【トヨタ認定中古車をガチ取材】認定中古車って実際どうなの?
トヨタはプロの自動車ライターも認める安心感だった話

※トヨタ認定車両検査員による検査風景

「認定」の定義やサービス内容はまちまちだが、トヨタの認定中古車はどうなの?

「認定中古車」という言葉を当たり前のように聞くようになったのは、いつ頃からだったろうか? 思い返してみると、筆者が自動車メディアの業界に飛び込んだのが2003年。その頃すでに認定中古車やアプルーブドカーといった表現は、よく耳にしていたと思う。当時携わっていたのは主に輸入車の雑誌だったので、右も左も分からないペーペーらしく「認定ってナニ? 誰がナニをどう認定するってーの!?」と混乱しつつ輸入車ディーラーに取材に行ったことも思い出す。

その時に学んだ認定中古車の定義を簡単にまとめると、「メーカーが定めた基準のもとに選別された車両を事前に点検・評価し、正規ディーラーが保証付きで販売。その保証修理もディーラーで請け負う中古車」といった感じになるだろう。

それから20年ほどが経った今では、国産車であれ輸入車であれ、認定中古車はほぼすべてのブランドで制度化されている。ヤフオクでポチッとしちゃうなど、中古車の買い方もずいぶんと多様化したが、ありがたいお墨付きと保証が得られる認定中古車は、今も間違いなく有力な選択肢のひとつだ。

ただ、あらためて各社の認定中古車について確認してみたところ、先に挙げた「認定」の定義やサービスの内容は各社まちまち。実際に認定中古車を買おうと思ったら、各ブランドの詳細をリサーチしておく必要はあるだろう。

では、トヨタはどうかというと、現在のトヨタ認定中古車の前身にあたる「T-Value」が発足したのが2010年。それからちょうど10年後の2020年4月1日に、認定中古車ブランドが「トヨタ認定中古車」に刷新された。

トヨタ認定中古車には、年式や走行距離で対象車両を選別する縛りはないのだが、全ての車に共通する3つのファクトがある。「まるごとクリーニング」、「車両検査証明書」、「ロングラン保証」だ。今回はそれらの詳細を、トヨタグループ唯一の中古車事業の戦略会社である株式会社トヨタユーゼックに取材させていただく機会を得ることができた。

今回はクラウンを使って車両検査項目の一つであるトランクルームのシーリング確認なども実施
細部に至るまで車の構造がわかる骨格を使った、認定車両検査員の研修も行われるのだそう

「まるごとクリーニング」は外装から内装、エンジンルームまで徹底的に手作業で洗浄

※洗浄方法・手順は販売店によって異なります

まずは「まるごとクリーニング」である。トヨタ認定中古車には、16項目56工程におよぶ内外装とエンジンルームの洗浄が実施される。今回、まるごとクリーニング講師のトヨタユーゼック・奥村泰司さんに、作業工程を追った動画を見ながら解説していただいたのだが、「まるごと」という表現が決して誇張ではないと実感した。

外装のシャンプー洗車はもとより、専用のクリーナーを使ってボディ表面についた鉄粉を除去(紫色のドロドロになるアレ)。グリルやゴムモール周辺など、細かいスキ間の汚れもスチーム洗浄で丹念に落としていく。鉄粉を落とし、シャンプー掛けもしてキレイになったボディは、バフ仕上げによる磨きとボディコートを施工。もちろんタイヤ・ホイールの洗浄とタイヤの艶出しだって忘れていない。

そして外装以上に、われわれ素人にはなかなか真似できないのが内装のクリーニングだ。まずインパネまわりに蓄積したチリや埃を落とすところからはじまるのだが、その次はなんとフロントシートを取り外して、シート単独でスチーム洗浄! 約100℃のスチームで表面を洗うと、今度は40℃の温水を出すと同時に吸引するリンス洗浄機の出番だ。シートの奥深くに溜まった積年の汚れを、ごっそりと入念に吸い出していく。

室内にも徹底的にスチーム洗浄が加えられ、ハンドルなどよく手に触れる部分もジョワーっと浄化。高温による除菌効果も発揮される。ちなみに以前から気になっていた点を伺ったところ、シートを外した時に落とし物が見つかる確率は「3〜4台に1度くらいと聞きます(奥村さん調べ)」とのこと。皆さんもクルマを手放す時には注意しましょうね。

