SUV全盛の今、出るクルマほとんどがSUVとなっている。だが、ホンダは未だヴェゼルとZR-Vだけで流行の3列シートモデルもなし。国内復帰するCR-Vの水素も台数じゃ期待薄……そもそも国内ラインアップが超厳しい状態だが、この作戦はマジで大丈夫か……!?
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb編集部
大丈夫かホンダ……さすがにヴェゼルとZR-Vだけじゃキツくね!? なんでホンダの国内SUVは増えないのよ
■トヨタSUVの数よ……輸入車も爆増!! SUV人気のワケは2つ
名門カローラにまでSUVモデルを投入。コンパクトからフルサイズまで選び放題のトヨタSUV
人気度や注目度の高いカテゴリーといえば、今はSUVだ。
小型/普通乗用車の内、約30%をSUVが占める。以前はコンパクトカーの次にミニバンが多かったが、SUVが追い抜いた。
SUVの売れ行きが増えた理由は2つある。1つ目は多くのユーザーが、SUVに魅力を感じることだ。
SUVは厚みのあるフロントマスクや大径タイヤの装着で外観がカッコ良く、天井が高いから後席や荷室も広くて使いやすい。
従来のクルマでは、実用性とデザイン性の二者択一が多かったが、SUVは両方を得られるために人気を高めた。
2つ目の理由は、新型車の活発な投入だ。SUVの人気は国内と海外の両方で高く、このようなカテゴリーは少ない。
そのためにSUVは新型車に恵まれて売れ行きも増えた。海外を重視するため、大半の車種が全幅を1800mm前後に設定した3ナンバー車だが、全長については4500mm以下のコンパクトな車種も豊富に選べる。
輸入車のSUVが増えたことも、イメージアップに貢献している。
以前のトヨタは、SUVをそろえるのに遅れていたが、今は充実している。2019年の後半以降、コンパクトサイズにはライズやヤリスクロス、それにカローラクロスが投入された。
直近では、上級車種となるクラウンのクロスオーバー/スポーツ/エステートも発表され、SUVが一気に増えた。
マツダもSUVが豊富だ。コンパクトなCX-3からミドルサイズのCX-5、後輪駆動のCX-60、3列シートのCX-8もあり、OEMを除いた10車種の内、6車種がSUVになる。
■二転三転続きのホンダ!! 先代CR-Vは値段の割に質感イマイチ
価格の割に質感にネガがあり、かなり厳しい販売台数であった。そのため久々復活も終売に。近々国内再々復帰するが果たして
その一方で、ホンダはSUVの品ぞろえが意外に少ない。今はヴェゼルとZR-Vのみだ。
SUVの主力車種として1995年からCR-Vを用意していたが、2013年にコンパクトな初代ヴェゼルが投入されると、ユーザーを奪われて売れ行きが下がり始めた。
そこでCR-Vは2016年に国内販売を終えたが、2018年に復活している。廃止と復活の理由を開発者に尋ねると、以下のように返答された。
「ヴェゼルの売れ行きが増えたから、CR-Vは不要と考えて一度は販売を終えた。しかしその後、SUVの人気が予想以上に高まった。オデッセイやアコードのお客様がSUVに乗り替えることを考えると、コンパクトなヴェゼルでは物足りない。そこでCR-Vの国内販売を再開した」。
ただし販売を再開したCR-Vは、内装の質が低く、価格は高かった。
例えばインパネのステッチ(縫い目)は、コンパクトなヴェゼルは本物の糸を使うのに上級のCR-Vは、樹脂に模様を付けただけだ。
CR-Vの内装がヴェゼルよりもチープでは、売れ行きが伸び悩むのも当然だろう。その結果、CR-Vは2022年に再び廃止された。
このようにCR-Vを2016年に廃止して、2018年に復活させ、2022年に再び廃止したのでは、場当たり的と思われても仕方がない。それなのに今後は「2024年に燃料電池を搭載したCR-Vを改めて発売する」と発表された。
ホンダの販売店では「CR-Vやオデッセイのように車種を廃止すると、お客様が離れてしまう。数年後に復活させても、戻っていただけないことが多い」という。
