、フロア部分を四角く囲うペリメーター・フレームも役目を終えた。エンジンの潤滑系には、ドライサンプ・システムが採用されている。

今回のC8は、初代C1の生産開始から70周年を記念した、70thアニバーサリー。英国の一般道へ出てみると、ドライビングポジションが大きく変わったことへ気づく。窓で切り取られる景色もだいぶ変化した。

着座位置が前方へずれ、旋回時にはドライバーの足元ではなく、腰周りを軸に回転しているように感じる。キャビンの中央を大きなセンタートンネルが貫き、リアのバルクヘッドは高くそびえ、車内は包み込まれたような雰囲気だ。

速度が上昇すると、安心感が増していく。ミドシップのシャシーは好バランスで、足取りは確実に敏捷。これまでは、味わえなかった印象といえる。

確かに、従来のコルベットのドライビング体験とは異なるだろう。C7へ寄せたようなスタイリングやインテリアは、歴代からの連続性を醸成するために、意図的に与えられたのかもしれない。

プッシュロッド・スモールブロックが放つノイズ

それでも、V8エンジンが提供する味わいは間違いなくコルベット。エンジンの搭載位置はドライバーの後方だが、シボレーのプッシュロッド・スモールブロックらしいノイズが耳へ届く。欧州製のマルチカム・サウンドではない。

最高出力はC7から40ps上昇しているものの、スティングレイに載るLT2ユニットは基本的にキャリーオーバー。僅かな改良を受け、滑らかに高回転域まで吹け上がるが、アメリカンな個性は失っていない。

トルクフルで粘り強い。レッドラインが高いライバルユニット以上に、低回転域で余裕に仕事をこなせる。

フェラーリのような、繊細さはないかもしれない。だが、オールドスクールな図太い響きが、コルベットに乗っているという喜びを醸し出す。しかも、ミドシップへ生まれ変わったことで、従来以上に秀でた費用対効果も獲得している。

シボレー・コルベット C7 ZR1とC8のスペック

シボレー・コルベット C7 ZR1(2019年/北米仕様)

北米価格:12万2095ドル(新車時)/22万ポンド(約3982万円)以下(現在)
生産数:2953台(ZR1のみ)
全長:4567mm
全幅:1966mm
全高:1232mm
最高速度:341km/h
0-97km/h加速:2.9秒
燃費:6.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1614kg
パワートレイン:V型8気筒6162cc スーパーチャージャーOHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:765ps/6300rpm
最大トルク:98.6kg-m/4400rpm
トランスミッション:7速マニュアル(後輪駆動)

シボレー・コルベット C8 スティングレイ(2020年~/英国仕様)

北米価格:12万9140ドル(約1924万円)
生産数:10万1572台(2023年3月時点)
全長:4634mm
全幅:1934mm
全高:1234mm
最高速度:294km/h
0-97km/h加速:3.5秒
燃費:8.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1730kg
パワートレイン:V型8気筒6162cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:502ps/6450rpm
最大トルク:64.8kg-m/5150rpm
トランスミッション:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)

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みんなのコメント

2件
  • **********
    ミッドシップでこの動力性能。
    911買える予算があるなら非常に魅力的な選択肢だと思う。
    かなり人気で、なかなか割り付けが回ってこないらしいけど。
  • xtr********
    ミッドシップは大英断だったが、
    あとはデザインだな。
    アメリカ開発のnsxしかり、
    はっきりいってカッコ悪い
    それからアメリカでも需要があるだろからMT設定したほうがよいのでは?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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