同じ熱容量なら鋳鉄ディスクより約50%も軽量
ポルシェをはじめ、フェラーリ、マセラティ、アルファロメオ、アストンマーティン、コルベット、日産、レクサス、ゾンダ、マクラーレン、フォルクスワーゲン、アウディ、ベントレー、ランボルギーニ、ブガッティ、AMGなど、世界のハイパフォーマンスカーに採用されている、カーボンセラミックブレーキ。
“カーボンセラミック”なのは、ローターの部分で、粉末、樹脂、およびファイバーを、特殊かつ複雑な製造工程で混合し、1700度の高温と真空状態で化合して作られる。カーボンセラミックディスクの最大の利点は、鋳鉄ディスクより約50%も軽量なこと。
ブレーキの熱容量は、比熱が同じなら重量が重ければ重いほど大きい。したがって、スチールディスクで、熱容量を大きくしようとすると、ローターは必然的に大きく、厚く、重たいものになってしまう。
しかし、ブレーキシステムが重たくなると、バネ下重量が重くなり、タイヤの路面追従性が悪くなる。バネ下重量のダイエットは、バネ上重量の軽量化の15倍に相当する効果があるといわれているので、軽量かつ大容量のブレーキシステムの採用はハイパフォーマンスカーにとってとても大きなメリットになる。
また、カーボンセラミックブレーキは、軽量なだけでなく、強度、形状安定性、耐久性ともに、スチールディスクを上まわり、セラミック素材は腐食に強く、制動時の騒音抑制にも効果がある。
超高額な上に公道では割に合わないほどのオーバースペック
短所は予想どおり価格。スチールブレーキが標準のクルマに、オプションでカーボンセラミックブレーキがチョイスできる場合、130万円~200万円ぐらいのプラスになる。日産GT-RのVスペックに用意された、「ニッサン・カーボンセラミック・ブレーキ」などは、なんと500万円というプライスが……。
カーボンセラミックブレーキのパイオニア、ポルシェの場合、「360馬力のエンジンに、1450馬力のブレーキ」(減速Gなどのデータや、4つのローターの熱容量の合計をカロリー計算して、馬力を算出)などといわれ、サーキットなどでも無類のストッピングパワーを誇る。
しかし逆にいえば、ストリートオンリーのユーザーなら、わざわざ高価なオプションのカーボンセラミックブレーキを選んでも、宝の持ち腐れになる可能性も!?
ただし、クルマ&メカ好きとしては、「カーボン」「セラミック」といった言葉の響きや、スチールとは明らかに違うローター面、専用のキャリパーカラーなどに、強く惹かれてしまうのも確か。
耐久性はスチールディスクのおよそ3倍といわれているが、もう少し普及すればコストが下がり、やがて手が届くようになるかもしれない!?
(文:藤田竜太)
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