ポルシェの特注ミニカーをめぐる過激な争奪戦が勃発！メディア関係者をも熱くさせるポルシェ・ミニカーの魅力とは？

近年、多くの自動車メーカーがオフィシャルミニカーを製作しています。それらは実車の発売と同時に用意されるのが基本で、特にドイツのメーカーは昔からラインアップが充実。コレクターが常に目を光らせているのはもちろんのこと、オーナーでなくともディーラーで普通に買うことができます。
＜レポート：北沢剛司／Koji Kitazawa＞

写真のポルシェ718ボクスターのミニカーは、去る2016年6月1日に開催された「New 718 Boxster プレスカンファレンス」の記念品としてメディア関係者に配布されたもの。スケールはミニカーの定番1/43で、サイズは約10 cmほど。製造メーカーは、ドイツのアーヘンを本拠地とする世界的なリーディングメーカーの「ミニチャンプス」です。

このミニカーはポルシェがミニチャンプスに製作を依頼した特注モデルで、日本のポルシェオンラインショップで買うこともできます。自動車メーカーによるこのような特注モデルは、ミニカーメーカーが発売する通常品とは仕様やボディカラーが異なり、パッケージが専用品になるなどの違いがあります。

ポルシェ718ボクスターは、水平対向4気筒ターボエンジン搭載がトピックであるのは周知の通り。718ボクスターSをモデル化したこのミニカーではエンジンの再現はないものの、実車のような佇まいはさすがといえます。

ところで、プレスカンファレンスで配布されたミニカーのなかでもっとも強烈な体験をしたのが、2007年のIAA（フランクフルト・モーターショー）で貰ったポルシェの非売品ミニカーです。

この年のIAAでは、ポルシェは会場内の自社ブースではなく、別棟の会議用ホールでプレスカンファレンスを行ないました。当時ポルシェのCEOだったDr.ヴェンデリン・ヴィーデキング氏のスピーチが終了すると、ホール出口には報道資料を入れた紙袋がたくさん用意されていました。ただ、その紙袋の中には、なんと非売品のポルシェ特注ミニカーが入っていたのです。正確にはこの年のIAAでワールドプレミアされたポルシェ911 GT2（997）のミニチャンプス製1/43ミニカーでした。

紙袋の中身を確認したメディア関係者は、明らかに目の色が変わっていました。そして次の瞬間、多くの人たちがミニカーの複数ゲットを狙って猛烈におかわりをしに行ったのです！現場の雰囲気は一気にオーバーヒート。なかには3個以上おかわりをした猛者もいました。

私は最初から日本語版を要求したのでスムーズに入手できましたが、英語版とドイツ語版は瞬間的になくなり、フランス語とイタリア語もどんどん消えていきます。最後には「Spanish!」「Spanish!」と必死で叫ぶ声がいくつも聞こえましたが、彼らはどう見てもスペイン語圏の人には見えませんでした。かくして配布からわずか数分ですべての紙袋が消えるという激しい争奪戦が展開されたのです。海外モーターショーの取材現場は、強烈な物欲を持った者同士が覇を競う、過酷な戦場でもあるのです。

後で調べたところ、この911 GT2のポルシェ特注ミニカーには3種類のバリエーションが存在していました。ボディカラーはブラックのみ。パッケージもすべて同じですが、台座の印刷がそれぞれ異なります。メディア向けに配布した前述の非売品ミニカーは150台で、台座には[911 GT2 Weltpremiere IAA 2007]と記されています。また、IAAのポルシェブースで販売した300台はシリアルナンバー入りの[911 GT2 Weltpremiere IAA 2007 ***/300]、そして後に通常ルートで販売された製品には[911 GT2]と記されていました。

ミニカーの世界で150台というと、かなりのレア物になります。今でこそ安く入手できるようになりましたが、当時は相当な高値で取り引きされていたのでしょう。ポルシェのミニカーは、特にレース車両のバリエーションが豊富なこともあり、世界的に市場が確立されています。なかでも非売品の特注ミニカーは、コレクターにとって喉から手が出るほど欲しいアイテムなのです。そこには、もはやメディア関係者か否かという境目はありません。思わず仕事を忘れて熱くなるほどの魅力を持っているのが、ポルシェ特注ミニカーなのです。この911 GT2のミニカーを見るたびに、当時の激しい思い出が鮮烈に蘇ります。

それを思えば、今回の「New 718 Boxster プレスカンファレンス」でのミニカー配布は平和そのもの。みんな紳士的にひとつずつ貰っていました。これも狩猟民族と農耕民族の違いでしょうか…。

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