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トヨタ・シエンタに挑む!──新型ホンダ・フリード詳報

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トヨタ・シエンタに挑む!──新型ホンダ・フリード詳報

新型ホンダ「フリード」のプロトタイプに、今尾直樹が見て、触れた! 印象をリポートする。

2モーターのe:HEV搭載へ

1990年代の珍技術3選

ホンダのコンパクトミニバン、フリードの新型がこの6月に発売になる。5月9日、デザインとコンセプトがホンダのホームページの特設サイトで先行公開された。これに先立ち、4月某日、都内某所で事前説明会が開かれ、記者も実車を見てきたので報告したい。

そもそもフリードは「モビリオ」の後継として2008年に登場した、全幅1.7m以下の5ナンバーサイズで、3列シートとリヤにスライドドアを持つ小型ファミリーカー、いわゆるミニバンである。取りまわしがよくて運転しやすいサイズのわりにキャビンが広く、キャプテンシートの6人乗り仕様だとウォークスルーもできて、とりわけ子育て世代の支持を得ている。現行型は2016年発売の2代目で、モデル末期にもかかわらず昨年度の自販連の統計「乗用車ブランド通称別順位」で10位に入るほど高い人気を維持している。

そんなベストセラーなのだから3代目もキープコンセプトは当然である。グランドコンセプトの「“Smile” Just Right Mover(“スマイル”ジャスト ライト ムーバー)―こころによゆう 笑顔の毎日―”」は、初代の“ちょうどいい”をこんにち的な表現に変換したものだろうし、生活密着型の道具、あるいは生活のパートナーとしてどうあるべきか、ユーザーの意見も参考につつ、さらなる改善が図られている。

パッケージデザインのコンセプトは、“よゆうの視界”“よゆうの空間”“よゆうの荷室”と、されている。幕の内弁当からカプセルホテルまで、限られた空間を限りなく有効に使う、そういう工夫がニッポン人は得意なのかもしれないし、好きなのかもしれない。

ということはともかくとして、プラットフォームは現行フリード用を継承している。したがって2740mmのホイールベースは同一。基本的にエンジン横置きの前輪駆動で、4WDの設定もある。ハイブリッドはこれまでのSPORT HYBRID i-DCD(1.5リッター・ガソリン+モーター内蔵の7速DCT)に換えて、2モーターの「e:HEV」が採用されている。詳細は未発表ながら、現行「フィット」とパワーユニットを共有しているはずだ。ということは、1.5リッターのガソリンもある。

2モーターのe:HEVは2モーターのハイブリッドよりもかさばるため、フロントのボンネットが若干のびている。それでも4310mmの全長は現行型比45mmプラスにとどめられている。実際、新型フリードは十分コンパクトに見える。

モデル構成は、2タイプ設定されている。標準仕様を新たに「エア」というサブネームを与え、クロスオーバー仕様の「クロスター」と、キャラクターわけを明確にすることで、より幅広い層にアピールしようというのだ。

エアは2022年発売の現行「ステップワゴン」で初めて用いられた名称であり、“安心・快適・家族中心”“日常・多様性”を、モットーにしている。クロスターは2019年に現行型のマイナーチェンジでくわわったアウトドアテイストの仕様で、2020年に登場したフィットにも設定されている。新型フリード・クロスターではフロントにシルバーのガーニッシュが与えられ、専用デザインのホイールやオーバーフェンダーなどで、ゴツくてタフなムードを演出し、“遊び心”と“非日常的・個性”を打ち出している。ただし、タイヤはサイズも含めてエアと同じで、クロスターにのみ2列シートの5人乗りが設定されていること以外、機能面では変わらない。

ちなみに現行フリードの標準型とクロスターの販売比率は8:2程度で、現行型では標準型の3列6人乗りのハイブリッドに人気が集まっている。

シートに対する考え方の違いフリード・エアのシンプル&クリーンなデザインは、現行ステップワゴンとも共通するもので、驚きはないけれど、好感が持てる。水平基調は、ドライバーをはじめとする乗員の視界確保と、見た目の安定感を意識している。というデザイン思想も共感できる。

黒地に楕円の細いライトが横にふたつ並んだフロントマスクは新鮮で、このオーバルの2連ライトはデイタイムランニングライト(DRL)とウィンカーを兼ねており、ウィンカーの役割のときにはオレンジ色で発光する。ヘッドライトはこのふたつの下にある。

「ホンダのアシモみたいですね。ディズニー・アニメのロボット(「ウォーリー」に出てくるイヴのこと)とか」と、担当デザイナーに記者の感想を述べたら、見る人のそのときの気持ちが反映するように無機的にしたかったのだそうだ。なるほど、可愛らしくもあり、真面目そうでもあり、こちらの心持ち次第で表情が変わって見える。そのほうが長く付き合えるかもしれない。愛着も持てる。Aピラーが大きく後ろに寝ているのは初代以来で、小型車ならではの敏捷性、ダイナミックさを表現している、ということだろう。

パッケージングでの改善点は“よゆうの荷室”である。フリードの3列目シートは伝統的にサイドに跳ね上げる方式を採用している。現行型の短所は、跳ね上げたときに、シートの形状から荷室空間がカタカナの“ハ”の字になり、その分、狭くなっている点だ。新型ではこれを改善すべく、跳ね上げたときに“直立すっきり収納”できるよう、3列目シートの形状を見直している。これにより跳ね上げ時の荷室の幅は従来比で160mm広くなっている。跳ね上げたとき、リアクオーターウインドウを塞ぐ高さにあったシートの位置を90mm低くしてもいる。90mm分、荷室は広くなり、かさばるもの、たとえば自転車の積み降ろしも楽になったという。窓を塞ぐ面積も小さくなって荷室が明るくなってもいる。

しかして筆者の疑問は、「オデッセイ」で3列目シートの床下収納を実現しているホンダが、フリードではどうしてサイド跳ね上げ式を採用しているのか? だった。フリードの最強・最大のライバル、トヨタ「シエンタ」はサードシートにダイブイン機構を採用しているというのに……。ダイブインで床下スッキリ収納のほうがおそらくコストもかかるはずで、そのコストのかかる方式を、トヨタが採用していることが解せない。問題はコストではない……のかもしれない。トヨタ車についての疑問はトヨタに尋ねるのが筋、というかホンダの人には答えられないので、それはまた別の機会に譲るとして、ホンダがフリードであえて3列目を跳ね上げ式収納にしているなぜなのか? ♪じゃかじゃん。それは2列目にチャイルド・シートを設置するユーザーが多いから~、なのだ。

シエンタのダイブイン機構は、2列目シートを一旦、ダブルフォールディングで折り畳まないといけない。なので、そのたびに2列目に装着したチャイルドシートを取り外す必要がある。跳ね上げ式だと、その手間が要らない。

しつこいようですけれど、それではシエンタのユーザーの方はどうしてらっしゃるのでしょう? 3列目を出し入れするときにはいちいちチャイルドシートを取り外しているのか? それを面倒だと思わないマジメな方ばかりなのか? それとも、3列目は年に何回も出し入れしないのか? ニッポン独自のコンパクト・ミニバンに見る、3列シートの使い方の謎ではないでしょうか。

少なくともフリードは、新型になっても2列目にチャイルドシートを装着したまま、3列目の出し入れができる。あなたはフリード派、それともシエンタ派? フリード派の方は発売まで、あともうちょっと。しばしお待ちください。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

4件
  • hyp********
    フロントとリアのデザインが違い過ぎて、ニコイチ感。
  • stc********
    メーターはステアリング内に戻したね。
    賛成です。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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