現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「大阪府警 VS 大阪環状改造族」1982年夏、大阪府警は1500台の環状族と戦っていた【Play Back The OPTION】

ここから本文です

「大阪府警 VS 大阪環状改造族」1982年夏、大阪府警は1500台の環状族と戦っていた【Play Back The OPTION】

掲載 更新
「大阪府警 VS 大阪環状改造族」1982年夏、大阪府警は1500台の環状族と戦っていた【Play Back The OPTION】

大阪府警や阪神高速道路公団関係者にも取材を敢行!

1500台の環状族と戦う大阪府警の意地

「大阪府警 VS 大阪環状改造族」1982年夏、大阪府警は1500台の環状族と戦っていた【Play Back The OPTION】

今回プレイバックするのは、OPTION誌1982年10月号の「大阪府警 VS 大阪環状改造族」という特集記事だ。

有名無名のチームが暴れまわる『大阪環状』全盛期のありのままの姿を映したドキュメント。しかも、一方的に走りを助長するような展開などではなく、大阪府警や阪神高速道路公団関係者、そしてアンチ環状族の走り屋にも取材を行ない、対峙する両者の声を掲載しながらまとめあげた本物のルポである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大阪府警 VS. 大阪環状改造族

Photoドキュメント・ルポ 1982年夏 カメラは証言する
大阪環状は、1周10.4kmのONE WAYループ。メインコースは4車線ある。


大阪、いわずと知れたチューンドカーのメッカである。走り屋も多い。が、最近、大阪府警の強烈な締めつけに危機感を訴える声が強いのだ。果たして、その実情は? また、当の大阪府警本部の見解はいかなるものなのか。1982年7月31日土曜深夜、我々はマシンが集うという大阪環状に、クルマを乗り入れた。

土曜の夜の大阪環状、それは我が眼を疑うフィーバー・ゾーンだった

「大阪の暴走族や環状族の実態を、東京へ行って説明してもなかなか分かってもらえんもんで、苦労しますわ」…大阪府警本部関係者のコメントである。正直言って、我々取材スタッフも眼前に展開される大阪環状の実態と、自分たちの抱いていたイメージとの落差にガクゼンとしたことをまず断っておこう。

「関西の走り屋は、お祭り派なんですよ」とは聞いていた。が、これほどとは。ストイックな思い入れで走りを追求し、腕を研こうというストリートレーサーがカッ飛んでいく…という空想的シーンは、跡形もなく打ち崩されたのだ。

シャコタンで渋滞、パトカーの無差別検挙、相次ぐ事故!

午前1時の環状は大渋滞だった。しかも周囲のどのクルマも車高が低い。中にはハデなオーバーフェンダーやリヤウイング装着車(※当時リヤウイングは珍しかった)。関東でいうところの族仕様車に近い。しかし、こういったクルマが、ただ集まって走っているだけならさほど驚きはしない。が、1周する間に数ヵ所でぶつかっているクルマを目撃し、次の周にはさらに新たな事故現場を目撃するとなると、ちょっと穏やかではない。

もちろん、渋滞でまともに走れる状態ではないから、事故といっても接触や追突がほとんどなのだが。「いったい、どうなっているんだ?」「いやぁ、初心者が混ざっとるからネ~」、そのおおらかさは、まさにカーニバル。お祭り騒ぎだ。

対する大阪府警は、走り屋のあまりの数の多さに手をこまねいて眺めているだけかと思うと、これが大違い。片っ端から取り締まっているのだ。1周の間に、事故処理1ヵ所を含む4ヵ所で、それぞれ御用になっている。

のろのろ運転の次の周には、これまたもう別のクルマが・・・。次から次へとパトカーはフル稼働だ。「違反の種類といっても・・・。駐車違反、初心者マーク、整備不良、安全運転義務違反、まぁいろいろですネ」・・・府警。しかし、環状族は、仲間がごぼう抜きに検挙されようと、事故ろうと、一切お構い無しに渋滞のループを楽しんでいるかのようだ。「ひとりで走る? そんなんアホや、どこがおもろいんや。ホラ見てみい。あんたかて一緒にいるだけで、なんとなくウキウキしてくるやろ」・・・族の証言。

「まぁ、アイツらは、いってみればカワイイもんや。めいっぱいクルマをいじって、走るのが好きなだけやからな。別に悪さするわけでもないしな。その点、暴走族とはちゃうで。大阪の暴走族は悪いわ。歳ももっと若いしな。免許証も、クルマも、ガソリンも持っとらんのに走り回りよる。つまり人のモン、盗んでやるわけや。でも大阪じゃあ今、壊滅状態やで。リーダーがいなくなってしもうたからな。もうリーダーのなり手がおらんのや。即逮捕するからな」(府警)。「一昨年までは暴走族もハデやったわ。御堂筋を逆走したりしてな。でも道交法の改正以来、ピタッと押さえられたんとちゃう」(市内学生)。

