「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は「トヨタ ウィッシュ」だ。
トヨタ ウィッシュ(2009年:2代目)
新型ウィッシュのサイズは、フロントのオーバーハングが先代より30mm延長されただけ。なんと賢明な判断だろう。今回のモデルチェンジに関しては、プラットフォームがキャリーオーバーだからという理由があるのかもしれないが、今後、大きくなりすぎたクルマたちは徐々に小さくなることが予測されているので、実に賢いパッケージングといえるだろう。
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デザインはけっこう凝っている。フェンダーは3種類も用意されていて、2.0Zが215/50R17タイヤを履いているのに対し、1.8Sは195/60R16タイヤなので、先代の15インチからトレッドを広げて踏ん張り感を出しつつも、タイヤ分の余裕が出て最小回転半径は5.5mから5.2mに小さくされている。機能と見た目を見事に両立させた美点だ。
ドアを開けて乗り込むと、インパネのデザインに驚いた。飛行機の翼をイメージしたという2層構成。やはり目立つのは、メーターパネルの上に位置するエアコン吹き出し口で、暑がりが多い男性には好評らしいが、はたして女性にはウケるだろうか。シートリフターとチルト&テレスコピック ステアリングが備わるので、ドライビングポジションは決めやすいから、吹き出し口の向きを調整すれば、モロに風が顔に当たるということはないだろう。
さらに、ECOドライブモードを選択すると、アクセル操作に対する駆動力だけでなく、空調制御も最適化されるので、エアコンによる乾燥は気にならなくなる。燃費も良くて肌やノドや目にも優しいとなれば、女性にも好評となるだろう。もちろん、ウィッシュはエコ指向なだけのミニバンではない。そのコンセプトは「お客様の多様な願い(WISH)を叶えるクルマ」。なので、スポーツモードも用意されている。
エンジンは2.0Lと1.8L。1.8Lのバルブマチックは初登場だ。それに組み合わされるのが7速AT風ゲート付きのCVT。さらに2.0Zと1.8Sはパドル付き。加えて、1.8SにはCVTスポーツモードが、2.0Zにはダイナミックスポーツモードが備わる。リアサイドドアはスライド式ではなく、あえてスイング式のミニバンを選ぶというからには、このスポーティという要素は外せない。ちなみにスポーティ度は2.0Z→1.8S→2.0G→1.8Xという順番になるが、この幅がかなり大きい。
最初に1.8Xに試乗した。往年のイプサムを彷彿とさせるようなフワフワ感は、ウィッシュっぽくないなというのが正直な印象だった。続いて、少々残念気味な気持ちで2.0Zに乗り込むと、全然違う。
リアサスにダブルウイッシュボーンを採用した効果もあり、とくにスポーツモードをオンにすると、コーナリングがシャキッと締まる。パドルシフトのレスポンスもいいし、ステアフィールもクルマとの一体感さえ覚える。かといって乗り心地は大きい凹凸こそガツンとくるものの収まりはいい。堂々とミニバンと胸を張れる乗り心地と、家族に隠れて走りを楽しむお父さんのための性能を満たしている。
それでも、ベストチョイスは1.8Sになるだろうか。街中ではペダルレスポンスが良すぎるほどのシャープなスポーツモードと、エコモードの両方を楽しめてわかりやすいからだ。燃費や価格を考慮しても、ここらが妥当なチョイスかもしれない。
■ウィッシュ 1.8S 主要諸元
●全長×全幅×全高:4590×1720×1590mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1360kg
●エンジン種類:直4 DOHC
●排気量:1797cc
●最高出力:106kW<144ps>/6400rpm
●最大トルク:176Nm<17.9kgm>/4400rpm
●トランスミッション:CVT(7速マニュアルモード付き)
●駆動方式:横置きFF
●タイヤ:195/60R16
●当時の車両価格<税込み>:209万円
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みんなのコメント
とても良い車でした。走るし荷物乗るしであまり文句無かったです。なにより形が好きでした。
プリウスαと比較し、価格差が大きすぎて、ウィッシュを選びましたが正解だったと思います。
1800CCですが丁寧に運転すれば燃費も13~14キロと伸び、エコな車です。