■傷の原因はブラシ?
ガソリンスタンドやコイン洗車場にある門型の洗車機は手軽である一方、「クルマに傷がつく」ともよく耳にします。
実際にはどうなのでしょうか。東京都大田区でコイン洗車場を運営する会社に聞きました。
――洗車機でクルマに傷がつくことはあるのでしょうか?
お客様から「傷がついた」という苦情はいただいていません。ただ、洗車機メーカーからは、車体についた砂などが十分に落ちていないまま利用すると、傷がつくことはあるとは聞いています。
□手洗いも同様 傷をつけやすい工程がある
洗車に関する技能や知識などについての資格「洗車ソムリエ」の検定試験を行う、日本洗車ソムリエ協会にも話を聞きました。
――やはり洗車機はクルマに傷をつけてしまうことがあるのでしょうか?
いまの洗車機に多いスポンジブラシは柔らかく、傷がつきにくくなっています。かつては、ブラシについたワックスがクルマの汚れを付着させ、そのワックスが次のクルマに傷をつけるというくり返しがありましたが、スポンジブラシは、その汚れを吸着しにくくなってもいます。ただ、最初に高圧をかけた水で洗浄しないと、クルマに付着した汚れがブラシに押されて傷がつきやすいといえるでしょう。
――手洗いとのちがいはどういったところでしょうか? 洗車機による傷を嫌がる人は、やはり手洗いをすべきですか?
洗車機ではどうしてもブラシが当たらないところがあるので、手洗いのほうが細かく洗えます。ただし、手洗いだからといって傷がつきにくいわけではなく、たとえば仕上げのタオル拭きで傷をつけてしまうことも多いのです。また車種や塗装の種類、車体色によっても、傷がつきやすい、あるいは見えやすいものがあります。
※ ※ ※
洗車機であっても、手洗いであっても、傷がつくことはあるようです。では、最新の洗車機はいかに改良されているのでしょうか。
■クルマの形を読み取ってブラシを制御 最新洗車機の実力
洗車機メーカー大手のビユーテー(名古屋市港区)に、洗車機の最新事情を聞きました。
――今の洗車機は以前よりも傷がつきにくくなっていると聞きましたが、具体的にどの点が改良されたのでしょうか?
洗浄ブラシの素材そのものだけでなく、ブラシをボディに当てる力具合や動き、回転数なども改良されています。最新の機種はクルマの形状を読み取るセンシング性能が向上しており、ブラシ動作を制御し適正な力、回転方向、回転数で洗浄することができます。
――そもそもなぜ傷がつくことがあったのでしょうか?
十数年前はナイロン製が、いまはスポンジ製が洗浄ブラシの主流です。ほかに布製もあります。傷がつく原因は、ナイロン製ブラシがスポンジ製や布製よりも硬かったことのほか、センシング性能が現在ほど高性能ではなく洗浄圧力にムラがあったこと、ブラシそのものの自動洗浄機能がなかったこと、リンスコントロールなどがいまより劣っていたこと、などが挙げられると思います。
□ブラシが届かない部分は「予備洗い」で
――いまの洗車機を利用するメリットはどのような点でしょうか?
自宅の手洗い洗車では、ホースから水を出しっぱなしにして行うこともあるかと思いますが、洗車機ではおおむね、手洗いの4分の1程度の水量で、かつ数分で完了します。洗剤も環境に配慮したものを使用しており、エコな洗車なのです。また、コーティング洗車機能が搭載されたものは、ガラス系コーティングや超はっ水フッ素コーティングなど、高品質なコーティングが短時間でムラなく施工でき、価格もリーズナブルです。近年は新車の多くがコーティングを施工した状態で納車されていますが、そのディーラーコーティングのメンテナンスが洗車機でも可能になっています。
――反対に、最新機でも解決が難しい課題はありますか?
クルマの形状は時代とともに多様化していることもあり、特にタイヤホイールやナンバープレート付近、ワイパー付近など、形状が複雑な部分を洗車機ですみずみまで洗うことはきません。洗車機を使う前に、ピラーやバンパーのくぼみなど、汚れが残りやすい部分をあらかじめ洗っておくといいでしょう。ガソリンスタンドや洗車場では、予備洗いのためのホイール用ブラシや洗剤が設置されていることも多いです。
※ ※ ※
ビユーテーの担当者によると、「手洗いにおける手の圧力は洗車機ブラシの圧力よりも強いこともあり、正しい知識がない手洗い洗車は、洗車機よりもリスクが高い側面がある」といいます。一方で、洗車機では洗えない箇所もあるので、状況に応じて手洗いと洗車機を使いわけるのがよいのかもしれません。
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