そして、暴走族が押さえ込まれた今、交通指導の主対象が、環状族に代表される走り屋に移行したというのは事実だという。「大阪の環状族も、今から3~4年前はもっと凄かったですよ。クライマックスは迫力がありましたよ。みんな路肩にずらっと駐車して見守っている。その前を、目立ちたがりの速いクルマが3車編隊なんかで組んで、ブワーッとかっこよう飛ばすんですわ。1グループが走り終わると、今度は次のグループが登場や。まぁ、改造車の競演ですな。こういっちゃなんですが、見物でしたわ」・・・阪神高速道路公団関係者の私的述懐。「もっとも、公団にとっては彼らがつまりは暴走族なんですけどね」・・・同。

「前にも言いましたが、環状族と暴走族は違う。けど、取り締まりの基準は同じですねん」・・・府警。一口に暴走族、走り屋といっても、その実態は東京と大阪では明らかに異なる。それゆえ、この大阪でのケースをそのまま他の地域に当てはめることは的を得ないだろう。が、しかし・・・。

「もう、イタチゴッコは終わりや、8月末の新聞、楽しみにしてや」

「今、いわゆる走り屋=環状族は1500台くらいいます。中には根っからの走り屋もおるわけですが、若さゆえ他人の迷惑を考えないでワイワイやっとる連中も多いんですわ。ですから我々は環状族の場合、交通犯罪としてではなく、広い意味での青少年非行対策の一環として考えておるんですわ」(府警)

そして、すでに環状族対策は最後のツメに入ったことは間違いないようだ。「ともあれ、もうほとんど環状族は把握しております」との自信溢れるコメントが、その事実を物語る。取材当夜も、照明・撮影用採証車が道路をサーチライトで強烈に照射し、走行車両のリヤを、夜目にも鮮やかに浮かび上がらせていた。ナンバープレートを軒並み撮影しているのである。さらに、覆面パトカーに乗り込んだ私服警官が、これまた「らしいクルマ」をチェックし、撮影を進めている。

そして午前3時にかかろうとするころ、数100台はいた環状族のマシンが、みるみる減ってきた。理由は・・・考えるまでもなかった。ループのキーポイントともいうべき分岐点に、例の照明・撮影車が陣取り、その場でビシビシ取り締まり始めたからだ。ちょっと目立つ改造車は、容赦なく止められている。

走り屋のほうも、数をたのんで検問をブッ千切るという暴挙には出ない。それをやれば共同危険行為が成立するということを、走り屋も知っているようだ。これをくらえば一発で免許がなくなる。もちろん、それだけでは済まない。環状族が締め出され、パトカーが帰路につく。

すると再び、どこからともなく走り屋が集まってくるというのが、ひとつのパターンだといわれていた。が、この日はいつまでたっても、パトカーは環状から消え去りはしなかった。午前5時、空が白み切り、折から降り出した雨の中で、それでも1周する間に3ヵ所でパトカーが違反車を検挙していた。

「すでにウチのほうでは、環状族の実態を完全につかんでおります。クルマの持ち主も、追跡調査で全部おさえてあるんですね。まぁ、このままイタチゴッコ繰り返しておるわけにもいかんですからね。ひとつ、8月~9月の新聞、楽しみにしてくれまへんか」府警本部、交通指導課の係官は最後をこう強烈に締めくくった。もちろん、環状族=改造車ではない。が、両者が深く結び付いていることも事実だ。

とりわけ、取り締まりサイドからは「業者まで捕まえんことには、不法改造はなくならん」との容易ならざる声が聞かれたのも事実だ。暴走族はもとより、南港や臨海でのゼロヨンを完全に押さえきった実績を誇る大阪府警である。しかしその時、環状線を締め出された走り屋たちは、いったいどこへ向かうのだろうか・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

東名全開族とは、また違った色を見せていた全盛期の大阪環状。1982年9月某日、大阪府警本部の交通指導課係官のコメント通り、新聞には「環状族 大規模摘発」のミダシが踊った。

