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電動化時代のいまこそ「売り時」じゃないの? 三菱i-MiEVが消えたワケ

掲載 更新 14
電動化時代のいまこそ「売り時」じゃないの? 三菱i-MiEVが消えたワケ

 登場時から約40%も価格を抑えられるほど熟成していた

 自動車メーカーは電動化に向かっている。もはや新興メーカーや小規模メーカーだけでなく、ゼネラルモーターズやホンダのような大規模メーカーであっても将来的にはエンジンを廃止するという方針を示しているほどだ。

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 そうした世界の流れを見ていると、いかにも日本は電動化に後れを取っていると感じてしまうが、思い返せば100%電気自動車の量産において日本市場は世界に先駆けていたというのは歴史的事実だ。

 それこそ世界初の量産型電気自動車といえる「i-MiEV(アイミーブ)」を三菱自動車が発売したのは2009年のことであった。そのままアイミーブは10年を超えるロングセラーとなり、2021年3月に後継モデルの話題も出ぬまま販売終了を迎えている。

 話題にこそなれど、正直なところヒットモデルとはなれなかったアイミーブ。まずは、法人・官公庁向けの販売から始まった、その歴史をざっと振り返ってみよう。

■アイミーブの歴史 2009年6月 市場投入 法人・官公庁向け 目標1400台 459万9000円(消費税5%) 2010年4月 一般向け販売開始 398万円に価格改定 2010年11月 一部改良 車両接近通報装置採用 販売目標400台/月 2011年7月 10.5kWhのMグレード新設 260万円 従来型はGグレード 380万円 2013年11月 Gの代替として新グレードX設定290万1150円 M:245万9100円 2014年10月 一部改良・価格改定 X:283万8240円 M:226万1520円(消費税8%) 2016年12月 一部改良 回生パドル装備 X:262万4400円 M:227万3400円 2018年4月 全長3480mm 登録車に変更 X:294万8400円 Mグレード廃止 2019年10月 消費税10% 300万3000円 2021年3月 販売終了

 10年というのは長いもので、アイミーブの販売期間において消費税率は2度も引き上げられている。しかし、こうして年表にして整理すると、アイミーブの歴史とは商品改良・企業努力によって価格を下げてきた歴史でもあることがわかる。

 実際、消費税を抜いた本体価格で比べてみると2009年当時は438万円だったのに対して、2021年では273万円となっている。じつに38%も価格ダウンしているのだ。

 価格設定については補助金との関係もあるので、単純なコストダウンだけに理由を求めることはできないが、それでも量産効果が徐々に出てきたことは、その大幅な価格改定からも感じられる。なにしろ、一般向け販売が始まった2010年には、一気に60万円以上も価格を下げているほどなのだ。そして、2010年時点では電気自動車の購入に際して国からだけで114万円の補助金が出ていた。つまり実質的には一般ユーザーは284万円でアイミーブを買うことができたというわけだ。

 この当時、総電力量16kWhものリチウムイオンバッテリーを積んだ電気自動車が、実質300万円以下で買えるというのは、バーゲンプライスではあった。しかし、アイミーブはリヤエンジンの軽自動車「アイ」をベースとした電気自動車であって、分類上も軽自動車だった。電気自動車としてはリーズナブルだとしても軽自動車に300万円というのは腰が引けてしまうのが一般ユーザーの感覚だった。そうした時代背景もあって、アイミーブは特別な乗り物というイメージがついてしまう。

 また、満充電からの航続距離についてもデビュー当初は10・15モードで160kmと軽自動車としても短いと感じるものだったのも、そうした用途を限定するという印象をつけてしまった。2011年の商品改良で回生ブレーキによるエネルギー回収量を増加するなどして、JC08モードで180kmまで大幅に伸ばすことに成功したが、もしデビュー当初に10・15モードで200km近い数字を示すことができていれば、ずいぶんとイメージは変わっていたかもしれない。

 パワートレインの大幅改良があれば違う未来が待っていたかも

 そもそも軽自動車の電気自動車という商品企画は、街乗りコミューターという位置づけと捉えるべきで、航続距離を云々することはナンセンスともいえる。航続距離についてメディアがあれこれ指摘したことも、アイミーブに対して実用性がないというイメージを強くしたという部分は否めない。

 その意味では、2011年に登場したバッテリー総電力量10.5kWhのMグレードは、軽自動車の電気自動車というアイミーブ本来のキャラクターを際立たせる、割り切った商品企画だった。それでも航続距離はJC08モードで120kmを確保、繰り返し充電でも傷みづらいSCiB電池を積んでいたこともあり、メディアやユーザーが電動モビリティの本質をわかっていればもっと評価されたことだろう。

 そうしたアイミーブのキャラクターをスポイルしてしまったのが2018年の改良だ。歩行者保護の法規対応のためにフロントバンパーを伸ばすことになり、軽自動車から登録車になってしまったのだ。合わせて、このときに10.5kWh仕様がカタログ落ちした。この際に、バッテリー総電力量を増やすなどしていれば、商品力も向上したはずだが、電動パワートレインについては最初から最後まで基本的には変更がなかった。

 結果論になるが、日産リーフ(初代モデル)がバッテリーなど電動ユニットについては何度もアップデートすることで商品力を高め、ある程度ユーザーを増やしていったのと比べると対照的だ。もし、アイミーブがバッテリー搭載量を増やすなど大幅なアップデートを実施していれば、その評価は変わっていたことだろう。

 いずれにしても、アイミーブのベースとなったアイがデビューしたのは2006年だ。そのスタイリングは、15年経って見ても新鮮さを保っているという見方は多くの賛同を得られるのではないだろうか。この未来的なシルエットの中身が確実にアップデートされていれば、アイミーブはまた違った歴史を歩んでいたかもしれない。

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みんなのコメント

14件
  • 結局、三菱自工の自由になるカネが無いんだろうね。
  • 今こそEV入門機としてI-MIEVに脚光が当てられてもおかしくない。
    実際、俺も探しているし。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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