さて、さらにそこから内装部品の艶出しや、車内を閉め切ってクリーニング剤を噴霧する消臭・除菌も実行。その際はエアコンを内気循環&最大風量にして、空調のダクト内にも消臭剤が行き渡るようにしているそうだ。

そして最後は、われわれ素人が真似できないというか、わざわざ真似しようともあまり思わないエンジンルームのクリーニングである。なにせバッテリーのターミナルなど、水に触れてはよろしくない電子部品の宝庫。素人は下手に手を出さない方が無難なのだ。だが、トヨタ認定中古車では、水洗いの必要がない専用溶剤を使ったエンジンルーム全体の洗浄を推奨。手作業でしっかり汚れを落とした後には、艶出しも行う徹底ぶりだ。

「まるごとクリーニング」について解説いただいた販売店支援部 開発室 マネージャーの奥村泰司さんは笑顔が素敵なナイスガイ。これまで施工にあたる多数の販売店を指導してきた
外装の洗車時、専用のクリーナーを使って鉄粉を除去すると出てくる紫色のドロドロがこれ
室内クリーニング時はフロントシートを外し、スチーム洗浄機で前利用者の活動エリアを隅々まで清掃する
※一部シートを外さず洗浄するクルマもあります

「車両検査証明書」は、資格を持ったトヨタ認定車両検査員がくまなく検査したことの証

と、そのように中古車を隅々までキレイにしてくれる「まるごとクリーニング」が、トヨタ認定中古車に与えられる大きな付加価値であることは、よくわかった。

次に注目するのは「車両検査証明書」である。トヨタ認定中古車となるクルマは、資格を持ったトヨタ認定車両検査員によって事前に検査され、総合的な評価をS〜Rの11段階、外装および内装をそれぞれA〜Eの5段階で評価する。車両検査証明書は、文字通りその検査を受けたことの証であり、評価スコアを明らかにするものだ。

車両検査の具体的なお話は、ディーラーの査定士の資格を持ち、かつ査定経験のある人が、トヨタ認定車両検査員の資格を取得するにあたり、その研修や試験を行う立場にあるトヨタユーゼックの堀内雄太さんに伺った。

まず前提として、トヨタ認定中古車になるには修復歴がないことが絶対条件。その上で法定12ヶ月点検の項目に、トヨタ認定中古車独自の追加項目を加えた約60項目の点検整備が行われる。この時オイルやワイパーなどの消耗品が前もって交換されるのも、地味にうれしい。

ただ、車両検査はそれとはまた別の話で、内外装のキズやヘコミ、サビやフロントガラスの点キズなどを客観的に評価していく。今回は研修に使われる実車を見ながら、堀内さんに実際の検査手順の一部を解説していただいた。

腰を低く落としてドアまわりのキズを確認するのも大変そうだったが、筆者が一番シビれたのは修復歴の判定。なにせ「修復歴なし」がトヨタ認定中古車の前提条件なのだから、見落とすことは許されない。資格取得の試験でも、修復歴を見逃してしまうと一発アウトなのだそうだ。

で、実際に右側センターピラーの交換歴があるシエンタを題材にレクチャーを受けたのだが、筆者は最初まったく違和感に気づくことができなかった。だが、堀内さんに「ここを見てください」と促され、ドアのシーリングやゴムモール下に隠された溶接痕を見て納得。いずれも後付けされたような感じがあり、溶接の間隔もおかしなことになっていた。

それからエンジンルームを見る時はコアサポートを脱着した形跡や変形、セダンのトランクルームを見る時はカーペットを剥がしてシーリングなどを確認。これってつまるところ、新車の時にどんな状態だったかを正解として頭にインプットしていないと、修復歴の有無を判別するのってムリじゃね?と思った次第である。

「歴代のトヨタ車って何車種あるんだっけ?」と途方に暮れた筆者なんぞは試験に受かる自信が1ミリも持てなかったのだが、聞けばなんと1回受かればOKではなく、年に1回、査定業界の第三者機関による監査があるのに加えて、合格から2年後に1回目の更新試験があり、それに合格すると次の更新試験は3年後と、幾度もの更新テストもパスしなければならないのだとか……。トヨタ認定車両検査員マジ、リスペクトっす。

