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スカイラインGTをチューンナップした結果……

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スカイラインGTをチューンナップした結果……

スカイラインGTの思い出


岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第168回

価格は31億円!? 「ロールス・ロイス」が製造した究極のフルオーダーモデルとは?


僕の愛車歴の始まりは1959年。もう何度か触れているが、19歳の時にルノー・4CVを買ったのが最初だ。

その後、背伸びしてあれこれ乗ったが、今回は、そんな中でもとくに思い出深い1台をご紹介する。3代目スカイライン の2ドアハードトップGTである。

スカイラインは初代から好きだった。1957年にデビューした初代は、アメリカ車のような華やかさをもつ唯一の日本車だった。

1960年には,ジョバンニ・ミケロッティのデザインによるコンバーチブルもラインナップに加え、夢を見させてくれた。

2代目スカイラインはガラリと雰囲気を変えたが、スタイリッシュでインテリジェンスをも感じさせた。だが、4気筒1500ccのエンジンは物足りず、強いインパクトはなかった。

そんなスカイラインの立ち位置が一夜にして変わったのが1964年。5月に開催された第2回日本GPに勝利をおさめるべく、急遽開発された「GT」の登場だった。

4気筒を積むスカイラインのノーズを200mm延長。強引に6気筒2000ccエンジンを積み込んだスカイラインGTだ。

さすがにポルシェ904には勝てなかったものの、その戦いぶりにファンは熱狂。「スカイラインGT神話」が誕生した。異様にノーズの長いシルエットも、「力の象徴」として多くのクルマ好きを惹きつけた。

とくに、日本GP出場車と同じ「3連ウェーバーキャブとフロント・ディスクブレーキ」を装着したGT-B=赤バッジは、輸入スポーツカーをも超えるほど人気は沸騰した。

僕もほしくてたまらなかった。でも、MG-Bを手に入れたばかりのタイミングだったので、さすがに諦めた。友人が買った赤バッジを羨ましげに横目で見るしかなかった。

そして、1968年には3代目が登場。GT系は開発当初から6気筒エンジン搭載を決めていたため、伸びやかでバランスの良いルックスに仕上がっていた。

加えて、69年には「4バルブ・DOHC6気筒 1989cc」=S20型エンジンを積む「GT-R」が誕生。レースでの破竹の進撃とも相まって「神話」は加速していくことになる。

当時、僕はオートスポーツ誌に、レーシングカーやラリーカーの試乗記も書いていた。なのでワークスGT-R」にも乗ったし、高橋国光さんや北野元さんの横にも乗った。いつも「全開でお願いします!」と言って乗り込み、鈴鹿で富士で至福の時を味わった。

でも、4ドアセダンのGT-Rには、今ひとつ夢中になりきれなかった、、のだが、70年秋に加わったHT(ハードトップ)には痺れた。150万円の価格(当時の大学卒平均初任給は4万円くらい)にも痺れたが、、。

そこで一計を図った。GT-RではなくGT(SOHC・L20型エンジン搭載)に的を代えたのだ。GTなら89.5万円と価格は半分近いし、元々、HTのカッコよさに痺れたところが大きかったのでダメージは少ない。

そして、あちこちに声をかけ、新品同様レベルの中古車が出るのを待った。当時は、親から独立して自分の家を持つ(借りる)ことを真剣に考えていた。そんな時期だったので、経済的余裕はなかった。

それほど待たずにイメージ通りのクルマが手に入った。ボディカラーはくすんだようなオレンジ系。いちばんお気に入りの色だった。

エンジンは2リットル6気筒のSOHCで、パワーは120ps(ハイオク仕様)。パワーも満足できるレベルではなかったが、それよりも滑らかさに欠ける回転感にはガッカリした。

広報車のL20の回転感には納得がいっていただけに、憮然たる思いだった。要は「広報チューン」だったということなのだろう。もちろん、日産広報は否定したが、、。

でも、僕は躊躇せずそのクルマを買った。どうせあちこち手を入れるつもりだったので、内外装と基本部分さえしっかりしていればそれで良し、だったからだ。

最初の手入れはホイール交換。当時の最先端だったマグネシウムホイールを手に入れた。神戸製鋼製のそれは、鈍い光を放つ「いかにも先端!?」といった雰囲気で、ボディカラーとのマッチングも文句なし。1本7万円、4本で28万円の「超絶な買い物!!」だったが

