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最後まで新しかった BMW i3へ再試乗 純EV「i」ブランドの開拓者 7月で生産終了

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最後まで新しかった BMW i3へ再試乗 純EV「i」ブランドの開拓者 7月で生産終了

明快なアイデアが貫かれたi3

遡ること2013年、BMWは自社初となる量産の電気自動車、i3を発売した。世界はCOVID-19の驚異を知らず、ティックトックに若者がハマる3年も前だった。

【画像】7月末で生産終了 最後まで新しかった BMW i3 競合クラスの純EVと写真で比較 全148枚

ここ数年は変動が大きく、遥か昔のように思えてしまう。一般的に自動車で9年といえば、モデルチェンジを経ていることが多い。だが、i3は今も現役。しっかり改良を受けているけれど。

今回は、そんなBMW i3を振り返ってみたい。理由は、2022年7月に生産を終えるから。定期的にAUTOCARをお読みいただいている方なら、「50年後に価値上昇のモデル」の1台として、i3が選出されたことをご記憶かもしれない。

i3の登場前でも、純EVは何台か選べた。だがこのクルマは、次の時代を定義するような新しい存在に感じられた。それは2022年でも変わらない。明快なアイデアが貫かれているからだろう。

BMWがメガシティ・ヴィークルというコンセプトカーを発表したのは、2010年。アルミニウム製のシャシーに、カーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)製の乗員空間セルを載せた強固な構造を採用し、ボディ中央にBピラーを必要としていなかった。

3年後の量産版は、その概要をしっかり備えていた。リサイクル素材を多用し持続可能性に配慮され、ボディサイドには大きな開口部が与えられていた。観音開きのドアが特徴だった。

カーボン製のセルのおかげで、i3はこのクラスの純EVとしてはかなり軽い。容量の大きい駆動用バッテリーを積んだ後期型でも、1290kgに仕上がっている。同等のボディサイズを持つ当時のルノー・ゾエは、1465kgあった。

BMW自ら開発した183psの駆動用モーター

発表時のi3は、2種類のパワートレインから選択できた。1つは完全な純EV。170psの駆動用モーターを搭載し、128kmから160kmの航続距離が主張された。

もう1つが、レンジエクステンダーという発電用エンジンを追加したもの。647ccの2気筒ガソリンエンジンは、本来バイク用のものだった。

このパワートレインで特筆すべき点が、トルク曲線に留意した駆動用モーターをBMW自ら開発したこと。高回転域を得意とする性質は、内燃エンジンの開発を起源とするミュンヘンの企業らしい。

最新のi3を走らせてみると、とても活発に感じられる。静止状態から50km/hくらいまでが特に小気味いい。それでいて、速度が上昇しても勢いは衰えにくい。ポルシェ・タイカンのように、余力のある加速が長く続く。

9年前の技術がベースのクルマとは信じがたいほど。最新版では駆動用モーターは183psになり、駆動用バッテリーもアップデートされ、航続距離は281kmまで延びている。

全高の高いプロポーションの通り、着座位置は高め。それでも、正確に反応するステアリングと、後輪駆動の特性が融合し、身のこなしに締りがあり機敏。ドライビング体験は素晴らしい。軽さがクルマへ与えるメリットを、体現している。

事実、BMWは可能な限り車重を抑える工夫をしており、ドアに用いられるボルト類までアルミ製。ワイパーはハニカム構造が取られている。細部に至るまで、一貫したコンセプトを感じる。

クラスレスで今でも極めてモダン

2013年にi3が発表されると、多くの人が強い関心を寄せた。アウディでチーフデザイナーを努めた経歴を持つ、マイケル・アニ氏もその1人。フランクフルト・モーターショーで助手席に座って以来、すっかりファンになったらしい。

彼は現在、2台目のi3のオーナーでもある。これまで10人の友人に、このBMWを勧めてきたという。「これ以上のデザインはないと思いました。それは近年でも変わらないと思います」

「パワーと静寂性、ラウンジのような美しいインテリアという組み合わせは、今でも極めてモダン。クラスレスな存在で、クルマとして珍しい仕上りでもあります。特定のカテゴリーに当てはまることもなく、とても独自性が高いですよね」

しかしBMWの描いた理想は、一部の人にしか響かなかった。高い評価が集まった一方で、販売では日産リーフを超えることはなかった。10年間でリーフは50万台が顧客に届けられているが、一方のi3は、9年間で25万台を少し超えた程度だ。

BMWグループの広報を担当するヴィーラント・ブルッフ氏は、BMWとしてi3には出来得る限りを施したと説明する。また、社会環境が純EVの普及に大きな影響を与えると、実感したとも話す。

一般的に政府は、企業と同じスピード感で行動することはない。数年前までガソリン価格が比較的安定していたことも、もう1つの要因だろう。同時に多くのBMWユーザーは、純EVへシフトする準備が整っていなかった。

サブブランド「i」展開の布石

「当初、i3の購買層の70%が、ほかのブランドからの乗り換えでした。i3で試みたことは、従来のビジネスモデルとは大きく異なりました。一部は違いましたが、典型的なBMWファンはi3を買おうとしなかったんです」。とブルッフが説明する。

その後のBMWが、内燃エンジンと電気モーターの両方に対応できる、汎用性の高いプラットフォームを長く採用したのも、i3の経験を踏まえてなのだろう。だが、ブランドの電動化への試金石になったことも間違いない。

「i」というサブブランドを開拓し、幅広いカテゴリーのモデルへ展開する布石といえた。BMWたらしめる、白眉のドライビング体験は可能な限り残された。iXやi4といった最新の電動モデルを生み出す、方向性を定めたといえる。

近年の自動車業界は、特に欧州では、純EVへの傾倒が著しい。技術の進歩は加速するように進み、時代が既存モデルを追い越していく様な雰囲気すらある。しかし、i3は2022年のロンドンを運転していても不足なく新しい。

斬新なスタイリングは、今も古びることはない。i3自体が古びていない。運転も楽しいままだ。これこそ、BMWが成し遂げた素晴らしい成果を証明するものだといえる。なくなって初めて、存在の偉大さに気付くのかもしれない。

BMW i3(英国仕様)のスペック

英国価格:3万4750ポンド(約556万円)
全長:3999mm
全幅:1775mm
全高:1578mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:6.9秒
航続距離:281km
電費:6.8km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1290kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:42.2kWhリチウムイオン
最高出力:183ps
最大トルク:27.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション

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みんなのコメント

5件
  • あまり見かけないからデザインは新鮮さが残ってるね。
    i8同様、びっくりするぐらい不発だったけど
  • タイヤサイズが斬新
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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