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【ヒットの法則414】MINIクラブマンはMINIの課題とされた室内空間を拡大する画期的なアイデアで誕生

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【ヒットの法則414】MINIクラブマンはMINIの課題とされた室内空間を拡大する画期的なアイデアで誕生

2008年3月2日、MINIのボディをストレッチしたMINIクラブマンが日本に上陸した。MINI、MINIコンバーチブルに続く、このMINI第3のモデルはどんな魅力を持っていたのか。Motor Magazine誌では3ドアのMINIと比較しながらじっくりと考察、その模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年4月号より)

受け継いだ伝統を巧みにアップデート
日本市場においての、MINIの尋常ならざる勢いは未だ衰えていない。個人的にはそう思っている。

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もちろん数字だけを見れば、確かに往時に対して若干の陰りもあるだろう。が、考えてみればこんな特殊なナリの2ドアのコンパクトカーが、しかもユーザーの大半がある程度のオプションを選択していて客単価が300万円くらいになるコンパクトカーが、月に1000台も売れているということ自体、特異なことだ。

果たして日本の自動車メーカーに、同様の縛りをもって商品企画ができるだろうか。仮にできたとしても、それを何年も同じような勢いで続けることができるだろうか。ユーザーから300万円を取るコンパクトカーといえばブレイドマスターくらいしか思い浮かばない有り様では、この現象は咀嚼し吸収することもままならないのではないだろうか。

類する話として、これほどクルマが売れないと嘆いている日本市場で、伝統と革新の両方を持ち合わせたMINIに吹いた神風は、多分、通り一辺倒なマーケティング論では解けないものだと思う。月1000台が局地的でなく、日本の津々浦々で満遍なく売れているという背景には、デザインビジネスの要素もキャラクタービジネスの要素もネットビジネスの要素も隠れている。一見カビくさいことが大好きそうなイギリス人は、そういう商売の鍵をMINIの周縁に上手に仕込んだわけだ。

そんなMINIも登場から6年。強く意識しなければわからないようにフルモデルチェンジされたのは昨年だが、そろそろ既存のユーザーのケアも商売的には考えなければならない時期だ。個人的には旧型のオーナーが現行モデルに慌てて乗り換える必要もないと思うが、旧型のオーナーの中にはある程度距離を積んで買い換えの時期を迎えている人もいるだろう。中にはそのまま新型に入れ替えというのも芸がないと思っている人がいても不思議ではない。

わざわざそれを選んで買った人にとっては他に代え難い満足度を供しているMINIの数少ない弱点のひとつは、居住性や積載力といった容量の問題だ。しかしそれを解決すべくただ単に大きくしたのではMINIの意味がない。そんな彼らには好運にも、まだ手をつけていない先達からの財産があった。それが第三のMINIとなるクラブマンというわけだ。

オリジナルミニがオースチンとモーリスの手に委ねられていた1960年、ミニトラベラー/カントリーマンは居住性と積載力という市場の要望に沿って登場した。全長で240mm、ホイールベースで80mm伸ばされたボディは、リアシートが簡単に折り畳めて長尺物が積めることもあり、レジャー指向のユーザーだけでなく、仕事のお供というコマーシャルバン的なニーズも満たしていた。

ちなみにクラブマンというのは1969年に登場したオリジナルミニの派生モデルに与えられた名前で、当時のトレンドらしいらしいボクシーな印象の顔を持つ、言ってしまえば時代に無理矢理フィッティングさせるがためのグレードだった。クラブマンにはワゴン版も存在したが、こちらはエステートという一般的な名前が与えられている。

すなわち新しいMINIクラブマンは、トラベラー/カントリーマンのコンセプトとクラブマンの名前をいだたいたということになるわけだ。勝手な想像ながらカントリーマンの名前は、噂されるクラブマンベースのクロスオーバー風モデルがもしや登場するかもという、その段のために暖めているのかもしれない。

MINIクラブマンのデザイン的な特徴は、オリジナルのトラベラー/カントリーマンに沿っている。ウッドトリムこそないものの、Cピラーからリアゲートを囲むように回されたボディ別色のパネル、そしてそこに据えられた観音開きの「スプリットドア」と呼ばれるリアゲートはまさにそのオマージュだろう。

一方で、MINIクラブマンには新たなアイデアも盛り込まれている。それが右側のドア後ろに設けられた「クラブドア」だ。マツダRX-8でお馴染みになったそれは、前ドアを開けてから室内側のノブで扉を開くという開閉アクションも同様となる。左ハンドルモデルの事情を優先した配置は残念だが、当然乗降性は高くなっている。身長180cmの巨体で実際に試してみると、劇的にとは言わずとも、苦しげに体を曲げるような動きは必要としない。後席を頻繁に使う人にとっては十分におもてなしとして機能する。