エンジンルームを見る際は、コアサポートを脱着した形跡や変形など、素人では発想すら及ばない細部に至るまで確認を行う。さすが堀内さん、研修や試験を実施する立場である検査業務室のチーフだけに、チェック時の目は鋭い
セダンのトランクルームをチェックする際は、カーペットを剥がしてシーリングなどを確認するのだそう。これで修復歴の有無を判断するのは素人では100%無理だろう
この「車両検査証明書」を発行するために、堀内さんをはじめとするトヨタ認定車両検査員の方々は、1回試験に受かるだけでなくその後の更新テストもパスしなければならない

「ロングラン保証」で鬼に金棒! 認定中古車購入経験のある筆者も認めたトヨタブランドの強さ

さあ、最後は「ロングラン保証」だ。トヨタ認定中古車はメーカー、年式を問わず、走行距離無制限で1年間の無償保証が付帯されている。それをさらに+1年、+2年する有償の「ロングラン保証α」も用意されている。

先ほど法定12ヶ月点検に加えて、トヨタ認定中古車ならではの点検項目もあることに触れたが、具体的にはブレーキオイルの漏れ・油量、タイヤの亀裂・損傷、バッテリーの液量および状態といった、安全に関わる重要項目が挙げられる。そのほか、ナビ・オーディオの作動状況、ハイブリッドカー特有のバッテリーやコンピュータなどの点検が含まれているのも特筆すべきポイントだ。

その上で、ロングラン保証の対象となる部品は約60項目、5000部品にのぼり、エンジンやブレーキなどはもちろん、エアコン、ナビゲーション、テレビなども保証対象。また、ハイブリッドカー(トヨタ/レクサス車限定)に関しては「中古車ハイブリッド保証」※が付帯され、ハイブリッド機構が無償で保証される。
※初年度登録から10年目まで、または3年間の長い方。但し累計走行距離が20万km以内

そして、その保証修理はディーラーをはじめとする全国約5000ヶ所のトヨタのネットワークで受けられるのも、大きな安心材料だ。そうしたあれこれを詳しく解説してくださったトヨタユーゼックの高畑睦さんと小松祐子さんの一言一言からは、「トヨタとして認定中古車でできることは何か」を深く追求する姿勢がうかがえた。

「お客様にとって中古車を購入する上で、一番心配になられるであろう使用感を払拭したい。また一般には判断しがたい部分を、クルマを知り尽くしたプロが統一基準のもとで見える化し、中古車の状態をつまびらかにしたい。そうした気持ちが、まるごとクリーニングと車両検査証明書には込められています」(高畑さん)

「ですが、それでも中古車は新車のように品質が均一でなく、1台1台状態が異なりますので、購入後の不安を保証でカバーする。そんな3つのファクトを通して、お客様に安心してお乗りいただけるお車をお届けする。それがトヨタ認定中古車の基本的な考え方です」(小松さん)

筆者自身は認定中古車に対して基本的には肯定派であり、トヨタではない他メーカーながら、実際に認定中古車を購入した経験もある。その際に重視したのもやはり保証だったのだが、確か当時5万4000円ほど余計に払って延長保証を追加した。ちなみにダイレクトイグニッションコイルと左右ドアミラーのモーターを無償交換してもらったので、元は取っているはずだ。

そんな筆者をして、規模感の大きさと手厚さにおいて、やはりトヨタは認定中古車でも頭ひとつ抜けているなと強烈に印象付けられた。一般的な中古車と販売価格だけを比較すれば決して安くはないかもしれないが、もし家族や知人に「中古車を買おうと思うんだけど」と相談されたら、「まずはトヨタの認定中古車から探してみれば?」と自信を持ってお勧めするだろう。それ以上に不安なく中古車ライフをスタートさせられる選択肢は、他にないのだから。

Report:小林秀雄 / Photo:篠原晃一 / Editor:森庸行(carview!)

販売促進部 企画統括室長の高畑さん(左)と、販売促進部 企画統括室 アシスタントマネージャーの小松さん(右)
取材当日、もっとも強く感じたメッセージは「ユーザーに安心・安全をお届けする」こと。これはトヨタ認定中古車の基本的な考え方でもある
トヨタ認定中古車ならではの「3つの安心」について、おもてなし感あふれるユーザーファーストの思いを話してくれた

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