2023年9月、警察庁から「原付免許で乗車可能な排気量を、現在の50ccから125cc以下に見直す検討に入る」と発表された。ただし注意しなければいけないのは、現在ある125ccバイクに、原付一種免許で乗れるようになるということではない。見直しの理由などと合わせて詳しくおさらいしていこう。
※本稿は2023年10月のものです
文/沼尾宏明、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部、ホンダ、ヤマハ、スズキ、Adobe Stock
初出:『ベストカー』2023年11月10日号
排気量が50ccから125ccにアップ!? 30km/h制限に二段階右折は無くならないの? 「原付バイク」排気量改正検討で気になるあれこれ
■50ccの原付存続の危機!?
近場の移動やちょっとした外出で役立つ原付。そんな原付に今、何が起こっている!?(xiaosan@Adobe Stock)
今、排気量50ccの原動機付自転車の存続が危ぶまれている。
原付といえば、クルマの免許を取るとセットで取得されるバイクだが(50ccまで)、そのコスパのよさと利便性からクルマと原付の二台体制で愛用している人も多いハズ。
そんな50ccの原付だが、昨年より法改正の動きが活発化しており、排気量を現行法の50ccから125ccに拡大する流れになっており、そのために警察庁が検討段階に入っているのだ。
具体的に何が起こっていて、今後我々が愛用する原付はどうなっていくのか? 状況を整理してみよう。
■どうして原付一種を125ccに引き上げようとしているの?
年々厳しくなる排ガス規制だが、50ccは排気の触媒を温めるのに時間がかかってしまうため、メーカーは125cc化を推し進めている(sofirinaja@Adobe Stock)
その理由は、従来の50cc(原付一種)に課される厳しい次期排ガス規制だ。
50ccバイクに適用される「令和二年度二輪車排ガス規制」が2025年10月末に迫っている。しかし排ガス規制は小排気量車ほど対策が困難。排ガスを浄化する“触媒”は、300度超で浄化が始まるが、50ccは温度上昇に時間がかかる。そのため規程の時間内に炭化水素などを浄化できず、規制値をクリアできないのだ。
コストをかければ規制をパスできる可能性はあるものの、近頃の原付は20万円前後にまで高額化している(一昔前なら10万円程度!)。そのせいもあり、国内では最盛期の約200万台から約12万台にまで販売が落ち込んでいる。
また「50cc」はほぼ日本でしか存在しない排気量帯。グローバル展開によるスケールメリットも難しい。
一方で原付は公共交通機関が少ない地方ではいまだ庶民の貴重な足。販売が落ち込んだとはいえ、国内の保有台数は約500万台と圧倒的だ。
もちろん現在は電動バイクや電動アシスト自転車などの代替手段も存在する。だが数10kmの移動となると航続距離が心許なく、充電設備も未整備。登坂性能もガソリンエンジンにおよばない。
メーカーとしては「コストがかかってセールスも見込めないけど、社会要請から撤退もできない」板挟み状態だ。これを解消する苦肉の策としてメーカーや業界団体が提言したのが、原付一種の枠組みを変更する案。50ccという「排気量」ではなく「最高出力」で原付一種を区分するものだ。
■走りはより力強くなる!!
排気量こそ原付二種と同じ125ccだが、最高出力で区分がわけられていくという(PLG@Adobe Stock)
具体的には125ccバイクの最高出力を4kW以下(5.4ps以下)に制御し、50cc相当の動力性能にデチューンする。これを仮に「新原付一種」と呼びたい。
現在販売されている新車の原付二種(51~125cc)はすでに排ガス規制に対応済みで、世界的にメジャーな排気量帯でもある。これをベースに新原付を作れば、規制を突破できるうえにコストも抑えられるというわけだ。
125ccベースとなるメリットは、やはり走りのよさだろう。パワーが抑えられ、現行50ccから15~20kg重くなるものの、排気量がアップしたことで従来の原付以上のトルクを得られるハズだ。
また125ccクラスは14インチ以上の大径ホイールを履き、立派な車格のモデルが多い。10インチが主流で小柄な原付に対し、新原付は直進安定性や走破性、さらには所有感までアップするだろう。
価格に関しては、現行50ccと同じか低くなる可能性も。アジアなどで販売されている安価なモデルが新原付として導入される見込みだからだ。
■気になる免許制度はどう変わる?
