スバル独特の無骨さに決別!? 座った瞬間にわかる質感の高さ
クルマを走らせる前、乗り込んだ瞬間から、その大幅な進化を直感できたのが新型インプレッサ。スバルが次世代を見据えてすべてを見直して作りあげた力作。クルマの素性である基本性能を左右するプラットフォームに始まり、動力系にも大きく手が加わった。
【試乗】スバルBRZの新グレード「GT」プロトタイプに乗った!
見た目も大きく変わっているが、このあたりは趣味趣向があるので、個人的にはキリッとした精悍な印象が強まり好感触だが判断はお任せしよう。
しかし、200万円前後の車両本体価格に加えて、運転支援及び予防安全の最先端を行くと評されるアイサイトが標準で付いていることを踏まえたら、この仕上がりに不満を抱く方など少ないはず。
誰もがクルマに乗り込んだ瞬間から、新型インプレッサへのスバルの気合いを感じるはず。とくにスバルに慣れ親しんできた方はそれを顕著に感じるだろう。なぜなら、室内には落ち着き感や上質さ、高級感さえ漂っているから。
個人的な見解ではあるが、スバルといえば運転のしやすさや視認性そして使い勝手は重視するが、どのように魅せるか? 感じさせるか? といった演出が不得意な走り系硬派イメージの仕上げモデルが多かった。
それがお洒落を覚えたアスリート的な印象の仕上がり。だからといって決して軟派になったわけではない。クローム系のアクセン的な加飾の使い方のうまさや、センターモニターのわかりやすさと色使いを含めたデザインの良さ。
さらにドリンクホルダーが横並びになっているなど、拡張されたゆったり室内幅に準じてセンターコンソールも幅広になり、視覚的な重厚感が得られたにことが効果的なのだと見て取れる。
街乗りレベルでもわかる新プラットフォームの効果
いざ走り出すと、乗り味の質から新プラットフォームの効果は即座にわかる。端的にいえば、走行微振動が大きく軽減されているのだ。それはボディの各部の結合剛性を含めた作りがしっかりしたことで、無駄な共振振動が激減して、路面からの入力が足まわりで的確に吸収・収束される感覚。
スポーティに走ったときも的確で鮮明なハンドルからの手応えやコントロール性、そして安心感からその効果は感じられるが、路面のつなぎ目や補修跡などを街なか走行レベルで走った際の、ボディがプルンプルンする共振の少なさから、どの速度域でも恩恵に授かれるのが良い。
しかも、そこに搭載されるエンジンはスバルが鍛え上げてきた回転振動の少ない水平対向エンジン。路面からの入力による走行振動をボディと足まわりが吸収抑制して、エンジン回転振動は発生源から抑え込めている。このコラボレーションにより得られるレベルは、コンパクト系カテゴリーの域を超えている。
厳しい目で見たら、もう少しだけでもフロントタイヤを前に出して前後重量配分を改善できたら……今生じているリヤに対してフロントの上下反復振動が相対的に大きく目線がブレるシーソー現象の揺れを抑えられるはずなのだが。
200万円前後のクルマにそれを求めるのは強欲と言われそうだが、そんな上級・高級車の乗り味の世界まで自然と求めたくなる感覚にさせるのが見事。そのコストパフォーマンスは、現行モデルのなかで間違いなくトップ争いに加わっている。
ここまでは今回用意した排気量1.6リッターモデルでも2リッターモデルでも得られていた感覚。では、購入の際に悩みそうなそれぞれの違いについて掘り下げていこう。
スポーティに走りたいなら2リッターがオススメ
まずワインディングを豪快に気持ち良くスポーティに走りたいのなら2リッター。その背景は、高回転領域でのエンジン回転の伸び感があること。排気音が1.6リッターよりも低音強調志向の野太い系で、感覚的な力強さも得られること。
そして18インチホイール設定を含めた足まわりの違いが挙げられる。とくに最後の要素は確信的な違いであり、乗り比べたら即座にわかる。ドシッとボディに一本太い幹が通っているようなクルマ全体のしっかり感からくる微操舵への応答の良さがハンドル手応えから感じられるのだ。
しかも前後のロール剛性バランスにも影響するのか、アクセルを深く踏みながらの旋回などでは、フロントだけでなくリヤタイヤの駆動でクルマが前に押し出されるような感覚など、今クルマがどのような状態にあるのかといった状況を直感的に得やすい。
強欲な意見を申せば、これだけのシャーシ性能を持ちながら、ダイレクト感や操作性の良さを求めてCVTとの決別は考えながったのかと言いたいところ。しかし200万円ちょい越えモデルとしては、クルマとの一体感と安心感と安定感、そして気持ち良さを併せ持つレベルは極上だ。
低速域での乗り心地に優れる16インチタイヤの1.6リッター
対して1.6リッターは、スポーティにも走れるのだが、その主戦場は日常使いと判断。決してスポーティに走れないというわけではない。
4WDによる安定感や安心感はあるし、踏むとCVTの賢さもあり、高回転を潔く使いながら十分な加速力を示す。さらにその際、軽い音で吹き上がるので2リッターの野太さ基調よりもレーシーな雰囲気を感じ取る方もいるはず。
しかし何にせよタイヤ及びホイールサイズ……いや正確にはタイヤ銘柄が日常使いタイヤなのが選択肢を狭めている。端的に言えば、走り出した瞬間から、転がり抵抗を優先したタイヤだと直感。クルマが軽々しく前に進むし、タイヤの剛性の少なさからハンドルからのドシッとした手応えは希薄になる。
当然、豪快に、スポーティに走ろうとすると、横方向の剛性感不足も露わになる。シャーシ性能がそこまで高くなければ、そんなバランス気にならないとも言える。しかし、このままペースを上げたらタイヤのふにゃ感が大きくなり不安感が増すはず……そんな予想も容易にできてしまう。
さらに2リッターのようにアクセルの踏み込みを増やすと、相応に4WDのドシッと安定する感覚が増して安心感を得られる特性が薄いのも気になる。
逆に良いのは、極低速走行でも優れた乗り心地だ。2リッターでコツコツと突き上げが入る、速度20-50km/h域での乗り心地が、タイヤのエアボリュームが豊富なぶんだけ良い。そんな背景から街乗りの方には1.6がオススメだと判断。
最後にセダンとワゴンで悩んでいる方。積載力は当然ワゴンボディのインプレッサスポーツだが、走行性能や乗り味観点からはセダンのインプレッサG4だ。
重心も関係するが、何よりリヤ周りの剛性感が異なり、セダンのほうがリヤタイヤが路面をドシッと捕まえ続けて安定するので、ハンドリングもコントロール性も若干高いレベルになる。どちらを選ぶにせよ、新型インプレッサなら価格以上の価値をもたらしてくれることは間違いない。
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