車種を廃止すれば、ユーザーはメーカーから見放された気分になる。愛着も薄れ、他社に乗り替えるのも理解できる。
それなのにCR-Vは廃止と復活を繰り返す。一度廃止された車種の復活は、他社にも見られるが、あくまでも例外的な措置だ。それなのにホンダは、オデッセイやシビックを含めて、廃止と復活が多い。
■勝負に出たZR-Vも売れ行きいまひとつ……割高感も目立つ
乗ると超絶イイクルマながら、特徴的なデザインが要因なのか鳴かず飛ばず……
そしてホンダは、2022年にCR-Vを廃止した後、同年の末にZR-Vを投入した。パワーユニットやプラットフォームはシビックと共通で、優れた走行性能が特徴だ。
ただし売れ行きは伸び悩む。2023年度上半期(4~9月)の1か月平均は1707台だ。
2018年に発売されたフォレスターと同程度で、ヴェゼルの半分以下に留まる。発売直後のSUVの売れ行きとしては著しく少ない。
ZR-Vの全長は4570mm、全幅は1840mmだからCX-5と同程度のミドルサイズだが、視覚的には全長が4500mmを下まわるカローラクロスに近い大きさに見えてしまう。
フロントマスクも個性的だ。CR-Vと違って3列シート仕様も用意されない。しかも価格は、売れ筋になるハイブリッドのe:HEV・Z・2WDが399万9600円だ。価格にも割高感が生じた。
■今やミニバンと軽のイメージに!!
モデル末期なのに今なお好調なフリード。今やこれとN-BOXがホンダを支えているといっても過言ではないのだ
結局のところ、ホンダのSUVで販売が堅調な車種はヴェゼルだけだ。売れ筋カテゴリーのSUVで、人気車が乏しいのは辛い。
そのために2023年度上半期のホンダの国内販売ランキングは、トヨタ、スズキ、ダイハツに続く4位であった。
しかも国内で新車として販売されたホンダ車の約40%をN-BOXが占めており、軽自動車全体では50%を上まわる。
そこにホンダで2番目の売れ筋車種になるコンパクトミニバンのフリードを加えると、70%前後に達する。
N-BOXが好調に売られる一方で、小型/普通車のテコ入れを怠ったから、ホンダのブランドイメージが「小さくて背の高い実用的なクルマのメーカー」に変わった。そのためにN-BOXとフリードだけが突出して多く売られるのだ。
■今の商品をテコ入れすべきなのに!! ヴェゼルより小さいSUV国内投入へ
そうなるとホンダは商品力の割に販売が低迷するヴェゼル、ZR-V、フィット、ステップワゴンの販売促進を図るべきだが、直近ではWR-Vを導入する話も聞かれる。
WR-Vは新興国向けに開発されたコンパクトSUVで、全長は4060mm、全幅は1780mm、全高は1600mmだ。既存のSUVに当てはめると、トヨタのライズよりは少し大きく、ヤリスクロスに比べると全長が短い。ホンダのラインナップでは、ヴェゼルよりもさらに小さなSUVになる。
WR-Vの価格は、おそらくヤリスクロスと同程度だ。ノーマルエンジンを搭載するベーシックな2WDのグレードは200万円前後、買い得グレードでも230万円くらいだろう。フリードと同程度の価格だから堅調に販売されると思うが、ヴェゼルやZR-Vのユーザーをさらに奪ってしまう。
つまりWR-Vを投入すれば、ホンダのブランドイメージは、ますますダウンサイジングされる。そうなるとステップワゴンやシビックを含めて、ホンダのミドルサイズ以上の車種は、今以上に売りにくくなるだろう。
今のホンダにとって大切なことは、先に述べたミドルサイズ以上の販売促進だが、実際の商品構成は逆の方向へ進んでいる。
今の時代、昔のようなスポーツカーのホンダであり続けるのは困難だが、変わり方があまりにも激しい。
これではユーザーが付いて行けない。SUVの売れ行きが増えず、N-BOXやフリードばかり売れる背景にも、国内市場に向けた戦略の乏しさがある。
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