デザインはすでに決定
フィアットが大規模な製品戦略を発表した。2023年に新型のBセグメント車を発売し、その後3年間でさらに3台の新型クロスオーバーを展開する計画だ。
【画像】欧州を代表する小型車ブランド【フィアットの現行モデルを写真で見る】 全148枚
最終的には4台の小型商用車、南米限定のコンパクトカー「ストラーダ」、5台の世界戦略車の合計10台の主要車種を揃える予定である。その中には、人気の500(チンクエチェント)とパンダも含まれている。
これまで親会社だったフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は約10年間、フィアットブランドに大々的な投資を行ってこなかった。新しい親会社ステランティスのもと、フィアットはより包括的なラインナップを構築するのに必要な資金を手に入れたのである。
4台の新型車のデザインはすでに社内で正式に承認されており、ブランド責任者のオリヴィエ・フランソワによると、少なくとも2台は2019年のコンセプト「チェントヴェンティ(Centoventi)」の影響を大きく受けているという。
欧州における現在の乗用車ラインナップは、500、ティーポ、500X、パンダで構成されているが、後者の2台は、クロスオーバーの電動化計画のため、モデルチェンジまたは新型車への置き換えが予想される。
フランソワはこう語っている。
「今、わたし達は新しい世界に足を踏み入れました。ついに、わたし達の夢を実現することができるのです。今後5年間は、各地域で1年に1台の新車を発売し、グローバルには、これまで苦労してきた、世界のどこでも共通するクルマをつくることができるのです」
「Bセグメントやクロスオーバーが大きく復活します。わたし達は、最も関連性の高いセグメントに戻ろうとしているのです。今は500Xしかありませんが、わたしの目標は3台用意することです」
今後展開する新型車について、全長3.6m(500サイズ)から4.5m(フォルクスワーゲン・ティグアンサイズ)を超える計画はない、とフランソワは言う。
「(ステランティス内の)いとこはシトロエンです。ストーリーは異なりますが、2つのブランドで多くを共有しています。面白いのは、市場をサイズで分けることができる点だと思います。わたし達は小型車のスペシャリストになり、シトロエンはDセグメントをおさえます。もちろん、中間では重なる部分もあるでしょうが」
プント後継? 新たなBセグメント車
フランソワによると、トヨタ・ヤリスやプジョー208のライバルとなる最初の新型車は、「プントと同サイズだが、プントとは呼ばない」という。プントは25年間、3世代を経て2018年に生産終了したBセグメントの人気モデル。
フィアットは遅くとも2027年までにEVに完全移行することを目指しているため、新型車にはハイブリッドとEVが用意される見込みだと、フランソワは述べた。
「欧州ではEVに賭けています。すべての新型車にEV仕様を導入し、ある時点で完全に切り替える予定です」
「フィアットは『国民のテスラ』になるべきであり、すべての人にEVを提供すべきです。電動化のコストを下げなければならないのは明白です。2027年までには準備が整いますが、それ以前になる可能性もある。しかし、コスト次第です。フィアットは、大衆向けブランドとして初めてEVのみのブランドにしたいのです」
フィアットが現在販売している現行モデルは、FCAの古いプラットフォームを使用している。しかし、今後はグループ全体のスケールメリットを目指すステランティスのもと、共有の新しいプラットフォームを導入していく。
新型のBセグメント車は、プジョー208と同じCMPプラットフォームを使用する可能性が高い。ステランティスが小型車向けに新しく開発したSTLAプラットフォームを使い始めるのは、少なくとも2026年以降だからだ。
しかし、500e(500の電動モデル。欧州では500と呼ばれる)のEV用プラットフォームは、グループ内で実りをもたらすかもしれない。近年、採算が取りづらい既存のICE小型車と、将来に向けてさらに高価なEVを開発するコストに苦労しているステランティス傘下の多くのブランドで採用され、縮小しつつある小型車ラインナップの再拡大が実現する可能性もある。
フィアット500eは、最高出力119psの電気モーターと42kWhのバッテリーで320kmの航続距離を実現する。一方、プジョーe-208では138psのモーターと50kWhのバッテリーを使用して約338kmの航続距離を実現しており、新型車にはこちらが採用される可能性が高い。
新型パンダと500
フランソワは、代表的なモデルである500とパンダの存続を認め、次のように述べている。
「フィアットには2つのアイコンがあります。500はその1つで、驚くほど好調です。1月には、ドイツで最も売れたEVになりました。500にはさまざまなサイズがあり500Xも展開していますが、もっと何かできるはずです」
「もう1つはパンダです。1980年代の初代は、かなり象徴的な存在です。あのようなクルマを現代的に解釈することには、意味があると思います。形だけでなく、本質的でミニマルなアプローチも。『レス・イズ・モア』です。これが、チェントヴェンティ・コンセプトと、これから皆さんにお見せするクルマにインスピレーションを与えました」
「小型車や大型のクロスオーバーが登場し、パンダのDNAを感じることができるでしょう。そのうちの1つはパンダと呼ばれます。パンダが象徴的だったのは、その形ではなく哲学や精神があったからで、わたし達もそれを彷彿とさせるデザインで捉えようとしています。パンダは少し無骨で、シンプルで、頑丈でなければならないのです」
フランソワは、すべての新しいデザインが完成しており、それぞれ「非常に強い個性と特徴的なデザインを持っている」と語った。
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