全損とは保険金額の全額が填補されることを示す
辞書によると、全損とは、 (1):全面的に損失となること。まるぞん。 (2):損害保険で、保険の目的物の全部が滅失した場合などの損害。保険金額が填補 (てんぽ) される。 とある。クルマ業界で、全損という場合、主に後者のことを指す。
自動車保険における全損には、下記の3つのパターンがある。 A:クルマが盗難に遭って発見できない場合
B:クルマが修復不可能なまでに損害を受けてしまった場合(物理的全損)
C:修理費が車両保険の保険価額以上になってしまった場合(経済的全損) このうち、Aについては説明不要だろう。
Bは、モノコックがゆがむような大クラッシュ、エンジンのブロー、水没、火災、etc.の修復不能レベルのダメージを受けたケース。
問題は、Cの経済的全損。
とくに、駐停車中に相手が突っ込んできたりして、自分にまったく落ち度のない事故で、修理額が被害車の時価額を上まわってしまった場合。長年大事に乗ってきたクルマが事故に遭い、修理の見積もりが60万円になったとしよう。
被害者とすれば、その60万円は当然加害者が保障してくれるものだと思いたいが、10年以上乗ったクルマで、市場評価額が20万円しかなかったとすると、全損扱いになったとしても、20万円しか支払われないルールになっている。
そんな馬鹿な! といいたいところだが、裁判所でも同様の判断をしているのが現状だ。ちなみに、保険会社各社は、東京地区での中古車市場での価格を平均した数値が掲載されている資料、いわゆる「自動車価格月報」=いわゆる「レッドブック」に記載されている小売価格を基準に、市場評価額を算定している。
しかしこの数字は中古車情報webサイトや中古車専門誌の平均価格よりも、なぜだか下まわる傾向があり、被害者に不利な根拠になっている……。
ただ、もし加害者が対物全損時修理費用特約のオプションをつけていれば、市場評価額+最大50万円までは保険金が下りるので、クルマ好きの人はもちろん、すべてのドライバーが、この特約には加入しておいてもらいたい(年間1000円未満)。
また、自分自身が、車両保険に「車両全損時諸費用特約」をつけていれば、万が一、全損事故になってしまったときも、「廃車費用」や「買い替え費用」という名目で、車両保険とは別に、車両保険金の10%(20万円まで)の保証額が支払われるのでこれもおすすめ。
なお、先方の保険会社は、なるべく保証額を低く抑えたいと考えている。とくに某通販系自動車保険会社などの支払渋りは悪評高い……。
そうした保険会社を相手に、十分な補償を勝ち取るには、専門家の力を借りすのが一番なので、自動車保険の弁護士特約はぜひともつけておきたいところ。
ちなみに、事故などとは無関係に、まるで話にならない、できそこないのダメパーツ、ダメグルマも、(新品であったとしても)「全損」呼ばわりされることがある!
(文:藤田竜太)
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