スポーツカーに限らず冷えているときは金属音が出る
スタートボタンを押すと「ブワン」という音でエンジンが目覚めて、同時に目の前のメーターが何か派手にいろいろな動きをする。それが最近のスポーツカーの流儀です。電気がコクピットにも変化をもたらしています。しかしエンジンを始動した直後の金属音の大きさは、そう変わらないように思います。今回はその時の音について、解説してみたいと思います。
【今さら聞けない】エンジンを止める寸前にアクセルを空ぶかしする人がいるけどなぜ?
エンジンの出すカチャカチャ、ジャカジャカという金属的な音は、パーツ同士がぶつかる音です。ぶつかるということは、隙間が存在するということですね。最初から接していれば隙間がないので、ぶつかることはありません。つまり隙間をゼロにすれば、そういう音も出なくなります。しかし、そういうワケにはいかないんです。
金属は温度が上がると膨張します。エンジンが温まると内部のパーツは膨張して、少し大きくなるんです。同じ金属素材で作られていれば膨張率は同じですが、実際にはいろいろな金属が使われていて、膨張する量は異なります。
もしエンジンが冷たい時に隙間がゼロだったら、温まった時には隙間がマイナス、つまり食い込んでしまうことになります。それではエンジンが動かなくなってしまいます。
ここまで読んで判ったと思いますが、エンジンのパーツは温まって熱で膨張した時を想定して設計されています。だからエンジンが冷えている時は隙間が大きく、金属音が出てしまうんですね。逆にいえばエンジンから金属音が消えてくれば、エンジンが温まったという合図にもなります。本当はその隙間を埋めてくれるのがオイルなんですが、始動直後はオイルも冷えていて硬く、柔軟性が十分ではないんですね。
高性能エンジンは想定熱量が大きく暖まるのに時間がかかる
超高回転だったNA時代のF1では、エンジンオイルを温めてから注入して、その後、延々とエンジンを回して暖気していました。十分に温度を上げておかないと超高回転まで回した時にエンジンパーツがダメージを受ける可能性が高いのです。
市販車でもそれは同じで、高回転型エンジンでは温度が上がるまではレヴリミットを大きく下げ、エンジンを保護するプログラムが設定されているものが増えています。
スポーツカーでとくに大きく聞こえる、というのはいくつか要因があります。高回転やハイパワーなエンジンというのはそれだけ大きなエネルギーを発するので、その分だけ想定される温度が高くなります。ということは隙間も大きくしておく必要があります。
またエンジンの音というのは吸気マニフォールドや排気マニフォールドに伝わって発するので、高性能エンジンの大きなマニフォールドはそれだけ音を発しやすくなります。
もちろんスポーツカーには軽量化が重要ですから、高い遮音性能もないでしょう。でも、そうした音を含めてドライビングを楽しむという意味では、スポーツカーはやっぱり楽しい存在といえるでしょう。
(文:岡村神弥)
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