1位は世界ラリー選手権で優勝したスバル・ヴィヴィオ!
異論反論は承知の上。炎上覚悟で言わせていただくと、歴代最強の軽自動車は「ヴィヴィオRX-R」であると断言させていただく!
ビートやカプチーノ、AZ-1など、同時代の軽自動車のスポーツモデルはキラ星のごとく名車揃いながら、ヴィヴィオRX-Rは、スバリストの贔屓目を全力で差し引いても「最強」の称号を与えるに相応しいと思っている。その根拠はいくらでも挙がるが、まずわかりやすいところを挙げると、「軽自動車で唯一WRCクラス優勝を遂げている」という比類なき輝かしい実績だ。
しかも、WRCの歴史の中でも特に耐久性の高さが求められるサファリラリー(1993年)で完走し、クラス優勝を遂げている。WRCで優勝する軽自動車など、これから先も絶対に現れないので、ヴィヴィオは世界の自動車史で永遠に語り継がれる偉業を残したと言えるだろう。
ヴィヴィオRX-Rは、初代レガシィや初代インプレッサとほぼ同時に生まれたクルマで、当時の富士重工業が血眼になって走行性能の向上を図っていた時期に設計された。初代のWRXをそのまま小さくしたようなクルマとして位置付けられたと言え、AWDはインプレッサWRXの直4横置きバージョンとも言えるなりたちだ。
たとえば、スバル以外の軽自動車メーカーの常識ではありえない四輪ストラット(しかもリヤサスはデュアルリンク式)の採用も、開発初期段階ではコスト面で却下される方向にあったものの、当時の富士重工業・車両研究実験部で走りの味付けを開発していた高橋保夫さんは、どれだけ反対されても頑なに四輪ストラットの採用にこだわり、上司を説得した。
高橋さんは「利益よりも走りを優先するため、無理を承知で押し切りました。ニュルブルクリンクやWRCのステージで200km/h以上の速度でまともにアタックできるクルマに仕上げるためには、他社の軽自動車では一般的な(常識的な)リジッドのトーションビーム式より絶対に四輪ストラットが有効だったからです」と、今でも当時のことを熱く振り返る。
当時の富士重工業は、レオーネ時代に遅れをとった走行性能を劇的に高めて大挽回しようという気概に満ちていたこともあり、そのための企画やアイデアは多少コストを度外視してでも採用されるケースが多かったという。現代ではどこのメーカーでもありえない、奇跡のような時代でもあった。
スズキやダイハツなど、軽自動車が主力のメーカーではもっと違う部分を重視した設計がなされる。おそらく他社では許されないはずのコストのかけ方(コストをかける部分の選択)も、「走りが第一」の当時のスバルでは許されたという背景からWRCで勝つような軽自動車が生まれたのだ。
レックス時代に、エンジンが2気筒から一般的な3気筒ではなく4気筒を採用したことも、軽自動車でもコストより走りの質を優先したスバルだったからこその選択だ。
ヴィヴィオRX-Rの4気筒エンジンは、本来は低回転エンジン向きの過給器であるスーパーチャージャー付きながらレッドゾーンの始まる9000回転まで使える高回転型ユニット。乗用車も含めた1992年当時の過給エンジンとしてはもっとも高い9.0の圧縮比を採用し、前期型は自主規制の64馬力を10馬力以上超えていたと言われるのは有名な話で、当時のエンジニアたちもそれを認めている。
ヴィヴィオだけではなく、アルトワークスやミラターボなど、当時の軽のスポーツモデルは軒並み自主規制を超えていたとの話もあるが、ヴィヴィオRX-Rの絶対的なアドバンテージは9000回転付近まで回した時の振動の少なさにあった。660cc程度の小排気量での4気筒は低回転域のフリクションロスが3気筒よりも大きくなる反面、高回転域での振動の少なさは3気筒エンジンの比ではないことから、エンジンフィール面でも最強の痛快さを発揮していたのだ。
2位は匠の手による贅沢な生産方法を採用した初代コペン
ヴィヴィオRX-Rに次ぐ最強レベルの軽自動車はというと、これまた異論反論の噴出を覚悟の上で言わせていただくと、初代のダイハツ・コペンを推したい。
初代コペンは一般的なライン生産車とは異なり、熟練工によるハンドメイドに近い工程で生産されたという、やはり軽自動車としてはありえないコストと手間のかけられたクルマである。
ミゼット2の生産から立ち上がった当時のダイハツ熟練工による「ミゼット工房」から、さらに練度を増した選りすぐりの職人たちによる専用ライン「エキスパートセンター」で生産。特徴的な電動開閉式のメタルトップまわりの組み立て工程は、まるでフェラーリやロールスロイスのように一台ずつ丁寧に職人による手作業で行われた。
そんな手間暇のかけられたボディは軽自動車のオープンカーとは思えない堅牢な造りで極めて高剛性。多くの玄人からサーキット走行での走りの質はリアルスポーツカーに匹敵すると高く評価されたなど、完全に軽自動車の域を超えていた。
エンジンは4気筒のツインスクロールターボということも、軽自動車らしからぬ走りの質を高めた要因になっている。
そして、現代の軽自動車の「最強」として挙げたいのはアルトワークスだ。
簡単に言って、1988年に登場して大人気を博した初代モデルをそのまま現代の技術で復刻させたようなコンセプトと、現代的な最新の安全装備を備えても初代モデルとほとんど変わらない600kg台の軽い車重を実現したスズキの執念には敬意を抱くほかない。
ハンドリングやエンジンフィール、シフトフィールなど、クルマ好きが重視する走りの質は痛快の極みで、150万円台で買える現行型のクルマの中では世界で圧倒的にホットな操縦性を備えている。
S660も往年の名車ビートの現代版として素晴らしい出来栄えだが、車重の大きさによりエンジンパワーが物足りなく思えてしまう点が残念にて、アルトワークスの痛快さには及ばず。
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