C40はボルボが純EVへシフトする象徴
クーペボディだからといって、コンパクト・クロスオーバーに407psは必要ないかもしれない。ルーフラインがなだらかに傾斜しているものの、ボルボC40の性格付けは、スポーツカー的なものとは異なる。価格にも反映している。
【画像】407psのクロスオーバー ボルボC40 リチャージ・ツイン 競合モデルと比較 全132枚
ボルボの高性能版と聞くと、ポールスター・エンジニアードを思い浮かべるかもしれない。しかし基本的には、XC40をクーペボディにしたクロスオーバーがC40だ。
XC40との違いは、そのフォルムを除くと、内燃エンジンを一切選べないということ。C40はXC40やポールスター2と同じ、CMAプラットフォームをベースとするが、選べる動力源は電気モーターだけとなる。
231psを発揮する駆動用モーターを1基搭載し、67kWhの駆動用バッテリーで432kmを走行できる、通常のリチャージがベーシックなC40。前後に203psのモーターを1基ずつ搭載し、75kWhのバッテリーで439km走行できる、リチャージ・ツインも選べる。
XC40とプラットフォームを共有するため、技術的にはガソリンエンジン版やハイブリッド版の用意もできたはず。だが、ボルボはC40を純EVへシフトする象徴のような存在に据えた。同社としては、初の純EV専用モデルという位置づけだ。
今回英国で試乗したのは、C40 リチャージ・ツイン。四輪駆動となる。
ニュートラルな操縦特性に穏やかな乗り心地
フロント側とリア側に、同じ最高出力を発揮する駆動用モーターが搭載され、リチャージ・ツインの操縦特性はニュートラル。コーナーを攻め立てるとフロントタイヤが先に限界を迎えるが、ワイドなピレリPゼロ・タイヤのおかげで、グリップ力は巨大。
シャシーはスポーツSUVとはいえないにしろ、トラクションも非常に高く、瞬発力も抜群。ステアリングホイールは、感触が薄いものの重み付けが丁度いい。
一方で乗り心地は穏やかで、舗装が綺麗とはいえない郊外の道でも、自然な印象のまま運転できる。だが路面が荒れてくると、大きめのロードノイズが車内へ響く。英国価格5万8900ポンド(約913万円)のボルボとしては、少々残念ではある。
エントリーグレードの小径ホイールなら、多少改善するはず。試乗車のアルティメットはトップグレードで、見た目重視のサイズだった。
インテリアの質感は、価格を考えればもの足りない。3万4100ポンド(約528万円)のXC40 T3なら、まったく不満はないはずだが。
ボルボらしくシートの設計は素晴らしい。インテリアの組み立て品質も高く、トポグラフィーと呼ばれる半透明のトリムパネルも新鮮。だが、プラスティックやゴムコーティングされた部分が多すぎる印象だった。
環境負荷にも強く配慮された素材選びは、評価できる。だが、マイクロスウェードの質感やステアリングホイールのレザーには、もう少しを求めたい。
ライバルへ充分に伍する仕上がりだが
ダッシュボード中央にはタッチモニターが備わり、インフォテインメント・システムはグーグル社によるOSで動く。グラフィックは鮮明で、操作に対する反応も良い。メニュー構造も論理的でわかりやすい。
一方で幾つかの機能には、メニューを掘り下げなければアクセスできない。回生ブレーキの効きは、ワンペダル・ドライブできる強さか、惰性走行できる弱さの2択。この切り替えも、サブメニューまでタップを繰り返す必要がある。
回生ブレーキの強さは、もう数段階、選択肢があって良いだろう。切り替え方法も、簡便であるべきだと思う。
ボルボというブランド力や、北欧らしいクリーンなデザイン、407psというパワフルさは、間違いなくC40 リチャージ・ツインの強み。メルセデス・ベンツEQAやアウディQ4 e-トロンと比較しても、充分に伍する仕上がりにある。
一方で、より安価で能力に長けたライバルも増えつつある。コストパフォーマンスで、テスラ・モデルYやヒョンデ・アイオニック5といった魅力的な選択肢と、悩んでしまう人もいるだろう。
ボルボC40 リチャージ・ツイン・アルティメット(英国仕様)のスペック
英国価格:5万8900ポンド(約913万円)
全長:4431mm
全幅:1850mm
全高:1582mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:4.7秒
航続距離:439km
電費:4.8km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2132kg
パワートレイン:ツインAC永久磁石同期モーター
バッテリー:75kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:407ps
最大トルク:67.2kg-m
ギアボックス:−
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