一方で気になる免許制度だがこちらは従来どおりで、大きな変化はないとされる(Kumi@Adobe Stock)
なお、免許制度については従来と同様になる模様。原付免許は、普通四輪免許に付帯してきたが、今後もそのまま「新原付」に乗車可能だ。
管轄の警察庁は、この案に難色を示していたが、ついに9月、実現に向けて動き出した。有識者会議を設置し、年内にも意見を取りまとめる。
さらに情報筋によると、すでに新原付を使っての実証実験も実施済みで、実現へ前向きに動き出しているという。
主に議論されているのは安全性。従来の50ccより大きく重くなるため、転倒して事故が増える危険性が懸念されているという。しかし、これが担保できれば、複数の法改正は必要なものの、ハードルはクリアできたと言えるだろう。
■新原付一種の気になるあれこれ
原付一種独自のややこしいルールはこれを機にぜひとも見直してほしいものだ(plu@Adobe Stock)
Q1.新・原付一種って馬力以外にどんな制限が設けられるの?
A.原付も現在の原付一種と同じルールが適用される見込み。従来の原付ならではの“独特”な制限がそのまま引き継がれるハズだ。
原付二種の最高速度が上限60km/hなのに対し、原一は上限30km/hで2人乗り不可。高速道路にも乗れない。なお原付の最高速が定められたのは1955年。当時に比べて原付の性能は飛躍的に向上しているだけに、今回を機会に再考してほしいものだ。
Q2.新・原付一種で二段階右折ってなくなるの?
A.段階右折も原付一種ならではの独自ルール。一部の交差点を除き、原付一種は右折レーンを使って直接右折できず、交差点を直進して渡った先で方向を変える必要がある。実にややこしいルールだ。
Q1の回答と同じく原付一種のルールを引き継ぐため、新原付になっても二段階右折は変わらない模様。原付二種には適用されず、制定されたのも40年近く前なので、これも見直してよいのでは?
■125ccってどんなバイクがあるの?
いずれ50ccバイクが125ccに置き換えられるなら、今どんなバイクがあるのか把握したいところ。国産メーカーのスクーターを中心にチェックしよう。
・ホンダ スーパーカブC125
ホンダ スーパーカブC125
往年のカブのデザインが復活!
・全長1860×全幅730×全高1065mm
・WMTCモード燃費:67.4km/L
・最高出力&トルク:8.0ps/0.9kgm
・価格:44万円
・ホンダ PCX
ホンダ PCX
e:HEV搭載モデルもある新時代のスクーター。
・全長1935×全幅740×全高1105mm
・WMTCモード燃費:48.8km/L
・最高出力&トルク:12.5ps/1.2kgm
・価格:36万3000円
・ヤマハ NMAX
ヤマハ NMAX
ヤマハMAXシリーズの末っ子で直進安定性の高さがウリ。
・全長1935×全幅740×全高1160mm
・WMTCモード燃費:46.9km/L
・最高出力&トルク:12.5ps/1.1kgm
・価格:37万9500円
・ヤマハ トリシティ125
ヤマハ トリシティ125
前2輪という前代未聞のバイク。安定感は驚異的!
・全長1995×全幅750×全高1215mm
・WMTCモード燃費:44.9km/L
・最高出力&トルク:12ps/1.1kgm
・価格49万5000円
・スズキ アヴェニス125
スズキ アヴェニス125
ライダーに不安を感じさせない強靭な足回り。
・全長1895×全幅710×全高1175mm
・WMTCモード燃費:54.3km/L
・最高出力&トルク:8.7ps/1.0kgm
・価格:28万4900円
・スズキ アドレス125
スズキ アドレス125
老若男女問わず似合う中性的デザイン。
・全長1825×全幅690×全高1160mm
・WMTCモード燃費:53.8km/L
・最高出力&トルク:8.7ps/1.0kgm
・価格:27万3900円
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みんなのコメント
なら、50ccの原付は販売を止めれば
良いだけの事じゃないの???
で、必要な生活にスクーターが必要な
人は125cc(小型自動二輪AT限定)
の免許を取得して貰い、
現行の125ccスクーターに買い
替えて貰えば良いだけの事。
本当に生活にスクーターが必要な人は
皆さん普通にそうしますよ。
何をそんなに特別措置をする必要が有る???
小型二輪AT限定の免許が取れない様な人なら、125ccスクーターなんて乗るのは止めてください。
排ガス規制で消えて行った乗り物は他にも沢山有りますよ。
原付二種から今と同じにすれば何の問題もないし、取り締まりもしっかり出来るし、電動自転車やキックボードの事故が減って良いことだと思う。