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パンダへ通じる魅力 ジープ・アベンジャーでアルプス山脈へ 海抜1700mの充電器を目指す 後編

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パンダへ通じる魅力 ジープ・アベンジャーでアルプス山脈へ 海抜1700mの充電器を目指す 後編

美意識の高いイタリア人にも共感の容姿

トンネルに入ると、アンビエントライトが灯りジープ・アベンジャーの車内を彩る。インテリアは適度にポップで、安っぽさとは無縁。スイッチ類の製造品質も悪くない。

【画像】パンダへ通じる魅力 ジープ・アベンジャー・サミット 競合クラスの電動モデルはコレ 全144枚

ダッシュボードの下には横に長い小物トレイが用意され、センターコンソール内の収納は大きく、利便性にも気が配られている。ただし、シート背もたれのランバーサポートは、筆者の体型には若干合わなかった。

イタリアの高速道路を走っていると、アベンジャーは注目度が低くないことがわかる。家族向けのBセグメント・クロスオーバーではあるが、美意識の高いイタリア人にも共感される容姿のようだ。

しばらく運転してメーター用モニターを確認すると、航続距離の減りは当初より早い。それでも、アンドロイド・オートを利用したグーグル・マップのナビによれば、グロースグロックナー高山道路の料金所までは、余裕を持って到達できるようだ。

アルプス山脈が目前へ迫り、残り100kmという地点で徐々に天候が悪化していく。一帯は霧に包まれ、アベンジャーに乗った2人を孤立させる。麓の町、リーエンツを過ぎると、道は徐々に手強くなっていく。勾配がキツくなり、ヘアピンカーブが続く。

予想の航続距離と、実際の残りの距離との数字が徐々に近づいていく。筆者とカメラマンの緊張感が、ジワジワ高まっていく。駆動用バッテリーを使い果たしたら、下り坂を利用しながら戻ってこられる保証はない。

残り50kmを切り表示されたバッテリー・ロー

内燃エンジン車で燃料が少なくなった時と同様に、航続距離が50kmを切った辺りで警告音が鳴った。駆動用バッテリーの残量が減り、モニターには「バッテリー・ロー」と表示されている。

しかし、まだ慌てる必要はない。都市部の郊外など一般的な条件なら、欧州では問題なく充電ステーションまで辿り着けるだろう。

北上を続け、グロースグロックナー手前の最後の基地となる、ウィンクラーンの町を通過。既に標高は高い。絵画のような谷間を横目に、登り坂は一気に角度を増していく。

目的地まで5km。気温が低下し、電動パワートレインにとって過酷さが強まっていく。ここまで一度も道を間違えなかったことが、きっと吉と出るはず。

アベンジャーのブレーキペダルの感触には、改善の余地がある。意図した通りに効き始めるポイントが掴みにくい。多くのユーザーが気に留めるほどではないものの、AUTOCARをご愛読いただいている方なら、恐らく同意してもらえるだろう。

回生ブレーキの強さは調整できるものの、完全な滑走状態にはならない。先を読みやすい道であれば、最もエネルギー効率を高めることができるのだが。とはいえ、アベンジャーの好感度へ影響するほどではない。

バッテリーEVへ乗り慣れた筆者でも、「バッテリー・レベル・クリティカル」と表示された経験はない。料金所手前の、きつい登り坂でこのモードに入ると厄介だ。距離を逆算しながら運転してきたものの、一抹の不安を抱えつつ、先を急ぐ。

アルプス山脈を登りながら341kmを走破

しかし残り1kmちょっとの地点で、亀のイラストが点滅。頼りないセーブ・モードへ入ってしまった。アベンジャーは10km/h程度まで速度を落としつつ、まだ先へ進んでいる。一帯は雲に包まれ、カメラマンが手持ちの地図で現在地を確かめる。

言葉にならない不安が車内に充満する。充電ステーションの手前には、2つのヘアピンカーブが待ち構えていることはわかっている。携帯電話の電波は入らない。アベンジャーを、心のなかで応援する。

足を引きずるようなペースで、料金所へ接近していく。駆動用バッテリーには、殆ど電気が残っていないだろう。辛くも充電ケーブルを接続した筆者は、カメラマンとハイタッチで成功を祝った。

ホテルで疲れを癒やした翌朝、険しい岩肌を雲がダイナミックに流れていく。天候が改善し、グロースグロックナーの雄大な景色に心を打つ。

なんとか、アベンジャーは目的地へ辿り着いた。ジープは、現実的な航続距離を305km前後だと主張しているが、アルプス山脈を登った今回は341kmも走破してみせた。

初代パンダにも通じる小さなジープの魅力

青空のもと、ワインディングを下る。アベンジャーのステアリングは若干手応えが曖昧で、カーブを堪能できるわけではない。駆動用モーターも、発進時は鋭いものの、高速なモデルと呼べるわけではない。

とはいえ、想像よりボディロールは小さい。タイトなカーブでも落ち着きがあり、シャシーバランスの良好さが伺える。これは、ステランティス・グループが有するプラットフォームの特長といえる。

リアアクスルに駆動用モーターを追加し、プジョー・スポーツ・エンジニアリング(PSE)の技術者にサスペンションをチューニングしてもらえば、一層楽しいジープになりそうだ。そんな展開を想像させる、高い完成度にあることは明らかだ。

アベンジャーの陽気な雰囲気と優れた能力は、過酷な登り坂でも不満なく活きていた。イタリア・トリノの小洒落たセンスが絶妙にミックスされたような、小さなジープの魅力は、ジウジアーロ時代のパンダにも通じると、アルプス山脈で実感したのだった。

ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)のスペック

英国価格:約3万9600ポンド(約712万円)
全長:4080mm
全幅:1780mm
全高:1530mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:9.0秒
電費:6.4km/kWh
航続距離:384-408km
CO2排出量:−
車両重量:1536kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:51kWh
急速充電能力:100kW
最高出力:156ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション(前輪駆動)

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