自分のまわりにもいるオーナーたちもそうだが、MINIオーナーがよく口にする不満のひとつが荷室容量の小ささだ。曰くちょっと大きな荷物を積もうとするとリアシートを倒さなければいけないから不便だと。最初は納得して買ったつもりでも、毎日使うタイプのクルマゆえ小さなストレスが積み重なることになる。最大で930LになるというMINIクラブマンのラゲッジスペースはそういうオーナーのニーズをきちんと満たすことになりそうだ。

ちなみに4人乗車時の荷室容量は前型MINI比で110L大きい260L。標準的なCセグメントが300L前半といったところだから、車格を考えれば十分納得できる。

MINIに比べると全長が240mm、ホイールベースで80mm延長されたMINIクラブマンの室内は、身長180cmの筆者が運転ポジションを合わせた状態で後席に座って、長距離でも我慢できるかなというレベル。MINIよりはタンデムディスタンスは広がっているが、フィットあたりのスペースフルなBセグに比べれば若干窮屈な印象は否めない。クルマの性格上、大の男が4人乗ってというパターンも考えづらいし、そこは割り切るべきところだろう。

延ばされたホイールベースが落ち着いた走りをもたらす
取材に供してもらったMINIクラブマンはとりあえず慣らしもそこそこという状態の6速AT版クーパーSだった。本体価格は331万円。同グレードのMINIに対して23万円高となる。

175psを発揮するBMW製の1.6L直噴ターボは1600rpmから最大トルクを発生する実用性も兼ね備えており、フォルクスワーゲンのシングルチャージャーTSIと並び、現在もっとも効率の高いターボエンジンということができる。

その柔軟なドライバビリティは現行MINIクーパーS比で70kg車重が増えたこのクルマに乗ってもまったく褪せることはない。ATモードで乗っていると、低回転からトントンと高いギアを捕まえながら、実に粘り強く街中での加減速に応えてくれる。瞬間的に260Nmまで発生トルクを高めるスクランブルモードもあるが、その必要をまったく感じさせないというか、そんなものがついていることすら意識させない滑らかさがある。

ちなみにMINIクラブマンの動力性能は0→100km/h加速が7.6秒、最高速が224km/hと発表されており、0→100km/h加速のみ現行MINIクーパーSに対して0.5秒ほど劣るが、これはユーティリティとのトレードを考えれば納得できる範囲だ。ただし世のターボエンジンの常で、サウンドやシャープネスなどの官能性に関してはクーパーのNAユニットに譲るのは仕方のないことだろう。

MINIに比してのMINIクラブマンの最大の違いは乗り心地だ。首都高のように目地段差が続く状況や、路面のアンジュレーションに対してこちらは明らかにアタリが優しい。定則通り重量とホイールベースが好作用しているのだろうが、リア側の突き上げが想像以上に抑えられているところをみると、高ロードを想定したリアサスのチューニングが巧くいっていると思われる。

それゆえ、空荷の1人乗車でのコーナリングにも後ろが跳ねるような不安はない。一方で、MINIが一貫して掲げる「ゴーカートフィーリング」を操舵のレスポンスと局地的に捉えれば、それはMINIに対して明らかに一歩譲っている。意識して高められたゲインが落ち着き、ドシッと座ったまともな乗用車に近づいているというのが個人的な印象だ。

これをどう捉えるかは人それぞれだろうが、ゴーカートフィーリングという点で見れば積極的に求めたくなるのはむしろ旧型の方だと個人的には思っている。ロールを抑えた高負荷にも負けないカチッとしたアシとクイックな操舵フィールの連携は旧型の希少な個性だ。

MINIはそれに対してロールを許し、アシをきちんと接地させる現代的なスポーティ方向に振り込んでいる。現状では結果的にゲインの高さがやや鼻につく仕立てになっていて、それはロープロファイルのタイヤを選ぶほどに顕著になっていく。

一方でMINIクラブマンのホイールベースはそれを緩和させる方向に巧く作用しているのだろう。クーパーS同士の比較という前提では、5.5mという回転半径を除いて、あらゆるシーンでMINIクラブマンの方が上と結論づけた。

取材車は生産ロットの若さの問題か或いは個体差か、リアゲートの軋みが目立ったが、これは時間とともに改善される問題だろう。単にキャラクターだけでなく、実用性と趣味性を兼ね備えた質感の高いコンパクトカーが欲しいという向きにも、MINIクラブマンは適した1台に仕上がっている。専用設定の茶系の色で仕上げてシックなシティコミューターとして乗るもよし。そういう適応性の高さもMINIという商品の総合力にきっちり一助している。(文:渡辺敏史/Motor Magazine 2008年4月号より)



MINIクーパーS クラブマン 主要諸元
●全長×全幅×全高:3960×1685×1445mm
●ホイールベース:2545mm
●車両重量:1250kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:175ps/5500rpm
●最大トルク:240Nm/1600~5000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速MT[6速AT]
●車両価格:318万円[331万円](2008年)

[ アルバム : MINIクーパーS クラブマン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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