これまでもこれからも、「ママチャリ」は日本人と共に
手で運ぶのは大変な荷物を運ぶ、高速で長距離を移動する、荒れた野山を猛スピードで駆け巡る、限られたエリアでさまざまな障害物を利用してパフォーマンスを披露する……。さまざまな方面に特化した自転車の世界ですが、なかでも、いわゆる「軽快車」や「シティサイクル」とも言われる「ママチャリ」は、あまり知られていないかもしれませんが、日本独自に進化してきた自転車です。
1870年に竹内寅次郎が外国の車両を参考に「自転車」と名付けて発売したところから日本に自転車という言葉が生まれ、明治から昭和初期にかけて、荷物の運搬や通勤・通学など、主な交通手段として人々の生活に急速に浸透するようになりました。
ただ、「実用車」などと呼ばれる当時の自転車はかなり重く、サドルの位置も高かったので、どちらかと言うと男性用の乗りものとして扱われていました。
それから時を経て、1950年代に入るとエンジン付きバイクの普及などもあって、配達などで使われていた実用自転車のシェアが減ってしまいます。このタイミングで、自転車は日本独自の進化を遂げることになります。
自転車業界では、これまで自転車に乗ってこなかった女性用の自転車の開発に着手します。ゴツイ実用自転車のイメージを払拭するために、フレームは女性でも乗りやすいようU字型に変更してサドルの位置を下げ、買い物に便利な前かごを装備し、夜道でも安心できるようにライトを装備したりと、さまざまな改良を加えます。これが大いに受け入れられ、当時は嫁入り道具として自転車が選ばれるほどの大ヒットになったそうです。
ちなみに、厳密に言うと軽快車やシティサイクルは軽量化と利便性を増した実用車という位置づけになると思うのですが、このあたりから「母親(ママ)が乗る自転車(チャリンコ)」と言う意味で「ママチャリ」という俗称が生まれ、前かごが付いている自転車は総じてママチャリと呼ばれるようになっていったようです。
それ以降もさまざまな改良が加えられ、比較的安価なパーツで構成されたママチャリは誰もが扱える身近な乗りものとして、ご存知の通り日本人の生活には欠かせない存在として定着しました。
その一方で、安価な部品で大量生産・大量消費されたことで自転車自体の価値を相対的に下げてしまったり、国内需要だけで各メーカーが十分な利益を得ることができたため、海外進出などを行なわずガラパゴス的な発展を遂げ、日本国内の自転車メーカーの発展を阻害してしまったという負の側面も持っています。
良くも悪くも、日本の自転車の歴史を語る際には外すことのできない「ママチャリ」ですが、最近では世界的な物価の高騰に合わせて価格も高くなっており、ひと昔前のような「使い捨て」として扱えるような乗りものではなくなってきました。
これだけ全国的に定着しているということは、修理用のパーツや技術もしっかり確立しているとも言えるので、メンテナンスしながら長く乗り続けることが可能です。
もれからも日常に欠かせない存在として、愛着を持って乗り続けたいものですです。
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