満足度も超絶レベルだった。

GT-Rをやめ、中古のスカG にして、、節約のために頑張ったのに、ホイールに28万円とは!! 最初から、僕の行動は矛盾に満ちていたと言わざるを得ない。

しかし、矛盾は序章だけに留まらなかった。次々と積み重なってゆく矛盾を止めることはできなかった。

たしかカヤバだったと思うが、しかるべき筋から得た「スカG用に開発した試作品でいいのがあるよ」との情報を元に、スポーツ・ダンパーを手に入れた。

そして、日産のスポーツ車両を扱うしかるべきショップでダンパーを取り付け、併せて車高も少し低くしてもらった。ここまでで、僕のスカGはすごくカッコよくなった。

街でも、明らかに人目を惹いているのがわかったし、駐車場でもよく声をかけられた。ホイールと車高の話が多かった。狙い通りの成果を上げたということだ。

そうなると、エンジンにも手を入れたくなった。、、で、なにをやったかというと、、スムースに回るよう、クランクを始めとするバランスに手を入れた。

これも、上記のしかるべき日産系スポーツショップでやってもらった。すでにやるべきことはわかっていたし、データも持っていたようなのでコトはスムースに運んだ。具体的金額は覚えていないが、納得のゆく金額だったように記憶している。

パワーはあえて求めなかったが、加速の瞬発力を高めるため、ファイナルのギア比を少し低めのものに変えてもらった。

エンジン回転のラフさが消え、低いギアでの瞬発力が少しながら上がったことで、感覚的にはずいぶん速くなったように感じた。

見た目のカッコは断然良くなり、フットワークもかなりよくなり、エンジンもなめらかになり、、、僕のチャレンジはことごとく成果をあげた。

でも、経済的にはかなりの逼迫状況に追い込まれたはず。「はず、、」とは曖昧な物言いだが、この辺りの記憶がどうもはっきりしない。たぶん、クルマ好きの兄に「借りた」のだと思うが、返したかどうか、、これまた記憶ははっきりしない。どうも、都合のいい頭脳構造になっているようだ。

いずれにしても、「GT-Rは高くて手が出ないからGTを買った」意味は、まったく的外れな結果になったことだけは間違いない。

スカイラインと言えば、多くが真っ先に思い浮かべる人は「桜井真一郎」だろう。スカイラインの生みの親、育ての親であり、スーパースターの座に押し上げた人でもある。

桜井さんにはとてもよくしていただいた。僕も桜井さんが好きで、あれこれ理由をつけては話す機会をつくった。

スカイラインに乗ると「直接インプレッションを聞きたい」との連絡が入ることも少なくなかった。桜井さんは、とくに「ハンドリングについて」、それも「限界領域について」の話をよくなさった。

当時はスポーツ車の重要なセールスポイントだったゼロヨン(0~400m加速)で、僕がGT-Rの公式タイムを上回ったときもすぐ連絡が入った。とても喜んでくださった。

GT-Rの公式タイムは16.1秒で、僕が出したのは15.4秒。その2年ほど前、初代シルビアの公式タイム17.4秒を16.7秒にまで縮めたこともよく覚えてくださっていて、「いやー、ありがとう。実は期待していました!」との嬉しい言葉を頂いた。

そうしたあれこれもあり、桜井真一郎さんと連名の単行本も出版された。「クルマ・ハート・スカG」というタイトルだが、200ページに亘って対談している。とくに「ハート」の部分は二人とも熱くなっていて面白い。

初代スカイラインGTから現在の日産R35型GT-Rまで、僕はいろいろな形で関わってきた。とくに、1989年に誕生し、世界に衝撃を与えたR32型から、現在のR35型初期モデルまでの関わりは深く濃いものだった。

僕のクルマ人生の中、スカイラインGT / GT-R(日産GT-Rへと名を変えた今ももちろん)は大きなスペースを占めている。楽しい思い出、大切な思い出が無数にある。

本連載のイラストを手がける溝呂木先生の個展が開催中です

溝呂木陽水彩展2021
場所:スポーツカーズ in フィアットカフェ松濤
住所:渋谷区松濤2-3-13 03-6804-9992
会期:2021年9/4(土)-26(日)火曜定休 
時間:10~18時
入場無料


● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト


1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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みんなのコメント

5件
  • なるほど。岡崎教授も気がつけば80歳オーバーなんですね。昭和の時代にハコスカを中古で買っていじり回して楽しんだ世代はいつの間にか後期高齢者で、桜井真一郎氏をはじめとして歴史を作った多くの方々はこの世にいないと思うだけでも、昭和はますます遠くなりにけりと感じさせられます。
  • チューンナップって単語は、私蔵の『よろしくメカドック』コミックス以外でとなると、かなり久しぶりに聞いた…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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