8月26日、俳優の哀川翔さん率いるFLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYO TIRESは、9月9~11日に開催されるラリー北海道への出場に先立ち、千葉県にあるダートコース オートランド千葉にてシェイクダウンを行いました。
マシンはトヨタ ランドクルーザープラドとトヨタFJクルーザーの2台。これまで東南アジアを舞台とするアジアクロスカントリーラリー(AXCR)や、国内のクロスカントリーラリーで戦ってきたマシンをJAF公認ラリー用にイチから組み直し、ラリー北海道ではOP-XC2クラスへのエントリーとなります。プラドのドライバーはドリフト界のトップドライバー川畑真人選手です。これまでもこのプラドで国内外のクロスカントリーラリーに参戦してきた川畑選手は終始リラックスした表情で仕上がったマシンの感触を確かめます。
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●トヨタランドクルーザープラドはドリフト界の雄 川畑真人選手がドライバーをつとめます
一方、FJクルーザーのステアリングを握るのはSUVモデルでのラリーは初挑戦というモータージャーナリスト竹岡圭さん。こちらは楽しさ半分、緊張半分といったところでしょうか。シートポジションなど初めて乗るマシンの各部をチェックしながらの走行となりましたが、昔からラリーが大好きで全日本ラリーへプライベーターとして数多く参戦してきた竹岡さんですからやっぱりダートでの走行は楽しそう。
●FJクルーザーのステアリングを握るのはモータージャーナリストの竹岡圭さん
ちなみにプラドのコ・ドライバーは国内ラリーで哀川翔さんのコ・ドライバーを数多くつとめている中谷篤選手、FJクルーザーには全日本ラリーのほか、かつてFLEX SHOW AIKAWA RacingからAXCRへの参戦経験もある中田昌美選手を起用。今日まで共に戦ってきた哀川ファミリーでのぞみます。なお哀川翔さんはチームの総監督をつとめます。
シェイクダウンは時折ゲリラ豪雨に見舞われ路面はヘビーウエット状態のコンディション。川畑選手はかつてプラドで参戦した雨季のミャンマーのコースみたいだと懐かそうに笑っていました。ちなみにラリー北海道では2台ともにTOYO OPEN COUNTORY R/Tというタイヤで参戦します。このオフロードタイヤはオフロードでのトラクションを重視したM/T(マッドテレーン)タイヤとオン、オフのバランスに優れるA/T(オールテレーン)タイヤとの中間的な位置付けで、コントロール性の高さに定評のあるタイヤ。今回のようなフラットながらドロドロのオフロードでも、評判通り2人のマシンの挙動はコースサイドで見ていてもとても安定していました。レギュレーションでM/Tタイヤの使用が認められていないOP-XC2クラスにおいて非常に強い味方になるでしょう。
●M/T(マッドテレーン)タイヤの使用が認められていないラリー北海道においてTOYO OPEN COUNTORY R/Tの存在は非常に心強い
●オフロードの世界においてTOYO OPEN COUNTORYシリーズの魅力は「安心感」だと語る川畑選手。オフロード競技を始めた当初からよく口にするセリフです。1000馬力オーバーのマシンをサーキットで自在に操る川畑選手でもそこがオフロードタイヤに求める大きなポイントのようです
ラリー北海道が開催される十勝・帯広地区は、かつて日本初のWRCイベント Rally Japanが開催された場所で、当時使われたコースの一部は今回のSSにも設定されています。また、帯広駅前でのセレモニアルスタートも行われるそうです。
実は2008年に公開したラリーの世界を舞台とした映画「SS」の主演をきっかけに哀川翔さんはラリーの世界に飛び込み、現在でも現役のドライバーとして、そして総監督としてラリー活動を続けています。その映画のプロモーションのため2007年のWRCラリージャパンのセレモニアルスタートに登壇したのがラリー活動の第一歩でした。
帯広はFLEX SHOW AIKAWA Racingの原点とも言える土地と言えるでしょう。余談ですが映画「SS」で哀川翔さん演じる主人公 大佛のラリーへの想いを理解し応援する妻の役を演じたのは酒井法子さんです。世代によっては”のりピー”といったほうがピンとくる人もいるかもしれません。劇中でのりピーが「目指せWRC」ってメッセージを夫に贈るシーンなど、その後の哀川翔さんの活動を考えるとなかなか感慨深いものがあります。
余談ついでにもう一つ。酒井法子さんは90年代初めに現在のスーパー耐久シリーズの前身N1耐久に参戦していた”のりピーハウスレーシングチーム”で総監督を努めています。その当時のチームマネージャーこそが今回FLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYO TIRESのドライバーとして参戦する竹岡圭さんです。
●竹岡圭選手と哀川翔総監督、お二人ともモータースポーツの世界に入るきっかけにのりピーこと酒井法子さんの存在があったとは、なかなか興味深い話です
●竹岡選手の走り
と、昭和世代にしかわからない脱線話はここまでにして、FLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYO TIRESの大切なもうひと組のスタッフを紹介しましょう。長年このチームのマシン製作およびメンテナンスを行ってきた自動車整備の専門学校、中央自動車大学校(CTS)の学生の皆さんです。
FLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYO TIRESでは1シーズン酷使したマシンは1度この学校でオーバーホールして翌シーズンに臨みます。今回のプラドもFJクルーザーも何度もこの学校でメンテナンスしてきたマシンです。ラリーという過酷な競技で使われた車両のダメージは通常の乗用車の整備では考えられないもの。これを1回完全にバラバラにしてマシンのダメージを徹底的にチェックします。そして直すべきものは直す。交換しなければならないもには交換する。そしてまた1から組み上げる。この一連の作業こそが生きた授業になるとCTSの先生方は語ります。
今回は1級整備士を目指す15人の学生がマシンの製作を担当し、その中の4人は現地メカニックとして帯同します。長年続けてきたこのCTSのラリー活動を知って、この学校に入学した人も少なくないとのことです。それだけに海外で過酷なラリーのメカニックとして目一杯頑張ってみたかったなぁと漏らす学生もいましたが、その気持ちはとてもよくわかります。新型コロナ感染症は本当に様々なところに影響があったのだとあらためて痛感します。
ただし、今回はFLEX SHOW AIKAWA Racingの原点にしてカルロス・サインツ、ペター・ソルベルグ、セバスチャン・ローブら世界の名だたるラリードライバーがかつて戦った十勝・帯広地区が舞台です。そんな舞台でメカニックとして精一杯頑張って欲しいものです。
●日本自動車大学校(CTS)の先生方(後列)と学生メカニック(前列)。川畑選手、竹岡選手は彼らの組み上げたマシンでラリー北海道を戦います
ラリー北海道では、全日本ラリー選手権を戦う国内トップドライバーのトヨタGRヤリスやスバルWRX STI、シュコダファビアR5ももちろん走ります。それらのラリー車とは全く違う大きなボディのピックアップトラックやクロスカントリー車両が全力疾走する姿はまた違った魅力があるものです。川畑真人/中谷篤 組のランドクルーザープラドや竹岡圭/中田昌美組のFJクルーザーは有観客で開催されるラリー北海道のグラベルコースでどんな走りを魅せてくれるでしょうか。今から楽しみです。
〈文と写真=高橋 学〉
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