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「ブランドオリジナリティ時代」におけるGMの存在感【自動車業界の研究】

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「ブランドオリジナリティ時代」におけるGMの存在感【自動車業界の研究】

北米を代表する世界大手の自動車メーカーであるGM(General Motors=ゼネラルモーターズ)のCADILLAC(キャデラック)とCHEVROLET(シボレー)は言わずと知れた日本でも人気の高いブランドで、日本車や欧州車が多くを占める日本の自動車市場においても販売台数以上の存在感を放っています。
今回はメーカーとしてのGMとブランドとしてのキャデラックとシボレーの魅力を分析、同社の日本法人へのインタビュー内容も交えて2つのブランドが日本で展開されることによるユーザーメリットや自動車産業視点での意義などを中心にコラムをお届けします。

世界大手の自動車メーカーであるGMの現在

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GMと言えば長年に渡って世界最大の自動車メーカーとして君臨してきた北米最大の自動車メーカーですが、現在はかつてに比べ良い意味でとてもスマートになったと感じます。
同社の日本法人に伺ったところ、先ずはロゴがGM(大文字)からgm (小文字)に変更され、昨今の電動化に伴いコンセントをモチーフに親しみやすさも意識しており、企業としてかつての販売台数の多さやボディサイズの大きさこそ正義といった方針を変えて規模より質を重視しているとのこと。外部からの印象だけではなく、実際に内部変革が遂行され新しいGMとしてポートフォリオを創出しています。

日本市場からの撤退を2016年に決めたフォードとGMを比較すると、どちらも長い歴史を誇る世界的自動車メーカーですが、日本での販売においては直営ディーラーネットワークで販売してきたフォードと非直営のディーラーネットワークで販売してきたGMとは対照的で、どちらが良いかは一概に言えませんが、結果として直営で営んできたフォードは撤退、GMは現在も販売していることを思うと、北米ブランドとして日本のビジネスに合致していたのはGM型の販売ビジネスであったのかもしれません。
もし今、キャデラックとシボレーというブランドがもう日本に存在していなかったらと思うと、ユーザー視点では魅力的な自動車の選択肢が減ってとても残念ですし、日本の自動車産業にとっては世界大手の自動車メーカーが日本でブランド展開しないという、とてもさみしい状況に陥っていたと思われます。

ではGMにおいて具体的に世界でどういった改革が進められてきたのかと言えば、ピーク時60万人超と言われた従業員数が現在は15万人ほど、それでいて600万台近い新車販売(593万9000台/2022年)、売上は約20兆8411億円(1567億3500万ドル/2022年、1ドル=132.97円換算)、純利益は約1兆3209億円(99億3400万ドル/2022年、同)を生み出しています。
日本で言えば中堅規模の自動車メーカーと同じ従業員数で世界大手規模の売上がある訳ですから結果にも納得といった感があります。

これはメアリー・バーラCEOの指揮により経営改革を掲げて開発や世界中の生産について最適化と効率化を図り、一方で次世代に向けCASE時代をリードする戦略としてVision 3 zero(zero crashes – zero emissions – zero congestion)を掲げ、自動車業界の主要課題である事故と排出ガスと渋滞のゼロを推進してきたことなどが功を奏しています。

ダイナミックな日本のマーケティング戦略

現在、GMはキャデラックとシボレーの2ブランドを日本で展開しており、ラインアップされるモデルはキャデラックがSUVのESCALADE(エスカレード)、XT6、XT5、XT4、セダンのCT5という計5モデル、シボレーは何と!スポーツカーのCORVETTE(コルベット)とCAMARO(カマロ)の計2モデルのみ、これには驚きますが、冷静に分析すると日本でも人気の高いSUV系をメインにやはり必要と思われるセダンを1モデル、人気の高い伝統的スポーツカーを2モデルと極めて秀逸でダイナミックなマーケティングと販売の戦略であると思います。

以前は存在したキャプティバなどのファミリーカー的モデルは姿を消して、高級車のキャデラックとスポーツカーのシボレーとして、ラインアップを見た瞬間にどちらのブランドも際立ち印象に強く残ります。

キャデラックブランド

日本でも有名なキャデラックは北米を代表する高級車ブランドで、かつての巨大なリムジンをイメージされる方も多いのではないでしょうか。

しかし、現在の主力セダンであるCT5は見た目も乗り味もスポーティーでかつてのイメージとは異なり、2L直列4気筒ターボのエンジンは最高出力177kW(240PS)/5000rpm、最大トルク350Nm(35.6kg-m)を1500~4000rpmで発生するので低速から力強く、欧州の自動車プレミアムブランドと同様にシャープに走ります。
室内はメーターからインパネ、各操作系、シートや頭上空間も外観同様にスポーティで、画面やインフォテイメント系はさすが北米ブランドと思える先進機能と使い勝手を持ち合わせています。

しかし、旗艦のエスカレードはかつてのキャデラックのイメージ通りに巨大で(全長 5400mm、全幅 2065mm、全高 1930mm)、欧州プレミアムのSUVや日本を代表するランドクルーザーを実際にも感覚的にもいく回りか大きさで上回り、伝統のOHV方式のV8エンジン(L87型)は最高出力306kW(416PS)/5800rpm、最大トルク624Nm(63.6kg-m)/4000rpmで発生してスタートから力強く走ります。

