「温故知新」の逆というわけではないが、最新のプジョー車に乗りながら、古(いにしえ)のプジョー車に思いを馳せてみたい。最終回となる今回は、日本で2022年に発売予定の新型308を眺めながら、300シリーズの歴史と、プジョーのこれからを考えてみよう。(タイトル写真は、上が新型308、下が1985年に発表された309)
ドラマティックさを増した新型プジョー 308
2021年9月に東京・六本木をはじめ名古屋や大阪で開催された「ライオン エクスペリエンス2021」で、新型プジョー 308が日本初公開された。初めて目にした印象は、現行型よりかなりダイナミックなスタイリングになったということ。よく見ると全体的に現行型の正常進化であることを理解できるが、前後フェンダー付近の張り出しが目立つなど各部に凝った造形を施されてドラマティックさを増している。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
フロントマスクは大きく変わり、細く切れ上がったヘッドライトやライオンの牙をモチーフにした「セイバー」と呼ばれるデイタイムランニングライトなどにより、かなり精悍に見える。グリル中央部には、ライオンの横顔を描いた新しいプジョーのエンブレムが掲げられている。
先端に向かうにつれて大きく低められるフロントノーズや寝かされたフロントガラスをはじめ、ボディラインはよりスムーズさを増し、空力性能も進化している。全高が20mm低められているが、ボディサイズは少し拡大され、加えてホイールベースも55mm伸びたことで後席スペースは拡張されている。
車内に目を移すとダッシュボードをはじめとする印象は従来モデルと大きく異なる。プジョー独自の「iコックピット」の高く置かれたメーターナセルと同じ高さで、エアコン吹き出し口が室内幅いっぱいに水平に広がっている。メーターパネルはデジタル化され、ダッシュ中央のディスプレイと合わせて、インフォテインメントシステムは最新のものに大きく進化しているようだ。
パワーユニットは、少なくとも本国ではガソリンの1.2L 3気筒と、ディーゼルの1.5L 4気筒が各種設定され、またハイライトとしてプラグインハイブリッドも用意される。そのほか、先進運転支援システム(ADAS)も充実しているはずだ。
300シリーズに「309」が突然登場した理由とは
308は、今回発表された新型で3世代目になる。この300シリーズを過去に遡ると、プジョーの車名は戦前の301以来、末尾の数字を世代を経るごとに2、3、4と増やしていたが、「8」に到達してからは末尾を8に固定したままモデルチェンジするようになっている。
プジョーの3ケタ車名モデルには100番台から600番台まであるが、欠番が少なく連綿と続いてきているのが、200番台とこの300番台だ。これはプジョーの屋台骨であることを物語っている。ただ、続いているとはいえ同じ300番台でも微妙に立ち位置を変えてきており、ざっくり表現すると2世代ごとに変化している印象である。
戦後最初の300番台は1969年に登場した304であるが、ひとクラス下の204のFFシャシと基本ボディを流用し、ひとまわり大型化した内容だった。ボディ形状は今と違って3BOXセダンだったが、当時は下位の204もセダンだった。304は204の兄貴分だったが、同時に上位の504の弟分であることも主張しており、フロントマスクは504に似ていた。
1977年に登場した305は、304の正常進化版そのものだった。それでもやや大型化しており、上位の505により近づいた印象だ。この進化は結果的に305の後継モデルにも影響し、当時欠けていた400番台をカバーするように405として1987年に登場している。
では300番台の後継はどうなったかというと、305と平行して実は309が1985年に追加されている。これは数字が物語るようにやや異端的な存在であり、元来は当時プジョーが傘下に収めていたタルボ ブランドの新型車と開発された。しかしタルボ ブランドの廃止にともない、プジョー 309として世に出ることになった。
これからのプジョーは、新型308の路線を踏襲するのか?
タルボの先代モデルにあたるタルボ オリゾンが、ひと足早く現代的なハッチバック ボディを採用していたので、それを継いで309もハッチバックで開発されたわけだ。309は205のメカニズムを流用しており、プジョーの中では205の兄貴分といえた。205にならって本格的スポーツ志向のGTIが設定され、ラリーでもけっこう活躍した。
309の後継にあたるのが306だ。ハッチバックボディであることからも、305よりは309の系譜を継いだというほうが違和感を感じない。もっとも306には3BOXセダンも存在したのだが、やはり主流はハッチバックだった。そして306 S16というスポーツモデルも設定され、ラリーでは専用モデルの306マキシが大活躍した。
王道のハッチバックとして2代続いた309、306だったが、次の307はまたちょっと立ち位置を変えて、ボディを大型化して車高も高め、当時のミニバン系モデルの流行を意識したようなものになった。その次の308(初代)も307のキープコンセプトで、この立ち位置で2世代が続いた。
そしてハッチバック王道路線に戻ってきたのが2代目308だ。趣旨替えをしてスポーツ志向も復活、GTI by プジョースポールというハイパワーバージョンも設定されていた。それを進化させたようなモデルが、今回の新型308だ。磨きをかけてこれだけスポーティで精悍なボディになったとなると、高出力のプジョー スポール エンジニアード(PSE)モデルの設定も期待してしまうが、果たしてどうなるだろうか。
新型308は、スポーツ志向、電動化、ADAS、デジタル化、そしてデザインなどが充実し、まさに最近のプジョーの戦略が凝縮されている印象だ。ちょっと話が早いが、今後のプジョー車のさらなる展開も楽しみになってくるところである。(文:武田 隆)
「プジョー今昔ストーリー」は今回で終了します。ご愛読ありがとうございました。
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