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凝ったメカを採用するも後が続かなかった? 残念な結果となった車3選

掲載 更新 15
凝ったメカを採用するも後が続かなかった? 残念な結果となった車3選

■画期的な技術や機構を採用するも残念な結果となったクルマを振り返る

 クルマの技術は日々進化しており、各自動車メーカーとも常に研究開発に余念がありません。そうして誕生した画期的な新技術や新機構は新型車に搭載され、大きなセールスポイントとなります。

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 しかし、新技術や新機構は大変な労力と時間、お金かけて開発されたとしても、必ずしもセールスに結びつくとは限らず、なかにはひっそりと消えていったものも存在。

 そこで、凝ったメカを採用するも後が続かず残念な結果となってしまったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

●日産10代目「セドリック」/11代目「グロリア」

 現在、日本の自動車市場では2ペダルのATが主流ですが、ATにもいくつか種類があり、もっとも普及が進んでいるのがギアを使わずに変速するCVTではないでしょうか。

 CVTは金属のベルトとプーリーを用いて減速比を連続的に変えることで、変速ショックがないスムーズな運転が可能なだけでなく、つねにエンジンが効率良く燃焼する回転数を保ちながら走行が可能なことから、低燃費化にも有利というメリットがあります。

 さらに、CVTは一般的なステップATよりも部品点数が少なくできることから、生産コストの削減と小型化も可能となり、誕生した当初は小型車や軽自動車を中心に普及しました。

 しかし、CVTはベルトとプーリーの摩擦力によってエンジンの駆動力をタイヤに伝達する機構のため、大出力のエンジンではスリップが生じやすく、伝達効率が下がるという問題がありました。

 そこで、1999年に発売された日産10代目「セドリック」/11代目「グロリア」に搭載されたのが、「エクストロイドCVT」という、それまでにない大出力・大トルクにも対応できるCVTです。

 エクストロイドCVTは一般的には「トロイダルCVT」と呼称されるもので、理論自体は古くに誕生していました。

 仕組みはプーリーとベルトの代わりにディスクとローラーを介して駆動力を伝達するというもので、構造は入力ディスク(エンジン側)と出力ディスク(タイヤ側)の間にローラーが挟まっており、そのローラーの角度を変えるとディスクとの接点が移動し、減速比が変わるというものです。

 ディスクとローラーによる駆動力の伝達は、ベルトとプーリーと同じく摩擦力を介しておこなわれますが、トロイダルCVTでは非常に高い圧力で接する必要があり、開発の鍵は潤滑油にあったといいます。

 そして、日産はトランスミッションメーカーのジヤトコなど数社の協力で開発に成功。

 最初にトロイダルCVTが搭載されたのがセドリック/グロリアで、最高出力280馬力を発揮する3リッターV型6気筒ターボエンジンに対応したことから大いに話題となりました。

 しかし、精度の高い加工技術が要求されたことや、特殊な潤滑油がコストアップにつながり、セドリック/グロリアの場合は4速AT車に対して50万円以上も車両価格が高騰。

 さらに、構造的に小型化できないというデメリットもあり、セドリック/グロリア以外では11代目「スカイライン(V35型)」に搭載されたにとどまり、その後のモデルではトロイダルCVTは採用されませんでした。

 現在はベルト式CVTもより強度の高いチェーンに置き換えられ、300馬力以上の出力に対応できるようになったため、トロイダルCVTが再び採用されることは無さそうです。

●マツダ「ユーノス800/ミレーニア」

 マツダがつくるエンジンというと、かつては世界初の量産化に成功したロータリーエンジンがあり、高い技術力を世に知らしめました。

 そのDNAは現在も受け継がれており、排出ガスを高価な後処理装置を使わずにクリーン化する低圧縮比のディーゼルエンジンや、火花点火機関とディーゼルの仕組みを併せ持つ、量産世界初の予混合圧縮着火エンジン「スカイアクティブX」など、画期的なエンジンを開発しています。

 そして、1993年に発売されたユーノス「800」にも、技術者にとって夢のようなエンジンが搭載されました。

 ユーノス 800はフラッグシップセダンとして開発され、外観は大型セダンながら角を丸めた流麗なフォルムが特徴です。

 技術的にも4輪操舵やABS、トラクションコントロールを装備して高い走行安定性を実現し、アルミ製ボンネット、ソーラー・ベンチレーションシステムなどが注目されました。