【OPTION 1982年10号より】

こんな記事も読まれています

100円ショップの「カー用品」激安だけど本当に使える? 雨対策の「撥水ガラスコーティング」効果はいかに?
100円ショップの「カー用品」激安だけど本当に使える? 雨対策の「撥水ガラスコーティング」効果はいかに?
くるまのニュース
「東京ー成田の最短路」大混雑の末端区間! 未完の「北千葉道路」延伸部 “計画変更”で渋滞緩和なるか
「東京ー成田の最短路」大混雑の末端区間! 未完の「北千葉道路」延伸部 “計画変更”で渋滞緩和なるか
乗りものニュース
【MotoGP】ホンダの大エースはいかにドゥカティファクトリーライダーになったのか。MotoGP王者マルク・マルケス激動の4年半を振り返る
【MotoGP】ホンダの大エースはいかにドゥカティファクトリーライダーになったのか。MotoGP王者マルク・マルケス激動の4年半を振り返る
motorsport.com 日本版
「中身はどうせトヨタだから」といわれてきたレクサス車「なぜ最近、走りがよくなった?」開発陣が挑む「味磨き活動」の成果とは
「中身はどうせトヨタだから」といわれてきたレクサス車「なぜ最近、走りがよくなった?」開発陣が挑む「味磨き活動」の成果とは
VAGUE
マツダ「コスモスポーツ」復活の噂あった!? 斬新「コスモ21」とは? 今後は「2ロータースポーツ」も登場か
マツダ「コスモスポーツ」復活の噂あった!? 斬新「コスモ21」とは? 今後は「2ロータースポーツ」も登場か
くるまのニュース
【マン島TTレース2024】予選5日間のスケジュールは相次ぐ変更 各クラスの総合結果と決勝レースの見どころ
【マン島TTレース2024】予選5日間のスケジュールは相次ぐ変更 各クラスの総合結果と決勝レースの見どころ
バイクのニュース
シボレー コルベット 最強の「ZR1」新型、ティザー…実車は今夏発表予定
シボレー コルベット 最強の「ZR1」新型、ティザー…実車は今夏発表予定
レスポンス
運転前の「義務」やってますか? 特にタイヤを確認すべきタイミングとやり方
運転前の「義務」やってますか? 特にタイヤを確認すべきタイミングとやり方
ベストカーWeb
ベスパの新型プリマベーラ125・150/スプリント150発売開始!
ベスパの新型プリマベーラ125・150/スプリント150発売開始!
モーサイ
【DEWALT】「10.8V/18V XRブラシレス・ラチェットレンチ」はハイパワー&高耐久!スリムだから狭い場所でも自由度が高い!  
【DEWALT】「10.8V/18V XRブラシレス・ラチェットレンチ」はハイパワー&高耐久!スリムだから狭い場所でも自由度が高い!  
モーサイ
「ジャパンドローン2024」幕張メッセで開幕 過去最多の261社が出展 6/7まで
「ジャパンドローン2024」幕張メッセで開幕 過去最多の261社が出展 6/7まで
日刊自動車新聞
F1第9戦は6月7日開幕、マクラーレンとフェラーリが急接近、どうするレッドブル!?【カナダGP プレビュー】
F1第9戦は6月7日開幕、マクラーレンとフェラーリが急接近、どうするレッドブル!?【カナダGP プレビュー】
Webモーターマガジン
マクラーレン、カナダGPは開発の成果見極める重要な一戦。低速コーナーの弱点は本当に解消できたのか?
マクラーレン、カナダGPは開発の成果見極める重要な一戦。低速コーナーの弱点は本当に解消できたのか?
motorsport.com 日本版
「交通系ICカードやめます」熊本の公共交通、未来どうなるのか? 利便性vsコスト問題、全国交通系カード撤退の背景と拭えぬ不安
「交通系ICカードやめます」熊本の公共交通、未来どうなるのか? 利便性vsコスト問題、全国交通系カード撤退の背景と拭えぬ不安
Merkmal
トヨタ新型「プリウス“セリカ”」!? まさかの「2ドアクーペ仕様」が超カッコイイ! “待望の復活”予想CGがスゴイ
トヨタ新型「プリウス“セリカ”」!? まさかの「2ドアクーペ仕様」が超カッコイイ! “待望の復活”予想CGがスゴイ
くるまのニュース
マクラーレンF1リザーブの平川亮が2022年型マシンで走行。F1チームのプライベートテストが相次ぐ
マクラーレンF1リザーブの平川亮が2022年型マシンで走行。F1チームのプライベートテストが相次ぐ
AUTOSPORT web
日産が横浜で自動運転の実証を開始…『リーフ』ベースの実験車両
日産が横浜で自動運転の実証を開始…『リーフ』ベースの実験車両
レスポンス
WRCチャレンジプログラム2期生がタフなサルディニア島のグラベルに挑戦。厳しいステージの洗礼を受ける
WRCチャレンジプログラム2期生がタフなサルディニア島のグラベルに挑戦。厳しいステージの洗礼を受ける
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

226.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

33.0238.0万円

中古車を検索
ルポの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

226.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

33.0238.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村