現在のモデルにも活かされている技術を先行搭載
日産が放ったスーパーカー、それがMID4だ。市販寸前まで行きつつも、幻と終わってしまっただけに、その詳細まで知っている人は今では少ないのではないだろうか。
ちなみにホンダNSXのライバルとよく言われるが、NSXが発表されたのはバブル全盛期の1989年なのに対して、MID4が姿を現したのは1985年のこと。しかも試作はバブル以前の1980年ごろから始まっていた。さらにWRCの新カテゴリーである「グループS」への参戦モデルとしての役割もあったとされる。
そのスタイル、そして内容は贅沢そのもので、日本初のスーパーカーとして期待されたのも当然といったところ。開発の指揮を執ったのは故・櫻井眞一郎さん。デザインは、後年ジャーナリストとしても活躍した、故・前澤義雄さんが担当した。
ボディは、高速走行を念頭に置いた流麗なもので、リトラクタブルヘッドライトと相まって、スーパーカーの王道的な仕上がりを見せていた。エンジンは当初のI型では、230馬力を発生するVG30型をミッドシップに搭載。これに4WSを組み合わせるなど、意欲的な内容であった。
さらに1987年の東京モーターショーに姿を現したII型ではターボを装着して、330馬力までパワーは高められた。またサスペンションはI型では前後ストラットだったのが、II型ではフロントがダブルウイッシュボーンで、リヤがマルチリンクとなった。
このようにMID4は完成度がかなり高く、市販化も秒読みとされた。実際、テストコースながら試乗会は行われ、雑誌CARトップのバックナンバーを見ると試乗記がしっかりと載っていたりする。しかし、結局は市販されることなく、姿を消していった。理由はコストに加え、市販後の対応力不足などもあったという。
現在も神奈川県座間市にある日産ヘリテージコレクションに実車は保管され、目にすることができる。残念ながら市販されることはなかったが、空力やエンジン技術、さらには4WDと4WSの組み合わせ、つまりアテーサや、90年代の日産車を支えたマルチリンクサスペンションなど、数々の技術がその後につながり昇華されたことを考えると、MID4は無駄ではなかったことは確かだ。
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