また、このエンジンは無鉛プレミアムガソリン推奨で無鉛レギュラーガソリン使用可と謳っているのも特長です。
室内の設えも高級車そのもので各部の質感は高く、ゆったりとしたシートや乗り味が極上の安心感と包まれ感を生み出し、更にはエスカレードのために開発され音の粒感まで再現したと言う超高級オーディオのAKGが奏でるサウンドは他に例を見ないエスカレード独自の世界へと乗員を導きます。

また通常はエマージェンシー用が大半であるSUVの3列目シートも大人が十分にくつろげる広さを持ち、それらの魅力から20~30代の比較的若い方からシニアまで年代を問わず人気が高い孤高のSUVです。

シボレーブランド

世界でも指折りのスポーツカーであるシボレーのコルベットは日本でも人気が高く、2020年1月の東京オートサロンで日本初公開された現行モデル(C8型)は、これまで伝統としてきたFRレイアウトがMRレイアウトに変更された意欲的モデルです。

走りの進化は各方面から評価されており、V8 OHVエンジン(LT2型)は369 kW(502PS)/6450 rpm、637 Nm(65.0 kg-m)/5150 rpmのハイパワーによって0-97km/h加速2.9秒、最高速度312km/hの凄まじい性能を誇り、性能に対するコストパフォーマンスの高さでも評価を得ています。

日本初公開の東京オートサロン期間中だけでおよそ400台もの予約注文を受けたというのですから、その注目度の高さに凄みを感じます。

日本を代表するクルマのイベントである東京オートサロンともなると、出展にあたっては相応に予算が必要ですが、同社の日本法人によると新型コルベットの日本初公開に際して、確実に展示車両が日本に到着するか否か定かでないというステータスの中、若松社長の判断で出展を決め無事公開に至ったというエピソードもチャレンジングです。

積極的にマーケティング活動を展開するシボレーは、2023年5月20日(土)に富士スピードウェイでファンイベント「CHEVROLET FAN DAY 2023」を開催予定です。
公道で体験できないシボレーのポテンシャルを体験できる機会が提供されることは、ユーザーにとって貴重な楽しい性能の体感機会であると同時に、日常で無理な運転をしない意識を持てて安全運転に繋がる良い取り組みであると考えます。

伝統のV8 OHVエンジン

キャデラックのエスカレードやシボレーのコルベットにはGM伝統のV8 OHV(Over Head Valve)エンジンが搭載され独特で味のあるファンにはたまらない魅力的なフィールを生み出します。
現在は高回転域でのバルブトレインの追従性から、OHC(Over Head Camshaft)が世界的に主流であるもののGMは頑なにOHVです。

しかし、昨今のエミッション規制から、高回転型のエンジンは淘汰される傾向で低回転から太いトルクでパワーを稼ぐOHVは規制にもマッチしており、素性としてカムシャフトをシリンダーヘッドに持たないため燃焼室形状の設計自由度の高さや低重心といったメリットもあるので、現在のGMのV8エンジンの実力を見れば一概にOHCが優れていると断定出来ないということを体現していると言えます。

CASEからブランドオリジナリティの時代へ

自動車業界ではCASE(Connected:コネクティッド、Autonomous:自動運転、Sheared&Services:シェアリングとサービス、Electric:電動化)の一般化により自動車の魅力や価値の幅が従来の走行性能を中心とした領域から格段に広がりましたが、現在はメルセデス・ベンツやトヨタなどの業界リーダーが牽引してその先のブランドの特長を際立たせてCX(Customer Experience=顧客体験)を高めるBrand Originality時代に突入しています。

そんな中、GMは業界リーダーの一角としてInclusive(乗り手を選ばない)を掲げキャデラックは高級車として、シボレーはスポーツカーとして、欧州プレミアムや日本の高級車とは別の大らかさとシャープさを兼ね備えていると感じます。
GMはキャデラックとシボレーというブランドを通じてBrand Originality時代をリードする特長や個性を明確に打ち出し、更には地域で最適化されたマーケティング戦略によって北米は元より日本や各国で存在感を高めていると分析されます。

参考リンク)
ゼネラルモーターズ・ジャパン株式会社
https://www.gmjapan.co.jp/

CHEVROLET FAN DAY 2023
https://www.chevroletjapan.com/campaigns-events/chevrolet-fan-day-2023

 

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みんなのコメント

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  • オールズもホールデンも大宇もGM。

    一時期スズキの車がシボレーブランドで売られていて、特にワゴンRソリオのボウタイ版であるMWは、GMの日本法人がギブアップしてスズキが売るようになってから、古いモデルにもかかわらずCMがバンバン打たれる人気車になった。

    そこには「メーカー自身による確信犯的なパチモノ」という、GMオートワールド時代には考えられなかったスズキならではのウルトラBな商品企画があったわけだけれど、やはりそれ以上にスズキとシボレーの車作りの本質ががっちりシンクロしていたからに他ならない。本記事で語られているような浮わついたブランド論とは次元が違う。シボレーは、オペルは、大宇は、日本で言うスズキみたいな車なのだ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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