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アバルト 500には気取ったスポーツカーを簡単にやっつける痛快さがあった【10年ひと昔の新車】

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アバルト 500には気取ったスポーツカーを簡単にやっつける痛快さがあった【10年ひと昔の新車】

アバルトグランデプントに続いて、2009年4月、待望のアバルト500(チンクエチェント)が日本上陸した。ここでは富士スピードウェイショートコースで行われた試乗会の模様を振り返ってみよう。上陸直後でまだナンバーが取得できない中で行われた試乗会、その注目のほどがわかる。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年6月号より)

類い希な「人馬一体」感
長期テスト車でふだんフィアット500に乗っていることもあり、アバルト500の日本上陸を楽しみにしていた。去年(2008年)の夏、フィアットのテストコースで試乗したとき、好印象を受けたこともあり、ぜひ日本でじっくり乗ってみたいと思っていたのだ。

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しかし、実は今回も富士スピードウェイショートコースという限られた空間での試乗だった。試乗会場が富士スピードウェイであることはもちろん事前に知っていたのだが、ショートコースと周辺の一般道も走れるのではないかと期待していたので、その点は非常に残念だった。

さて、いつものことなのだが「ショートコース」とはいえ、サーキットで走れと言われると、ついついスピードを出してしまうもの。走って気持ちがよければよいほど、ますます調子に乗ってしまい、結局は一般道レベルでの走行フィールはほとんど味わうことができなかった。これは今後の課題ということにさせていただきたい。

ではなぜ、そんなに気持ちがよかったのか。それはこのクルマには類い希な「人馬一体」感があるからだ。その要素を順番に挙げると、まず車重が1110kgと軽いこと。高速道路をまっすぐクルージングしているときにはわかりにくいが、サーキットではクルマが軽いことによる扱いやすさ、ハンドルを切ったと同時にスルリと曲がる小気味良さが実感としてつかめる。

そして、しなやかなサスペンションも大きな美点だ。フィアット500もいいサスペンションでよく粘るが、一定レベルを超えるとピョコンと跳ねてしまうようなところがある。しかしアバルト500は違う。コーナーで大きな横Gがかかっても、ピターッと路面に吸い付いたような状態をいつまでも保つ。とくにリアサスがよく路面を捉えているという印象を強く受ける。そして滑り出すのはゆっくりで、限界が非常にわかりやすい。

さらに驚くのは、その乗り心地の良さだ。サーキットでそこそこハードな走行をしても実に快適なのだ。これなら一般道でも乗り心地はよく、何らストレスはないだろう。

過剰ではない高性能が走りの楽しさにつながる
次はトランスミッション。いまどきただの5速MTに何を驚いているのだと言われそうだが、「ただの5速MT」だからよいのだ。球形の大きなノブを動かして行うシフトアップ、ダウンのフィールはスポーツカーのそれとは違い適度にソフト。しかし、エンジンパワーがダイレクトに駆動系に伝わる感覚や、エンジンの回転やトルクの発生状況に応じて適切なギアを選ぶという作業はMTならではのもので、そこにクルマとの一体感が生まれる。

エンジンは1.4L 直4 DOHCターボで、最高出力は135ps、最大トルクは180Nm、フィアット500の1.4Lはノンターボで100ps、131Nmだから、パワー&トルクともに約35%増しだが、この差は大きい。日頃、フィアット500ではまったく「飛ばす気」など起きないが、アバルト500ではすぐに「その気」になってしまったことは前述したとおりだ。

パワーウエイトレシオを計算すると、フィアット500が10.20kg/ps、アバルト500が8.22kg/ps。ちなみにニューゴルフの160psエンジン搭載車は8.38kg/psだ。パワーウエイトレシオが「8の前半」だと、走りは結構楽しいのだなと納得させられる。

さて、アバルト500というクルマ。その走りは「すべてが適度でバランスがよい」ところがいいのだ。過剰なものは何もない。すべてをドライバーの制御下におけるという安心感が、クルマとの一体感をいっそう高めるのだろう。これは「大人の味」だ。

インテリアも一見、ロッソのレザーシートなど派手に思われるかも知れないが、その他の部分は色づかいもデザインも落ち着いている。また、クオリティも高い。インパネまわりで目を引くのは大きなセンターメーターの左上に設置されているブースト計。これはシフトアップインジケーターも兼ねていて、時に応じてドライバーへ「シフトアップ」というメッセージを発する。

走りに関わる装備として紹介しておきたいのは、まず「SPORTスイッチ」、これをオンするとコントロールユニットのマッピングとターボの過給圧を調整して、最大トルクが206Nmにまで高まる。まるでF1の「KERS」のようだが、もちろんSPORTスイッチには使用時間の制限はない。ただ、使っている間は燃費が悪くなるだけだ。

もうひとつはTTC(トルクトランスファーコントロール)。これはコーナリング時に内輪が空転した場合、LSDのようにそれにブレーキをかけるディバイスだ。

安全装置も7つのエアバッグをはじめ充実の極み。オーディオはFM/AM電子チューナー付きCDプレイヤー&MP3プレイヤーとサブウーファー付きハイファイサウンドシステムを装備。標準で付いていないのはナビシステムだけという内容で、295万円という価格はリーズナブルだ。あとは最終確認を一般道で行うのみだ。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之/写真:原田 淳)

アバルト500 主要諸元
●全長×全幅×全高:3655×1625×1515mm
●ホイールベース:2300mm
●車両重量:1110kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1368cc
●最高出力:99kW(135ps)/5500rpm
●最大トルク:180Nm/4500rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・35L
●タイヤサイズ:195/45R16
●最高速度:205km/h
●0→100km/h加速:7.9秒
●車両価格:295万円(2009年当時)

[ アルバム : アバルト500 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

4件
  • 今やEV化待ったナシの状況にあるヨーロッパの自動車業界
    アバルトの大元・フィアットも500をEV&HV化している状況で
    今後アバルトがどうなるのか…
    2025年ICE完全終了で、多くの名ブランドが消えゆく心配が…
  • 名前変えて現行モデルなわけで…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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