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車イスレーサー青木拓磨が目指す「障がい者でもサーキット走行を楽しめる世界」

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車イスレーサー青木拓磨が目指す「障がい者でもサーキット走行を楽しめる世界」

障がい者でもサーキットを体験できるスクールに潜入!

バイクレーサーとして活躍していた1998年に、テスト中のアクシデントで脊椎損傷。車イス4輪レーサーとして新たな道を歩んでいる青木拓磨選手。今シーズンもGTアジア・シリーズ、そして第21回大会アジアクロスカントリーラリー2016(8月13日-19日)に参戦する。

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そんな青木選手は、レース活動以外にも、さまざまな活動を展開している。そのひとつが、HDRS(ハンド・ドライブ・レーシング・スクール)である。

これは青木選手が立ち上げたスクールで、HDRSは健常者・障がい者が分け隔てなくサーキット走行を楽しもうという趣旨のもと開催されている。7月20日に千葉県・袖ケ浦フォレストレースウェイで3回目を開催したばかりだ。

HDRSでは、障がい者の方々が実際に普段使用している車両を持ち込んで走行できる。また、青木選手は、日産マーチカップ(K12型の3代目マーチによるワンメイクレース)で使われていたカップカーをベースにHDRS用に運転補助装置を装着した車両も用意し、実際にMT車での走行を体験する場も提供する。 今回は、N-ONEオーナーズカップに使用していた車両も持ち込まれた。4日前の富士スピードウェイで行なわれたカップレースに出場。予選24番手スタートし20位でフィニッシュした車両だ。

ともに運転補助装置には、青木選手をサポートしているグイドシンプレックスのものを装着している。グイドシンプレックスとは1959年にイタリアで生まれた運転補助装置メーカーだ。

国内の運転補助装置はAT車用ばかりだが、このグイドシンプレックスには、MT車のイージードライブ化装置であるオートマチック・クラッチシステムというMT車の運転もできるシステムをもつ。欧州ではMT車比率が高く、必然的にMT車用の運転補助装置が必要となり、その必然で生まれた商品である。

ほかにも両手で常にステアリングを持ちながら運転することで安全性と疲労軽減を実現したステアリング・コントロールシステム、アクセルとブレーキを1本のレバーで操作するワンハンドコントロールシステムなどを用意。レベルとニーズに合わせたシステムを組み上げることで障がいレベルに対応していくものだ。

実際に青木選手がレースで使用しているのも、この市販モデルのグイドシンプレックスである。

マーチ用では、プッシュ式のアクセルリング(押し込むことでアクセル操作)を装備する。下半身への障がいがある方は概して腹筋および背筋が弱いのだが、常に両手でステアリングを握りながらアクセル操作ができるため、車両の挙動Gなどで運転姿勢を乱されることなく、確実なドライビングができるというメリットがある。

ステアリングの横にブレーキレバー(押し込んでブレーキ操作)を装着。シフトレバーにはクラッチボタンが備えられており、1速およびバックギヤには自動のクラッチ制御が入っている。

AT車であるN-ONEには、ステアリングワンハンドコントロールシステム(ステアリング脇にあるレバーを押し下げることでアクセル、前方へ押し込むことでブレーキとなる。通常はブレーキ操作でアクセルはオフとなるのだが、レース用にアクセルがオフにならないようプログラム変更している)を採用している。

HDRSでは、今回はダカールラリードライバーの三橋 淳選手や、SUPER GTシリーズにArnage Racingの#50 ODYSSEY SLS(GT300クラス)で出場している久保凜太郎選手らもドライビングレッスンのコーチとして駆けつけた。

ライセンス取得が可能になるスクールに育てたい

青木選手はこのレーシングスクールについての思いを語る。そのスタートは、自らの4輪のライセンス取得以前の話までさかのぼる。青木選手が2輪の事故をきっかけに4輪への転向を決めたのが19年前。ライセンスの申請をするものの、あいまいな回答による却下が続いていた。

その原因は「歩けない」ということがイコール「車両から脱出できない」と考えられてしまうことだろうと青木選手は考える。しかしそれは「普通の人たちの考えであって、障がいを持っている我々の考えではない」と。この両者の溝をどのように埋めることができるのか、ということを常に考える機会になったという。

それでも、「車イスを使用しているというだけでレースに出られないというのはおかしい」と青木選手は問題点を確認し、申請を続け、ようやく10年前にライセンスが発給された。以後レース参戦を続け、現在は国際Bライセンスを取得している。車イスの国際Bライセンス所持者は世界でも3~4名しかいないという。

車イスだから排除する、では何も進まない。「自分だけライセンス取れちゃった。ラッキー」という考えではなく、もっと広めていって、障がいを持っているだけでレースをあきらめるということがないようにしたい。

そのためには、このHDRSが走行会で終わるのではなく、最終的にはライセンスが取れるというお墨付きが持てる団体にならないといけないし「どこまでの障がいがあり、どういう対応をすべきなのか」について、ドライバー、そしてオーガナイザー、サーキット運営側が共通して認識を共有できる情報開示も必要だという。

HDRSは、レーシングスクールと名前がつけられているが、その内容はもう少し高い次元を目指しており、もっといろんな人がレースに出る、もしくはサーキットを走る。そのための活動であるのだ。

ちなみにHDRSの今後の予定は、9月21日(水)と11月16日(水)に、ともに千葉県・袖ケ浦フォレストレースウェイで開催を予定している。

(文・写真:青山義明)

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