もし375万円で、2シーターオープンを買うならば
マツダが現行MX-5(日本名:ロードスター)の軽さを誇るのは当然のことだ。なにしろ現代の市販普通車でありながら、最軽量スペックは1トンを切るのだから。
程度極上のマツダ・サバンナRX-7、3台がオーストラリアでオークションに
タルガ風のオープンとなる可動式ハードトップを装備したRFことリトラクタブルファストバックは、ソフトトップ比45kgのプラスで、その重量はほぼすべてがルーフ周辺の高い位置に集中している。
けれどマツダは、ロードスターの楽しみに満ちたダイナミクスを維持するべく、シャシーを調整してあるという。
オープン時のスリルと、クローズ時の快適性が、この小さなサイズに同居するのだ。
そして、この2.0ℓの「スポーツ・ナビ」グレードは、そうしたもろもろが£25,695(375万円)で手に入る。
しかし、新車にこだわらなければ、同程度の金額で、もっと上のクラスのメルセデス・ベンツSLKを探すこともできる。
値落ちに感謝 SLKという刺客
初代が1996年に登場し、可動式ハードトップを備える小型ロードスターというジャンルの先鞭をつけたモデルであることはいうまでもない。
この価格帯であれば、現行モデルだと1.8ℓのSLK 200を選ぶことになる。
今回のパラジウム・シルバーの個体は、そのAMGスポーツ仕様で新車時から2年と経たず、メルセデスの保証もまだ1年半残っている。しかも走行距離も6000km弱と短い。
考えてみれば、価格は£21,000(306万円)と新車価格より£16,000(233万円)ほど値落ちしているのだ。
MX-5がメタルトップ採用で45kg増量したことで眉間にシワを寄せるのであれば、SLKがそれより350kgも重いと聞いたら、こちらのシワはボトックス注射で消さなければならないほど深く刻まれることになりそうだ。
数値は明らかにSLK優勢
しかし、自然吸気で160psのMX-5に対し23ps/7.1kg-mのアドバンテージを持つターボユニットを積むことで、0-100km/h加速は0.4秒早い7.0秒、燃費は0.9km/ℓ凌ぐ15.4km/ℓをマークする。
キャビンは、もちろんSLKの方がデラックス。ソフトな材質やつややかな仕上げを多用し、本革やソリッドで精密なスイッチも奢られる。
エルゴノミクスに抜け目はなく、引き締まってホールド性に優れたシートは低く据え付けられ、背の高いドライバーにも十分な頭上空間を稼ぎ出す。
屋根を開けるにはトランク内の仕切りを下げる必要があり、容量が335ℓから225ℓに減少するが、それでもMX-5の127ℓを優に凌ぐ。
MX-5のキャビンには、重量とコストを削ろうとした努力の跡がハッキリ見て取れる。削ぎ落された感じはこのクルマの意図に即しているが、手触りやアジャスト性、がっちりとした感じなどはSLKに敵わない。
シートのホールド性は負けていないが、高さ調整は目いっぱい下げてもやや高く、体格によっては頭がルーフに擦れそうだ。
ステアリングコラム調整はチルトのみで、グローブボックスはなく、センターコンソールのインフォテインメントシステム用ダイヤルの位置はドライバーからやや遠い。
とはいうものの、この「スポーツ・ナビ」グレードには、うれしいアイテムが備わっている。
装備を優先させるならば……
たとえば反応のいい7.0インチのタッチパネル・ディスプレイやナビゲーション・システム、オート作動のワイパーやヘッドランプ、パーキングセンサー、シートヒーターなどだ。
今回のメルセデスは5.8インチのディスプレイこそ付くものの、ナビをはじめこれらの装備が欠けている。
では、2台のキモとなるルーフの機能はいかなるものか。どちらも、オペレーションはスイッチひとつの全自動。しかし、マツダの開閉ルーティンの精巧さは、SLKの比ではない。
それでいて所要時間は15秒と、一般的なフルオープン方式であるSLKの20秒に勝る。
では走らせたらどうなのだろう?(後半はあす公開予定)
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