一部改良を受けたホンダの商用バン「N-VAN」に今尾直樹が試乗した!
まわさなくても十分走る
一見、なんでもないN-VANのようだけれど、ドアを開けるとビックリ! インテリアはカーキ色で、いかにもギヤ、アウトドアの道具っぽい。このカーキ色のインテリアがこの春、正確には4月19日、ホンダの軽商用バンのN-VANにくわわった特別仕様車 「STYLE+NATURE(スタイルプラス ネイチャー)」の見どころだ。ベースは丸型ヘッドライトのFUNという、ビジネスというよりはホビー向けを意識したグレードである。
試乗の印象は、正直、あまりピンと来なかった。動力性能は軽660ccの自然吸気(NA)エンジンで、980kgという1t近い車重のことを考えると不満はない。むしろ、ウチの「N-ONE」よりよいようにも思う。というのも、わが家のN-ONEは2012年発売の初代で、初代は初代N-BOXベースなのである。対して2018年に登場したN-VANは、同じN-BOXベースでも2代目のプラットフォームを流用している。1世代違うのだ。
エンジンは、658cc直列3気筒横置きDOHCのS07Bで、最高出力53ps/6800rpmと 最大トルク64Nm/4800rpmを軽やかに生み出す。ウチの初代N-ONEより静かで、中低速トルクがある。まわすと、さすがにうるさいけれど、まわさなくても十分走る。
だけど、乗り心地はフラット感にイマイチ欠けるし、アクセルのオン/オフ時のピッチング方向の姿勢変化が大きい。ついウチのN-ONEと比べてしまうから、なおさらそう感じるのかもしれない。なんせN-VANは全高が1945mmもある。N-ONEよりどうしたって重心が高い。コーナーというほどのコーナーは今回都内をチョロっと走っただけだから走っていないけれど、首都高速2号線のカーブでは妙に安定している。ハンドリングは“ド”がつくアンダーステアであることを頭に入れておけば、無問題である。
ドライブしながら、筆者もハタと気づいた。N-VANというのは商用バンであることに。FFの最大積載量は2名乗車時で350kg、4名乗車時は200kgとカタログにある。荷室に350kg積んでも耐えられるような脚に仕立てられている。働くクルマに空荷で乗って、乗り心地がイマイチだなんて、どの口がいうか、という話である。あかん。これはいかにも不当だ。自分で書いていて、そう思う。空荷なのにポンポン、リヤが跳ねない。むしろ、そのことに感心すべきではないか。
しかして、今回の試乗では実証できていないこともまた確かである。運ぶ荷物もなかった。宅配便のバイトを突然始めるわけにもいかない。時間があれば別であるにしても、テストのためとはいえ広報車で宅配便のバイトをやっていた。という噂になるのも切ない。
広い空間に驚く致し方なく都内の一般道をチョロっと走って、青山にあるホンダの本社に戻り、しばし時間があったので、助手席のドアと、助手席側のスライドドアを開けてみる。すると、センターピラーのない広大な空間が1台の軽自動車のなかに出現しているではないか!
感動。なぜかサンダーバード2号みたい。と、筆者は思った。サンダーバード2号のハンガーの広い空間を思わせたのかもしれない。あるいは単にモノを運ぶということで、そんな連想をさせたのかもしれない。
助手席のドア側にはオレンジ色のレバーがふたつついている。運転席にはないレバーだ。おなじくオレンジ色のヒモもついている。いかにもギヤっぽい。助手席のサイドについた解説に、まずはヘッドレストを外し、背もたれの腰のあたりの短めのレバーを右に押すと、背もたれが前に畳まれる、とある。早速やってみる。すると、あれよあれよと助手席が沈み込んでいく。後席はもっと簡単に畳むことができ、そうすると、運転席を残して、ものすごく広くてフラットな荷室があらわれる。これはすごいです。シートの沈み込み方に見惚れ、あらわれる広い空間に驚く。
これぞ、ホンダN-VANの全タイプが標準装備する「ダイブダウン機構付き助手席&リアシート」ってヤツで、これを見ただけでN-VAN、欲しい! と、私のような、夢想すれどもなにもしないナマケモノでさえ、そう思った。
もしも、勝手なことを申し上げてよいのであれば、私的にはN-VANはこの特別仕様のスタイルプラスネイチャーではなくて、丸型ヘッドライトが好きなので、FUNの6MTの4WDを選びたい。全天候ということもさることながら、4WDのほうがおそらく、乗り心地が空荷でもフラットだから、である。
もちろん、カーキ色の内装が気に入った方にはこの特別仕様車はピッタンコ。4WDもある。残念なことに6MTの設定はない。もっとも、6MTを選べたとしても実際に購入するひとは少数派だろう。筆者も実際に購入するわけではないです。ごめんなさい。6MTをカタログモデルで用意している。という心意気がエンスーなのだ。
改良ポイントのおさらい最後に4月に発売されたN-VANの一部改良の中身についてご紹介しておく。
その1は、安全運転支援システムの「ホンダ センシング」にアクセルペダルとブレーキペダルを踏み間違えた際に加速を抑制する「急アクセル抑制機能」の採用である。
その2は、GとL、ふたつのグレードの4WD版に「ヒーテッドドアミラー」を追加したこと。これにより、悪天候時にもクリアな視界を確保できるという。
その3は、ホビー用途を意識したFUNグレードに「オータムイエロー・パール」と「ボタニカルグリーン・パール」の2色を追加したこと、である。
ついでに「N STYLE+(エヌ スタイル プラス)」について付記しておくと、2021年12月、N-BOX(エヌボックス)誕生10周年を機にスタートした、ホンダNシリーズ共通のブランドである。第1弾は設立と同時に発表された「N-BOX Custom STYLE+ BLACK(スタイルプラス ブラック)」で、以後、2022年8月に第2弾の「N-ONE STYLE+URBUN(スタイルプラス アーバン」、同年9月に第3弾の「N-WGN STYLE+BITTER(スタイルプラス ビター」が登場している。N-VANのSTYLE+NATUREは第4弾。これでNシリーズすべてにスタイルプラスが揃ったことになる。ひとつのプロジェクトが完結した。なんとなくおめでたい気がする。オシャレで個性的な仕様がオーナーにとって特別なものにする。そういうオーナーひとりひとりの笑顔を想像すると、こちらもまた笑顔になる。
文・今尾直樹 編集・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
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商用車の佇まいじゃ無い