フォルクスワーゲン ゴルフ R 「8代目ゴルフシリーズの最上スポーツモデル」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

5

デザイン
4
走行性能
4
乗り心地
4
積載性
3
燃費
3
価格
4

8代目ゴルフシリーズの最上スポーツモデル

2023.6.21

年式
2022年10月〜モデル
総評
8代目ゴルフの最強(320PS/420N・m)モデル。7代目ゴルフRのスポーツ走行性能はそのままに、快適性能を同時に手に入れた。その要となるのが熟成の域に達しているMQBプラットフォーム。電子制御サスペンションに始まる各種デバイスとの融合も高レベルだ。ゴルフを含めた同クラスを購入検討するなら是非とも試乗して頂きたい。BEVの「ID.3」や「ID.4」にはない魅力がある。
満足している点
速く走らせても、ゆっくり流してもキマる走行性能。直列4気筒2.0Lターボエンジンは全域でトルクフルで、7速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)のギヤ比も日本の道路事情にフィットする。適度な荒々しさを保ちながら、走行シーンに応じて乗り味は千変万化。ここがもっとも満足できるポイントだ。ブレーキサイズも18インチと大径だから制動力は十分でコントロール性も高い。
不満な点
強いて挙げれば車両価格(6,398,000円)だ。ベーシックなボトムグレードとの価格差は320万円以上(車両登場時のプレスリリース上での比較)。ただ、ゴルフR専用のパワートレーンや各種の専用装備からすれば筆者としては十分な納得できる。外観に迫力を求める向きにはやや迫力不足か。いずれにしろ、ゴルフRにおける不満点は個人差が大きい。
デザイン

4

いかにもゴルフというアイコン的なデザインだ。正直なところ、この8代目ゴルフが登場した際には、フロントセクションの薄さを強調したデザインが馴染めなかった。サイドからボディ後半にかけての豊かなボリューム感に対してアンバランスに感じていたからだ。ゴルフRでは専用デザインのバンパー形状として、ややアクの強い顔付きに。それが功を奏し、スポーツモデルらしい身構えになった。
走行性能

4

320PS/420N・mのスペックに文句なし。ただ、加速力の演出方法はあくまでもゴルフだ。最高出力は5350〜6500回転、最大トルクは2100〜5350回転と、いずれも発生回転域が広い。そのためテストコースで全開加速を試みると、速いけれどジェントル、という印象を受ける。公道では、ギヤ段を下げなくとも求める加速力が得られるという点で、紳士的なスポーツモデルといえる。
乗り心地

4

オプション装備となるDCCによるモード切り替えは明確だ。スポーツモードではダンパーの減衰力がかなり高められ、車体の追従性能も一気に向上。反面、コンフォートモードではタイヤの上下動を感じさせない。単に減衰特性や各部の調整幅を変えただけではスポーツモードでの乗り味は悪化するだけだが、8代目ゴルフは新世代プラットフォームにより硬さの中にもしなやかさが光る。
積載性

3

積載性能そのものに不満はない。床面はフラットだしゲートまでの高さも低めに抑えられている。未だに同クラスのベンチマークとなる車両だから作り込みも丁寧だ。なぜ3点なのかといえば、ステーションワゴンボディのヴァリアントにもこのゴルフRの設定があるからだ。積載性能を重視するなら当然ながらワゴンが有利。ここは活用方法で評価が分かれるところだ。
燃費

3

WLTCの総合モード値で12.3km/L、市街地モードで8.7km/L、郊外モードで12.5km/L、高速道路モードで14.7km/L。特筆すべきは高速道路で、筆者による70km程度の試乗(ACCを使用)では、16km/L台を終始示していた。ただし、山道でエンジン性能を含めて確認走行していると5km/L台まで落ち込む。
価格

4

ゴルフRが639万8000円で、そのステーションワゴンボディであるゴルフRヴァリアントが652万5000円(登場時)と高額だ。ただ装備関連で考えるとフォルクスワーゲン各モデル、もっといえば上位モデル向けの快適装備まですべて備わる。DCCと19インチタイヤを選択すれば乗り味はさらに一段高まるが、DCCレスで18インチでも十分魅力的。価格相応という意味で4点とした。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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