 そして、ユーノス 800で最大のトピックスは、量産車世界初のミラーサイクルエンジンを搭載したことにあります。

 ミラーサイクルエンジンはポンピング損失の低減と熱効率の向上(高膨張比)を実現するもので、理論自体は1940年代には確立されていました。

 ユーノス 800では2.3リッターV型6気筒DOHCエンジンから最高出力は220馬力と3リッター自然吸気エンジン並のパワーを誇り、2リッター車並みの低燃費を両立。

 パワーダウンを補うために採用したリショルムコンプレッサー(スーパーチャージャーのひとつ)も、量産車では世界初でした。

 こうして誕生したミラーサイクルエンジンのユーノス 800ですが、すでにバブル崩壊の影響からマツダの業績が急激に悪化していた背景があり、1997年にユーノスブランドを廃止。

 ユーノス 800はマツダ「ミレーニア」として継続販売されましたが、2000年のマイナーチェンジでは肝心のミラーサイクルエンジンがラインナップから消滅しました。

 その後、ミラーサイクルエンジンはトヨタ初代「プリウス」で再び採用(トヨタは「アトキンソンサイクル」と呼称)され、普及が一気に加速。

 マツダも2007年発売の3代目「デミオ」でミラーサイクルエンジンが復活しましたが、自然吸気となり機構が簡素化され、複雑なメカニズムを採用したのはユーノス800(ミレーニア)のみでした。

●ホンダ「CR-Xデルソル」

 ルーフが開閉でき、開放感に秀でたオープンカーは大いに魅力的なクルマです。このオープンカーでもっともポピュラーなのはソフトトップで、さらに耐候性を向上させたメタルトップも広く採用されていますが、かつてはさまざまなルーフ開閉機構が考え出されました。

 そのひとつが、1992年に発売されたホンダ「CR-Xデルソル(delSol)」に採用された「トランストップ」です。

 CR-Xデルソルは「バラードスポーツCR-X」「CR-X」に続くシリーズ第3弾で、初のオープンスポーツカーとして開発されました。

 トップグレードには最高出力170馬力を発揮する1.6リッター直列4気筒DOHC VTECエンジンが搭載され、4輪ダブルウイッシュボーンの優れた足まわりと相まって、スポーツカーとしての優れた走りを実現しましたが、最大の特徴はルーフの開閉機構にあります。

 CR-Xデルソルには2種類の仕様が設定され、ひとつは天井部分を手動で脱着する一般的な「タルガトップ」で、もうひとつが電動のトランストップとなっています。

 トランストップは非常にユニークなギミックを採用しており、まずトランクリッドが垂直方向に持ち上がって、トランクリッドから2本のアームが出てルーフを保持。

 そのままルーフが平行移動するようにトランクリッド内に格納された後トランクリッドが下降し、約45秒でオープンが完了するというものです。

 優れた走りと手軽にオープンエアモータリングを楽しめるCR-Xデルソルでしたが、トランストップは50kgもの重量増につながり、2代目までのライトウエイトスポーツというイメージは薄れてしまいました。

 シャシ剛性も十分に確保していたCR-Xデルソルですが、従来のピュアスポーツカー像を求めたCR-Xユーザーから敬遠されてしまい、販売は成功したとはいえず1998年に生産を終了。この代をもってCR-Xは消滅してしまいました。

 なお、その後にデビューしたホンダのオープンカーでは、「S2000」が手動のソフトトップ、「S660」がソフト素材のタルガトップを採用しています。

※ ※ ※

 新技術の開発には莫大な予算と長い時間がかけられるのが一般的で、当然ながらメーカーとしてもなるべく長く使われることを前提にしています。

 今回、紹介した3台では短命となってしまいましたが、本文中に登場するプリウスを例に挙げると、トヨタはハイブリッド車の開発を1969年にスタートし、レシプロエンジン+モーターのハイブリッド車の開発は1980年代の初頭からで、市販に向けて開発がスタートしたのは1993年といわれています。

 そして、初代プリウスが発売されたのが1997年ですから、実に28年もの歳月を経て完成したといえるでしょう。

 その甲斐あってトヨタのハイブリッドシステムは、改良が重ねられつつも初代プリウスから大きく変わること無く、現在もさまざまな車種で使われています。

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みんなのコメント

15件
  • s2000は電動ソフトトップですけど
  • マツダのプレッシャーウェーブコンプレッサー
    いすゞのニシボリックサスペンション
    理論はすごいと思ったけど、すぐなくなったな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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